国会議員が持つ政治力と、国民の税金を原資とする自治体への予算配分。その両者を結びつけるかのような発言を現職閣僚が口にしていたことが発覚し、大きな問題となっています。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、対立候補を支援した自治体の道路予算を巡る簗和生農水相の発言と、実際の交付金額を詳細に検証。さらに簗氏の小選挙区での落選から農水相就任までの経緯を振り返りつつ、不祥事を抱えた閣僚を続投させる高市政権の対応を疑問視しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:居座り続けるイヤナ大臣
高市早苗の腰巾着。居座り続けるイヤナ大臣
ナントカ還元水で自殺に追い込まれた松岡利勝氏、顔中に絆創膏を貼って辞任した赤城徳彦氏、就任した瞬間に違法献金が発覚してマッハで辞任した遠藤武彦氏、URワイロなど数々の疑惑で説明責任からトンヅラした上に仮病疑惑でも炎上した甘利明氏など、自民党政権にとって農林水産大臣のポストは以前から「鬼門」とされて来ました。
記憶に新しいところでは、昨年2025年の第2次石破内閣で農水大臣を任命された江藤拓氏です。昨年5月に開催された自民党佐賀県連の政治資金パーティーでのスピーチで「私はコメを買ったことがありません。支援者の皆さんがたくさんコメをくださるので、わが家の倉庫には売るほどコメがあります」などと述べたのです。この無神経すぎる大バカ発言に、コメ不足に苦しんでいた全国の一般消費者から批判が殺到し、江藤氏は辞任に追い込まれました。
そして、今年2月の高市早苗首相による解散総選挙で、自民党は316議席を獲得して圧勝しましたが、宮崎2区の江藤拓氏は、小選挙区で有権者から「NO!」を突き付けられて落選したのです。しかし、保険の比例でゾンビ復活してしまいました。この時、江藤拓氏と同じように地元の有権者からは「NO!」を突き付けられて落選したのに、保険の比例でゾンビ復活した自民党議員が他にもいました。それが栃木3区の簗和生(やな かずお)氏です。
そう、先月9月の内閣改造で、高市首相が文部科学大臣に任命した関芳弘氏と同じく「裏金議員」の1人です。ちなみに高市首相は「裏金議員」の入閣について「それぞれの議員が真摯に説明を尽くし、選挙で国民の皆様の審判を受けた」と述べました。でも、小選挙区で当選した関芳弘氏はともかくとして、小選挙区で落選して比例でゾンビ復活した簗和生氏が「国民の審判を受けて罪を許された議員」だと言えるのでしょうか?あたしは甚だ疑問です。
簗和生氏は、2012年12月の衆院選で初当選した、いわゆる「安倍チルドレン」です。しかし、これまでに性的少数者を批判する発言が問題視されたり、安倍派の裏金問題でも5年間で計1,746万円もの裏金と脱税が発覚し、党から役職停止6カ月の処分を受けています。こうした背景があったのですから、今年2月の衆院選で、地元の有権者から「NO!」を突き付けられて落選したのは当然の流れであり自業自得だと思います。
ちなみに、今年2月の衆院選では、応援に駆け付けた高市首相が「とにかく私の大事な簗ちゃん!私の知恵袋の簗ちゃん!いなかったら大変!本当に大変です!」などと恥も外聞もなく熱烈に応援しました。しかし、それでも小選挙区で落選したのですから、よほど地元では嫌われているのでしょう。
そんな簗和生氏の選挙区である栃木3区ですが、今年2月の衆院選では、大田原市の相馬憲一市長、那須烏山市の川俣純子市長、那珂川町の益子純恵町長らが、簗氏の対立候補の無所属、渡邊真太朗氏を支援しました。その結果、特に那須烏山市と那珂川町で苦戦した簗氏を破り、渡邊真太朗氏が小選挙区を制して初当選したのです。そして、比例でゾンビ復活して権力を維持できた簗氏は、渡邊氏を支援した首長らへの逆恨みが爆発したのです。
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簗大臣が饒舌に語った「特定の自治体への道路予算大幅カット」
簗和生氏は、5月24日に開催された自民党大田原支部の総会後の懇親会で、栃木3区の中で対立候補を支援した首長のいる那須烏山市と那珂川町について、次のように述べました。
那須烏山市と那珂川町の令和8年度の道路予算については、大幅にカットしました。これはもう当たり前なんですね。那須烏山市については、前年度の64%減、3分の1にしました。そして、那珂川町は54%減にしています。で、私も命は守らなきゃいけませんから、市民・町民のですね、河川の関係は触っていません。これくらいのことはやらないとですね、真面目にやっている人たちが浮かばれないんですよ。党の組織の統制が取れなくなるんですよ。
簗氏は、対立候補を支援して自分を落選させたこの2つの自治体に対して、道路予算を大幅にカットするように働きかけを行なったそうです。この前後も含めた一連の発言は音声データが残っており、すでにテレビやネットなどでも流れていますが、10月5日、簗氏はこの音声データが自分の発言だと認めた上で、発言をすべて撤回して謝罪しました。しかし、特定の自治体の道路予算を大幅にカットするように国交省などへ働きかけたという報道については「そのような事実はない」と否定しました。
でも、実際に音声データを聴くと、簗和生氏は自分の権力をアピールするかのように、幼稚園児レベルの承認欲求を満たすかのように、饒舌に「特定の自治体への道路予算の大幅カット」を語っています。そしてそれは、先ほども文字起こししたように「那須烏山市については前年比で64%減、3分の1にしました。そして那珂川町は54%減にしました」という極めて具体的な内容なのです。
で、令和8年度の道路予算を含む「社会資本整備総合交付金」を見てみると、那珂川町の要望額は7,208万円で、国交省からの内示額は2,262万4,000円なので、実際に「大幅カット」されています。そして、前年度の内示額は4,934万2,000円なので、ピッタリ「54%減」でした。那須烏山市も、要望額は4,783万6,000円で、国交省からの内示額は2,426万7,000円なので、こちらも実際に「大幅カット」されていますし、前年度比は「64%減」、これも簗氏の発言と一致しています。
たとえば、全国の自治体がどこも同じように減額されていたのなら、それはそれで分かります。また、全国の多くの自治体が減額されているのに、被災地の自治体だけが増額されていたなら、それもそれで分かります。しかし、簗和夫氏の選挙区である栃木3区の全自治体の令和7年と令和8年の「社会資本整備総合交付金」を比較してみると、簗氏の対立候補を支援した3つの自治体のうち2つが大幅に減額されている一方で、簗氏を支援した3つの自治体のうち2つは増額されているのです。これっておかしくないですか?
でも、簗氏は5日の会見で、国交省への働きかけについて「そのような事実はない」と否定しました。ま、肯定したらその時点でアウトですから、ここは事実うんぬんに関わらず否定するしかなかった場面ですが、もしも簗氏の弁明が事実で何の働きかけもしていなかったとしたら、国交省はどうしてこの対立候補を支援した2つの自治体の道路予算を大幅カットして、簗氏を支援した2つの自治体の道路予算を増額したのでしょうか?
この辺りの事実関係については、野党の中で唯一「独自の調査能力」を持つ日本共産党の「赤旗」の報道を待ちたいと思います。
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「建設業協会のメンバー脅し」まで自慢げに話していた簗大臣
ま、そもそもの話として、簗氏は2月の衆院選の街頭演説でも「政権与党の議席がなくなった地域の予算はごっそりと削られます」「与党の議員のいない地域は役所も官僚も遠慮なしに予算を削ります」「与党の議員がいなくなるとこの地域に付いてる予算がガクッと減りますよ」「政権与党の簗和生のパイプを使わない理由はないのです」などと連呼していました。何だかドナルド・トランプ大統領の劣化版のようですね。
また、簗氏の後援会のYou Tubeチャンネルも、選挙中は「無所属や野党では3区の予算はカットされる」というタイトルの動画を拡散していました。そして、その結果、比例でゾンビ復活したとは言え、簗和生氏は小選挙区で敗北を喫したのです。すると、選挙中に自身がさんざん連呼していた通りに、簗氏を敗北させた2つの自治体の道路予算が大幅カットされたのです。
この道路予算の大幅カットを受けて、那須烏山市の川俣純子市長は、拡張する予定だった団地周辺の道路の計画が延期になってしまったと述べた上で、簗氏に対しては「選挙の腹いせだとしたらちょっと子どもの喧嘩のような感じがする」と指摘しました。また、那珂川町でも道路予算の大幅カットによって、東部地区の町道や上郷須賀川線の工事など、計画していた工事が発注できなくなったと言っています。
また、公開された音声データには、簗氏が建設業協会のメンバーを脅したことを自慢げに話している以下のような場面も残っていました。
建設業協会のメンバー2人に「私ども(自民党)に頼らない」「私がいらない」と言って、無所属の議員(渡邊真太朗氏)を応援するのであれば「私が付けている予算を何で受注するんだ」とはっきり言ってやりました。私は今、筆頭副幹事長という立場なので「幹事長室にちょっと来てくれ」と言えば、こんなこともできるんですね。自分の力をひけらかしてやるのです。
百歩ゆずって、簗氏の弁明の通りに、国交省への働きかけなど行なっていなかったとします。事前に国交省の内示額を確認して、あたかも自分が働きかけを行なったかのように狂言を演じたのだとします。仮にそうだったとしても、これが国政に関わる国会議員のやることでしょうか?嘘をついて地元の有権者を脅すだなんて、国会議員以前に人として最低です。
先ほどは「ドナルド・トランプ大統領の劣化版のようだ」と書きましたが、トランプ大統領は「民主党が勝ったら全国民に5,000ドル(約77万円)を支給する」だの「2,000万人を超える高齢者に90ドル(約1万4,200円)を振り込む」だのと「公開買収」とも言えるバラマキを連呼しています。これはこれで最低ですが、簗氏は有権者を脅して支給すべき予算を大幅カットするなどと脅したのですから、トランプより遥かに悪質です。
さらには、10月2日の当初の会見では「大臣就任前の一議員としての活動に関わる事柄なので大臣としてのコメントは控えたい」と20回も連発して、記者からの質問に1ミリも答えなかったのです。一議員の時だったとしても、国民の税金から報酬を受け取っている公人なのですから「大臣としてのコメント」は控えても「一議員としてのコメント」をするのが責任と言うものです。
そもそも「大臣になる前なら何をしていても説明する義務などない」だなんて、一体どこの誰が決めたのでしょうか?こんなバカな話、あたしは聞いたことがありません。宿題を忘れた小学生でも、もう少し上手な言い訳をしますよ。こんな詐欺師みたいな人物が日本の一次産業を統べる省庁のトップだなんて、まるで悪夢です。
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夢にまで見た大臣のイスに座って2週間もしないうちに出たボロ
高市首相は何かにつけて「国益が」「国益が」と口にしますが、これほど国益を損ねる大臣は前代未聞です。高市首相自身も就任早々、中国にケンカを売って、すでに数兆円規模で国益を損ねているのですかせ、せめて自分が任命する大臣くらいは、もう少しマトモな人物を選ぶべきです。本当に日本の国益を考えるなら、百害あって一利なしの簗氏など1日も早く更迭すべきです。しかし残念ながら、高市首相にその気はないようです。
簗氏は自民党内で高市首相を支える保守派グループのメンバーで、以前から高市首相にはシッポを振って忠誠を誓って来たため、非常に可愛がられています。その挙句が今回の異例とも言える初入閣だったわけですが、夢にまで見た大臣のイスに座って2週間もしないうちにボロが出てしまったわけです。しかし簗氏は5日の会見で「国交省への働きかけ」とともに「農水大臣の辞任」も否定しました。
簗氏は辞任を否定した理由について「高市首相から『引き続き農林水産行政の推進に向けて全力で仕事をせよ』というご指示をいただいた」と述べたのです。ま、大臣が辞任したら次は高市首相の「任命責任」が問われますから、ここはそうとう無理があっても嘘に嘘を塗り重ねて踏ん張る場面です。
でもこれ、もはや完全に自民党政権の閣僚が不祥事を起こした時の既定路線になっちゃってますよね?不祥事を起こした大臣が「一生懸命に大臣としての仕事をすることで信頼を取り戻したい」っていうこのインチキロジック、そろそろいい加減にしてくれませんか?一見、反省してるかのように見せつつ、実際は自分の不祥事を「なかったこと」にする便利な屁理屈。こんなの民間企業じゃ1ミリも通用しませんよ。
つーか、あたしは、自民党がこんなふざけた屁理屈をさも当然のことのように繰り返して来たせいで、自分がパワハラで辞職したために行なわれる市長選に「加害者である私だからこそ行なえる対策がある」などと抜かして出馬するバカが出て来るのだと思います。仮にも有権者から選ばれた市民の代表が、市民から与えられた権力を悪用して数多くの部下に日常的にパワハラを繰り返していたなんて、どの角度から見ても一発退場のレッドカードじゃないですか?
それなのに、言うにことかいて「加害者である私だからこそ行なえる対策がある」って、はぁ?本当に自分が加害者だと自覚して反省しているのなら「自分にできること」を考える前に、まずは「自分がすべきこと」を考えなさい。分からないならあたしが教えてあげましょうか?人として最低の行為を繰り返して来た加害者であるあなたが最優先すべきこと、それは「二度と被害者たちに近づかないこと」なのです。
(『きっこのメルマガ』2026年10月7日号より一部抜粋・文中敬称略)
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- 第377号 居座り続けるイヤナ大臣/夢の山田うどん/紫蘇の実/汁女優きっこ(笑)(10/7)
- 第376号 秋の味覚がSOS?/東京のツバメ/燕帰る/世田谷王国の野望(9/23)
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