PKO、ノウハウ継承課題 部隊参加途絶える―カンボジア派遣から30年・陸自
陸上自衛隊が初めて参加した国連平和維持活動(PKO)で、派遣部隊がカンボジアで活動を始めてから20日で30年になる。大規模な部隊派遣は2017年に撤収した南スーダンが最後で、再開の見通しは立っていない。現場を知る隊員が減る中、陸自はノウハウの継承に苦心しながら訓練を続けている。
宿営地を取り囲み、小銃を発砲したデモ隊に向け、陸自隊員が応射する。陸自駒門駐屯地(静岡県御殿場市)の国際活動教育隊は12日、宿営地警備に当たる隊員の武器使用などを問う訓練を実施した。国連に反対するデモ隊が暴徒化したとの設定で、非殺傷装備での鎮圧が可能かどうかや、武器使用の要件に該当するかなどの判断を隊員に求めた。
派遣に備えた研修の一環で、国際活動教育隊に集められた隊員らは、関係法令や過去の事例を学ぶほか、駆け付け警護や爆発物対処の訓練もする。これまでに約2700人が修了。同隊は全国の部隊に出張して訓練の支援なども担当している。
陸自はカンボジア以降、停戦監視や物資輸送、施設復旧など10のミッションに約1万2000人を派遣した。ただ、現在は南スーダン司令部要員に4人を出しているだけだ。活動の軸足は、PKOに参加する途上国にインフラ整備や衛生などの技術を指導する「能力構築支援」に移っている。
背景には、PKO任務の担い手が先進国から途上国に移る世界的な流れや、自衛隊の「高圧的にならない丁寧な指導」へのニーズの高さもある。それでも部隊派遣が求められる可能性を踏まえ、ノウハウの継承は欠かせない。
国際活動教育隊では、派遣経験者から得た「教訓」を蓄積。海外の多国籍訓練や国際会議にも参加し、訓練に反映させている。西村修隊長は「どうしても現地の空気感を伝えるのは難しいが、多様な訓練でいつ命令が出ても対応できるようにしたい」と話している。(2022/09/20-07:05)