ダイエット中に「控えるべき食べ物」リストを作成したとしたら、砂糖や油物と肩を並べて、必ず登場しそうなバター。脂肪たっぷりです。心臓病や糖尿病といった慢性的で深刻な病気にも影響があるというイメージがあるので、好きだけど我慢している、という方も多いのではないでしょうか。そんな中、そんなバターを再評価しようという声があがっています。
バターは心臓病や糖尿病に影響なし!だけど、有害でも有用でもない中立的な食べ物
米ワシントンポストの記事では、アメリカの健康な状態の成人約63万6151人を含む9つの研究結果から、バターの消費量と健康への影響について分析をしています。
まず、成人一日の平均的なバターの摂取量は、スプーン大さじ1杯(1杯は15ml)で1/3杯〜3杯という結果が出ました。
調査期間10年の結果を分析すると、9,783人もの人が心血管疾患、もしくはそれに関連した病気、例えばアテローム性動脈硬化や脳梗塞を発症したそうです。
そして、糖尿病に関しては2万3,954人が発症したとのこと。
ただ、バターの消費は心血管疾患に関する病気に影響はなかったとのことです。
むしろ、バターを消費している人については、「2型糖尿病」になる確率が4%程減っているとのことでした。
スプーン大さじ1杯のバターには約7gの飽和脂肪が含まれていると言われています。
飽和脂肪とは取りすぎると、前述したような疾患を引き起こしますが、不足すると血管が弱くなり脳出血などを引き起こすため、バランスよく取る必要がある成分です。
ただ、今までは「バターと健康」という観点から見たときに、飽和脂肪というネガティブな成分にだけ焦点が当てられてきたため、身体にプラスとなる他の成分が見過ごされてきた可能性がある、と研究者たちは付け加えます。
確かに、エネルギーの増加以外にバターが身体にいい、というイメージはないですよね。
今回の調査結果から、研究者たちはバターを「健康的な食べ物である」と断言をすることはなく、“Middle of the road food”(中庸的な食べ物)と定義付けました。
「砂糖やデンプンよりは健康的だけど、代用品として用いられる豆乳やキャノーラ油、オリーブオイルよりは健康的ではない」という意味での、中間的な食べ物。
実は脂肪は身体に悪くない 拭えないネガティブなイメージと科学者たちの苦悩
米TIME誌によると、同研究に携わったボストンにあるFriedman School of Nutrition Science and Policyの学部長を務めるダリウシュ・モザファリアン博士(Dr.Dariush Mozaffarian)は、「バターは極めて有害とも、有効ともいえない」とこたえています。
「全体を通してみると、飽和脂肪はニュートラルな位置づけといえるでしょう。サラダ油、果物やナッツはバターよりもヘルシーです。その一方で、低脂肪の七面鳥肉、ベーグルやコーンフレークやソーダといったものはバターよりも健康に悪いのです」
以前にも、脂肪について、健康に害はなく体重の増加にも関連がない、という事実を研究者が証拠をつきつけても、「アメリカ人の中で最も中傷されてきた栄養」という汚名が晴らせないでいるようです。
モザファリアン博士は、4月にジャーナル誌Circulationにて別の研究結果を発表していました。
それは、3,333名の成人の血液を分析したもので、高脂肪の乳製品から高いレベルで3つの副次的結果が出た人に関しては、低いレベルの人と比較して46%も糖尿病を発症するリスクが減ったということです。
その他の研究でも高脂肪の乳製品がもたらすメリットについて様々な調査結果がでているとのことです。
以前に書いた記事「健康神話崩壊。「低脂肪ミルク」に隠された代用品の甘い罠」においても、低脂肪や無脂肪の乳製品のリスクと、脂肪を摂取することのメリットについて記述していますので、ぜひご覧ください。
このバターの研究については様々な反応が。
「アンチバターなやつらの話を聞かなくて正解だったよ。まあ、もともとバターはたくさん食べてないし、揚げ物やサラダにも植物性のオイルを使っているんだけどな」
「飽和脂肪こそ私たちが摂取するべき栄養だよ!最も安定している脂肪で酸化に抵抗できるしね」
「セールの時期にはバターを大量に買いだめしているよ」
コーヒーに砂糖をいれる代わりにバターを、という切り替えは難しいとしても、こういった知識も念頭にいれて、ひとつの製品を過剰に摂取することなくバランスのよい食生活を心がけていきたいですね。
ただ、様々な説が飛び交っているため、情報をしっかりと調べて考えていくことが、今後本当の意味で健康に生きていくためには必要な行動なのかもしれません。
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文 / 臼井史佳