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文科省の改悪ガイドラインで「隠ぺい委員会」激増の闇。いじめ重大事態の調査現場で起きている異常事態

いじめ重大事態の認定件数は2024年度に1,405件を記録し、過去最多を更新し続けています。しかし現場で被害者を支援する側からは「調査こそが軽視されている」との悲鳴が上がっています。令和6年8月、文科省は調査ガイドラインを改悪し、実質的に隠ぺいを容認する仕組みが広がりつつあるのです。今回のメルマガ『阿部泰尚メルマガ「伝説の探偵」』では、代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、教育行政の舵取りがどこに向かっているのか、現場で何が起きているのかを鋭く告発します。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:忍び寄る対策後退

忍び寄る対策後退

いじめ問題に取り組むと言っても現場は様々である。

私の場合、多くは調査的な現場対応と相談対応が圧倒的に多い。それこそ「いじめ探偵」だから、現場で証拠を集めたり隠ぺいの巧妙なロジックを暴いているのだろうという勝手な一般的なイメージも強い事だろう。

まあ、その通りで、圧倒的に時間と労力を取られているのは事実であるが、これのみが現場ではない。むしろ、私が時折、第一線の現場を引退したいというのには理由がある。

それは、極めて重要で全体にかかわる問題の現場を知っているからだ。

その現場こそが、教育行政全体がどちらの方向に舵を切ろうとしているのかという政治的な問題の現場である。

最近ではいじめ問題ばかりを取り上げている「伝説の探偵」は、いじめ被害者やその保護者、活動家に多く読まれているようだから、そうした当事者にハッキリと申し上げよう。

現状は極めて厳しい状況にあり、今後は改悪が続く可能性が極めて高いということだ。

令和6年8月、文科省は「いじめの重大事態調査に関するガイドライン」、通称「ガイドライン」を改悪方向に舵を切った。

多くの被害者や団体、研究者、専門家がパブリックコメントで問題点を指摘したが、恐ろしく短期間のパブコメの実態は形だけのものであり、予定通り、改悪ガイドラインは今現在の指標とされてしまっている。

そして、その風潮はどうなったか?といえば、当時はあくまで学校側当事者の意見に過ぎなかった意見が、広く常識化され、今では前提とした扱いになっている。

さて、常識化された事柄とは何か?

それは、「いじめの重大事態調査は、調査に偏重しているとされている」ということだ。

まずは、令和6年8月ガイドライン改悪はなぜ起きたのかを考察すれば、わかりやすい。

現在でも問題になっているが、当時は、調査組織の設置がされず、長期放置されるという事態が問題になっていた。例えば、高知南国市の水難事案の第三者委員会は5年間放置された。湖西市はおよそ4年間放置、他にも数年放置というのはニュースの見出しになっていた。公立校であれば教育委員会、私学であれば学校法人が第三者委員会を設置するが、弁護士会などの職能団体へ依頼をして推薦状をもらって委員を選任するのに時間が掛かっていたのだ。

結果、現場の教育委員会などからは予算措置が大変であることや選任までのやりとりが大変だという不満が噴出していた。

ガイドラインの決め手となる有識者会議は、御用学者さんや御用大物弁護士さん以外は、教育委員会の代表者や校長会の代表者などから構成される。当然に遺族会の代表者さんや被害団体の代表などはこうした有識者会議には呼ばれもしないのだ。

それにより、被害側や遺族側の意見はまず考慮されることは無く、「学校が大変なんだよ。」「教育行政の仕事が増えるだろ!?」の不満を解消するにはどうすれば?が主体的な内容になりやすいのだ。

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しかし実態は違う

実際は、奈良弁護士会がいじめの第三者委員会の推薦依頼を業務に見合わない報酬であるなどとして問題になったように、特に自治体によりけりで、ほぼ総じて激安報酬である上に責任と膨大な業務量を押し付ける第三者委員の選任問題は自治体側の報酬基準の問題であった。条例改正をして偉そうにしている地方自治体もあるが、それでも業界の報酬基準から考えると、80%オフ〜40%オフ程度である。改正をしていない自治体はそれ以下であるから、仕事ではないと言われても仕方がない状態なのだ。

他にも情報開示請求で学校が教育委員会に報告した内容などを見ている被害者側はほぼ全員が、被害者が悪者にされていたり、家庭の問題にされていることを知っているであろうが、偏向、ねつ造、偽造した報告書も普通に出てくるのが実態であり、調査審議が主体の第三者委員会は、通常の観察力がある委員が困惑するシーンも多くなるだろう。結果、調査は長期化しやすくなり、真実を解明するのに時間が掛かればまだ良い方で、解明するに足りないとなりやすい。

つまり、調査に偏重したいじめ対策が重いというのは、制度の問題と学校側のガバナンスの問題であり、内部問題が圧倒的に大きいのだが、自らの無能の責を取りたくないからこそ、問題を他責としたかったわけだ。

その結果、まさかとは思ったが、いわゆる「無能のためのオペレーション」が行われ、調査の簡素化、第三者性の簡素化、形骸化した独立性を認めるガイドラインが出来上がったわけだ。

誤った議論と評価により改悪の事例

具体的には、学校のいじめ対応が調査対象であっても、改悪ガイドラインでは学校主体で調査をしてもよいし、教育委員会の担当課の元課長が学校長であっても、教育委員会の職員で主に形成される教育委員会方式で第三者委員会を形成してもよく、外部の専門家が1名参加でいれば、外部委員会なんだと言い張れてしまう。

しかし、どの条例や自治体の規則も、こうした委員会の主な権限は委員長が持っていることになり、外部の委員が平の委員であれば、せいぜいできて懸念表明程度でそれが調査結果に影響することは無いのだ。

さらに第三者委員会の委員の中立公正については、異様な歪みが示された。なんと、職能団体が推薦状を出せば、それで良いとされているのだ。 一般常識がある賢明な読者の皆様は、なんじゃそりゃ、と思うだろうが、わからない方のために解説する。

多く問題が起きるのは常設委員会で委員となり、個別のいじめ重大事態問題の調査審議に当たる委員についてだが、この委員は常設するにあたって職能団体から推薦状が発行されている。

つまり、個別に発生する問題についてはその限りではないはずなのだ。

なぜなら、常設委員会の本筋は、予防や啓発、問題発生時の学校や教育委員会の適切な対応のアドバイスやそれを行うための根拠となる規則や条例案などの検討などである。

だから、職能団体としては、そうした専門知識を有していたり、経験があるから推薦をするのである。

しかし、委員は就任してから発生する個別問題にあたらせられるわけだ。

つまり、本来の職能団体の推薦状の目的は全く異なるものであるのだが、常設委員会の委員を個別問題にあたらせる教育委員会などは、改悪ガイドラインを盾に、推薦状があるのだから、中立公正であることは文科省がお墨付きを与えていると言い張るのだ。

これが成立するのであれば、その委員が所属している職能団体は、未来を予測して被害者加害者など調査対象となる人物やその家族や親せきと利害関係がないことを知っているということになる、ノストラダムスも鼻血が出るほどびっくりする予知能力を持っていることになってしまうわけだ。

そんな能力があるなら、全て職能団体に任せ、未来予知により未然防止をすればよいだけだが、当然にそんな能力はない。

つまり、こうした推薦状は直ちに「中立公正」を示すものではないにも関わらず、文科省の改悪ガイドラインは、それでも良いと堂々と表記したがゆえ、これを悪用し、文科省が恰もお墨付きを与えているからいいんだもん!と開き直る地方自治体、教育委員会がいくつもあるわけだ。

まだまだあるが、上に示す具体例はほんの一部であり、改悪ガイドラインにより、第三者委員会とは言えない実質隠ぺい委員会やとりあえずマーやりました委員(トリマ委員会)が激増しているのが今の実態なのであるが、調査偏重だという風潮は、抵抗がないから、時間と共に常識化されることになったわけだ。

一方で、データ上、重大事態いじめの数は増え続けている。

年度別 重大事態 認定件数

2020年度 (R2) 514件 コロナ禍の一斉休校等があったが、前年比で減少せず。
2021年度 (R3) 705件 前年比で約200件の急増。SNS関連のトラブルが増加。
2022年度 (R4) 923件 認定が遅れていた事案が表面化し、過去最多を更新。
2023年度 (R5) 1,306件 初めて1,000件を突破。国が「早期認定」を強く指導した結果。
2024年度 (R6) 1,405件 全国的な認知件数の増加傾向が続く。
2025年度 (R7) (現在集計中・高止まり予測) 全国で第三者委員会の設置が追いつかない状況が常態化。
(文科省認知数)

重大事態いじめとは、1号生命身体財産などに著しい被害の疑いがある、2号いじめによる不登校の疑いがあると押さえておけばよいだろう。通常のいじめとは異なる被害状況が酷い状態を示すものだが、これが倍増しているということを示している。

しかし、実際の現場にいると、条件として明らかに重大事態要件を満たしている状態でも、丁寧に対応したんだもんという謎の理由で、重大事態として認めない学校があったり、第三者委員会の設置をすると長期化する、学校が動かなくなる、酷い被害で自死念慮が強くなっている被害生徒に根掘り葉掘り聞くことになるとネガティブキャンペーンをして被害保護者を脅し、申し立てを潰して認定しない教育委員会が平常運転であるという現実に直面する。

つまり、隠ぺいと消極認知、誤認を排除すれば、この数はそもそもでもっと多いはずという氷山の一角に過ぎないという現実があるのだ。 その一方、数が倍増している=対応できない→簡略化をもっと進めたいという論調は、いわゆる学校側有識者の中では当然の結論として扱われているのだ。

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いじめ対策は調査に偏重しているわけではない

現場にいて、被害側の支援をしている誰もが言うと断言できるのは、学校や教育委員会が行ういじめ対策が調査に偏っているのではなく、調査自体が軽視されているという現実だ。

例えば、一応の第三者が関与していた重大事態いじめの調査は、2022年度(令和4年度)重大事態認定:923件のうち、外部有識者による調査組織は約207件(全体の22.4%)、2023年度(令和5年度)重大事態認定:1,306件のうち、外部有識者による調査組織は約380件(全体の29.1%)と言われている。つまり、第三者委員会とメディアに報じられる委員会は、実質上の第三者はないわけだ。 また、ほぼ全ての調査報告書には共通して書かれる事柄がある。

それは、「学校や教育委員会、私学であれば学校と学校法人が、いじめ防止対策推進法を理解していなかった。」である。

平成30年の記録しかないが、総務省はこうした事象を調べて文科省に異例の勧告をしている。その勧告によれば、学校側の対応の不備がおよそ64%あり、遅滞していると評価されるものは35%あるとしており、いじめ防止対策推進法を理解していないという問題提起を行っている。

法理解はずいぶん進んだという報道もあるが、その先にあったのはテクニカルな隠ぺいとガイドラインを改悪させるというゴールポストを動かすという暴挙であったと言えるだろう。

調査組織の形成が困難というのは、専門家を雇うにしても彼ら業界の相場を無視し、職能団体すら拒否したいというほどの不適正な依頼を繰り返して行っているという報酬等の自治体の勝手なルールの問題であり、これについてはいじめ防止対策推進法においては予算をしっかり用意しようとなっているから、法令違反のまま運用している教育行政サイドの問題に他ならないし、そもそもで予防教育が発生数からして効果が無いことは明らかであるのに、それをほとんど変えていないからではないのか。

確かに調査をしても変わらないし、提言を受けても変わらない。重大事態の発生数を隠したり、調査報告書の公開もせず、所見書も公開しなかったり、当事者に調査報告書を開示せずに情報開示請求をしなければ開示しないという自治体もあるのが現実なのだ。

そもそも重大事態いじめの調査は、実態解明をする事と再発防止をする事が主目的である。再発防止策が出てもこれをしないというならば、確かに調査は無駄という結果になるが、この無駄を作っているのは再発防止策を実施しない教育側にあるはずだ。

正す対応策はほとんどないが

しかし、現状の調査に偏重しているいじめ対策という誤った常識の方向性を正すには、相当なエネルギーが必要なのだ。

まずは、数多の被害当事者、その保護者、被害団体が広く手を結び、計画的なロビイングをすべきだろう。確かにセンセーショナルないじめ被害事件は社会問題化しやすく、それにより国が動くということもあろうが、それを待っているわけにはいかない。犠牲者を増やすべきではないのだ。

私は現在、被害当事者同士を個別に繋いだり、被害当事者の会に案内をする活動を積極的に始めている。これにより、すでに教育委員会と対応中のいじめ被害側とこれから対応を始めるいじめ被害側が繋がることで、新たな発見があったり、隠ぺいの第一歩的な初見殺しの隠ぺい工作を見破るというケースが増え始めている。

だが、これは針の穴をあけた程度に過ぎない。

今後、いじめ対策、特に重大事態いじめの調査や対策はより後退する可能性が高いと私は予想する。被害者やその家族のために私は今後も奔走するが、それは一馬力が基礎に過ぎない。

現実問題として、これはまた後日取り上げるが(現在調査対策中)新たな日本でよく起きている問題が発生しているのだからーーー(『伝説の探偵』2026年5月9日号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方はぜひご登録ください。初月無料でお読みいただけます)

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社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
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