昨年は1年間で2万品目を超える食品が値上げされ、年が明けても値上げラッシュに歯止めがかからない日本。物価高で「節約」がもはや限界に達した今、東京23区の中古マンション平均価格は1億円を超え、22カ月連続で上昇するという異常事態となっています。今回、メルマガ『きっこのメルマガ』では、著者で人気ブロガーのきっこさんが、70%の確率で迫る首都直下型地震をスルーして高額マンションを買う愚かさを、鴨長明『方丈記』を引きながら鋭く指摘。先人の知恵から導かれる、現代人が本当に手に入れるべきものとは何かを語ります。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
令和の方丈記
昨年は1年間で2万品目を超える食品が値上げされましたが、年が明けても値上げラッシュに歯止めが掛からず、1月から4月までに計6391品目の食品が値上げされました。もはや食品や日用品の値上げは完全に常態化し、上がらないのは賃金だけ!‥‥なんていう状況が3年近くも続いています。あたしのようなフリーランスは、物価高で必要経費はどんどん膨らんで行く一方、ギャラの賃上げなど死んでも口にできないため、実質的な賃金は減り続けています。
そんな今日この頃ですが、『週刊女性 PRIME』の最新号が《「物価高でやめたもの」ランキングTOP10》を発表しました。 https://www.jprime.jp/articles/-/41602#goog_rewarded
詳細はリンク先の記事を読んでいただくとして、男女1000人を対象にアンケートを実施した結果、以下のようになりました。
「物価高でやめたもの」ランキングTOP10
1位 外食
2位 洋服・ファッション(新品の購入頻度)
3位 コンビニでの買い物
4位 カフェ・喫茶店
5位 お菓子・スナック類
6位 飲み会・会食
7位 旅行
8位 ペットボトル飲料
9位 電気・ガスの使用
10位 美容院の頻度
あたしはこの結果を見て、背骨を抜き取られた鮎の塩焼きのように脱力してしまいました。何故なら、あたしはすでに20年以上も前から「外食」はしないし「洋服」もメッタに買わないし「コンビニ」で買い物もしないし「カフェ」にも行かないからです。「飲み会」など行かないし「旅行」は数年に一度、母さんと温泉に行くだけ。「お茶」は水筒を持ち歩いてるし、自宅にはエアコンも洗濯機も電子レンジもテレビも掃除機もないので、月の電気代は2000円以下です。さらに、髪は美容師仲間と切りっこしてるので、ここ30年、1円も使ってません。
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1億円超えの東京マンション、誰が買うのか?
つまり、あたしにはこれ以上の節約方法がない!‥‥ということになります。それなのに、嗚呼それなのに、それなのに‥‥というわけで、東京のマンションはバカみたいに高騰し続けてます。
不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」が2026年1月に発表した「東京都内の中古マンション・中古一戸建ての価格動向レポート」によると、東京23区のファミリー向き中古マンションの平均価格が初めて1億円を超えて「1億1766万円」となり、過去最高を更新したのです。東京都内の中古マンションは22カ月連続で上昇していて、この「1億1766万円」という平均価格は、前年同月比154.0%とのこと。つまり、この1年で平均4000万円以上も値上がりしたわけです。
ま、これはファミリー向きなので、3LDKとかの広いマンションだけのデータです。ワンルームや1DKなどのシングル向き中古マンションなら、東京都内でもサスガに1億円なんてしません。で、同じ東京23区のシングル向き中古マンションを見てみると平均価格が「6828万円」、こちらは13カ月連続の上昇で、前年同月比143.9%!こっちも負けてはいませんでした。
で、東京で生まれ育ったあたしとしては「こんなの誰が買うの?」ってことですが、それでも買う人がいるから売る会社があるのでしょう。だけど、普通に考えて、ワンルームの中古マンションに6000万円も払うなら、東京から離されたとこに新築の一戸建てを買ったほうがぜんぜんいいじゃん!‥‥て思うのはあたしだけでしょうか?
70%確率の首都直下型地震をスルーする愚
あたしは、父さんが5代東京、母さんが3代東京という生粋の東京っ子なので、東京以外に住むのは「都落ち」みたいで悔しいです。でも、そう思ってたのは数年前までで、今は考えが変わりました。何故なら、マグニチュード7クラスの首都直下型地震が今後30年以内に発生する確率が「70%」だと内閣府の研究チームが発表したからです。
今年3月にアップデートされた首都直下型地震の内閣府の被害想定によると、死者が約23,000人、負傷者が約123,000人、建物倒壊数が約610,000棟、建物焼失数が約170,000棟、経済的被害が約95兆円と試算されました。しかし、これはあくまでも首都直下型地震が単発で発生した場合の被害想定なのです。同じくらいの確率で発生すると予測されている南海トラフ地震が連動したり、富士山の噴火が連動したり、さらには欠陥原発の爆発事故が発生したりすれば、東京の被害は何倍にも膨れ上がります。
特に今の東京は、こうした首都直下型地震の発生確率など完全に見て見ぬふりをしたかのように、高層ビルやタワーマンションが建設され続けています。昨年の11月26日に発生した香港北部のタワーマンションの火災では、下から燃え上がってくる炎から逃げることができなかった住民が168人も犠牲になりました。それなのに、1億円以上も払って東京に中古のタワーマンションを買う人って、過去から何も学んでいないのでしょうか?
朝、起きた時は晴れてたとしても、その日の降水確率が「70%」だったら、たいていの人は折り畳み傘をバッグに入れて仕事に行きますよね?それなのに、何で発生確率が「70%」の首都直下型地震のことはスルーできるのでしょうか?あたしには理解できません。百歩ゆずって、投資目的で東京にマンションを買うならともかく、自分が住むために買うなんて信じられません。そして、仮に投資目的だったとしても、首都直下型地震で倒壊したり燃えたりしたら、多額の借金だけが残るのです。
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『方丈記』に学ぶ「軽トラ・キャンピングカー」
「じゃあ、どうすればいいの?」という声がどこからか聞こえてきたので、古典マニアのあたしが先人の知恵を授けましょう。わが日本には、兼好法師の『徒然草』、清少納言の『枕草子』と並んで「古典日本三大随筆」に数えられている鴨長明(かものちょうめい)の『方丈記』という素晴らしい随筆があります。随筆と言っても『徒然草』や『枕草子』のように、つれづれなるままによしなしごとを綴ったわけじゃなく、鴨長明が実際に体験した大災害が詳しく記されています。
皆さんも中学とかで習ったと思いますが、それが『方丈記』における「五大災厄」です。西暦だけ書きますが、1177年5月の「安元の大火」、1180年4月の「治承の辻風(竜巻)」、1180年6月の「福原遷都」、1181~1182年の「養和の飢饉」、1185年8月の「元暦の地震」という、どれか1つだけでも大変な災厄が、わずか8年の間に「これでもか!」「これでもか!」と連発したのです。
で、今回取り上げるのは、一番最初の「安元の大火」です。安元3年4月28日(現在の暦で1177年5月27日)午後8時頃、都の東南、現在のJR京都駅付近の宿屋が、火の不始末で火事を起こしたのです。当時、東南から西北へと強風が吹いていて、その火はまたたくまに風下へと燃え広がりました。朱雀門、大極殿、大学寮、民部省などが一夜のうちに全焼して灰になり、公卿の邸宅だけでも16軒、一般の家屋に至っては都の3分の1が焼失したのです。
死者は「数十人」と記載されていますが、同じ「安元の大火」を扱った『平家物語』には「数百人」と記載されていることや火災の規模から考えて、この「数十人」というのは書き写した時のミスで、実際には「数百人から千人以上」の犠牲者が出たと推算されています。
この火災を実際に見ていた鴨長明は、逃げまどう人々や夜空へ立ち上る煙などを詳しく記していますが、何よりも衝撃を受けるのが、大金を払って買い集めた財宝をすべて灰にしてしまった公卿たちを筆頭に「人間の愚かさ」について綴った次の一節です。
「人の営み、みな愚かなる中に、さしも危ふき京中の家を作るとて、財(たから)を費やし、心を悩ますことは、すぐれてあぢきなくぞはべる。」
(きっこ訳)「人間のすることはみな愚かだが、その中でも特に愚かなのが、どこからか火が出たらすぐに燃え広がってしまう危険な都の中に、わざわざ高いカネを払って家を建て、災害を心配しながら暮らすことだ。これほど甲斐のないことは他にないだろう。」
もしも鴨長明が現代に生きていたら、30年後までに70%の確率で首都直下型地震が発生すると予測されてる都の真ん中に、新築の時より遥かに値上がりしてる中古マンションを買うほど愚かなことはないと言うかもしれませんね。そして、そんな鴨長明がどんな家に住んでいたのかというと、それがこの随筆のタイトルにもなった「方丈庵」でした。
現在は京都の左京区の「下鴨神社」の第一摂社「河合神社」の境内に復元されてるので、見学することもできますが、その名の通りに「方丈」、つまり「一丈四方」の正方形、3メートル四方の小さな家で、畳でいうと6畳より少し小さい「5畳半」ほどのワンルームです。で、このワンルームの何が凄かったのかというと、この家は分解して移動することができたのです。
※「復元された方丈庵」 https://www.youtube.com/watch?v=u8KRt3RbNKY&t=18s
簡単な土台と骨組みを組んだら、後は薄い板で作られた軽量の壁を嵌めていき、最後に屋根を乗せます。大工さんが2人いれば半日ほどで組み立てることができたそうで、5メートル四方の平らな土地があればどこでも設置できました。そして、分解すれば大八車で簡単に運ぶことができたのです。「安元の大火」だけでなく、その後に竜巻や地震まで体験した鴨長明は、建物の多い都で暮らすことの危険性、どこか1カ所に留まる暮らしの危険性に、誰よりも先に気づいたのです。
さらに鴨長明は、琴や琵琶まで持ち運びしやすい組み立て式のものを作りました。まるで現代のキャンプ用品のような発想ですよね。そう!今も昔も愚かな人間は、将来的に大災厄が発生すると予測された場所に高い家を買って住み続けますが、鴨長明のように賢い人間は、何かあった時にすぐに移動できる小さな家、つまり「軽トラのキャンピングカー」を手に入れるべきなのです!
あたしは、これこそが先人からの知恵だと思います。仮に東京に住むとしても、マンションは首都直下型地震で倒壊しても借金を背負わないように賃貸にしておき、高額中古マンションの何十分の1の値段で買える「軽トラのキャンピングカー」を手に入れておくのです。そうすれば、休日にはキャンプを楽しめますし、イザという時には完全プライベートな避難場所にもなるからです。(『きっこのメルマガ』2026年5月20日号より一部抜粋・文中敬称略)