ショッピングモールのフードコートには、なぜ似たような人気チェーンが並ぶのか――。その背景には、「売れるブランド」をめぐる熾烈な選別と、想像以上にシビアな収益構造があります。外食・フードデリバリーコンサルタントの堀部太一さんは自身のメルマガ『飲食・デリバリー企業向け/業績アップメルマガ』の中で、実際の収支モデルをもとに、フードコート出店のリアルな収益構造と成功条件を整理します。
フードコート出店のビジネスモデル
ショッピングモール出店のモデルは、ショップインの形で出店するモデルとフードコート出店のビジネスモデルがあります。
共に売れる型ができると、基本的には出店開発部隊から引く手あまたな状態になります。
「なぜあのブランドがあんなに展開できているんだろう」と思われるかもしれませんが、確実に売上を取ってくれる再現性の高いビジネスモデル、かつそこに独自性があるブランドは喉から手が出るほど欲しいものです。
その中で今回はフードコート出店に関して、そもそもどのようなコスト構造で、どのような収益モデルになっているのか、ご支援先の事例をもとに見ていこうと思います。
出店が決まる背景
では、どのような形で出店が決まるのか。基本的には、2つの入り口があります。
1. ショッピングモールの出店開発部隊からのオファー
2. 仲介会社からの出店オファー
どちらも常に情報を探していらっしゃいますが、基本的には後者の仲介会社の方が積極的に店を探されています。彼らは同時進行で出店開発のプロジェクトを抱えていらっしゃるので選択肢があるのも魅力。
ご支援先でもショッピングモールに出店されているところは多いのですが、基本的には後者の仲介会社から始まったというケースが多いです。そして「0から1」ができた後は、ショッピングモール自体の開発部隊からのオファーになっていきます。
ただ、オファーがあっても最終的に判断するのはその親元の不動産部門です。彼らからすると提供する売場に対して最大限儲かるブランドを入れたいもの。
その結果、金太郎飴的なスターバックス、マクドナルド、丸亀製麺に代表される大手チェーン店ばかりになってしまっているのですが、このあたりは不動産チームと出店開発チームとのせめぎ合いになっています。
基本的な条件設計
・家賃
フードコートは座席が共有スペースということもあります基本的に坪数に対する家賃は高いです。
厨房の坪数としては7~8坪くらいが多いと思います。これに対して坪家賃4万~6万円という設定は、大都市圏以外でもよく見る数字になってきました。
7~8坪で家賃も30万円~50万円くらい。
おや、意外と低いんじゃない?となるのですが、ここに色んな固定費が乗ってきます。
- 共益費
- 経常販促費
- 駐車場負担金
- 駐車券読取機
- インプット端末
- 入金機使用料
- 両替機使用料
- 店長連絡会費
- デジタル従業員証
結局これを足すと結構な金額になります。
共益費の方で別途坪1万円はかかってくるので結局上記の1.3~1.5倍程度になり、40万円~60万円くらいになってきます。またそこに、物件によっては加重賃料が発生します。売上いくらまでは8%、それ以上は7%みたいなやつですね。
いつもの感覚で「家賃比率10%で良いかな?」と考えると詰みます。それが下記が理由です。
この記事の著者・堀部太一さんのメルマガ
■定借は絶対
当たり前ですが普通借家な訳はなく。もちろん定借です。定借期間に関しては運営会社によって違うのですが、初めてショッピングモールのフードコートに出るという場合は、だいたい6年ぐらいでの提案をされることが多いかなという印象はあります。
つまり、最悪のことを考えても6年でしっかりと投資回収が終わっていて、かつそこで儲かっているという状況になっていなくてはなりません。ただそこでさらに大きな問題になってくるのが、減価償却費の高さです。
■初期投資の大きさ
路面で展開するよりももちろん、初期投資の金額は上がります。
- 敷金
- 共通内装負担金
- 内装工事監理費
- 内装工事監理費
- 現場協力金
- 現場協力金
- オープン販促
- フロアガイド
なんで厨房だけのコストなのにこんなにかかるんだ!と思う事が多々ありますが、厨房坪数に対する投資額が80万円程(敷金除く)になってきます。ローコスト居抜き出店される企業さんからするとびっくりな金額ですよね。
それに対して敷金と厨房機器類と自社の工事費が入ってくるので坪投資は100万円を超えるのが多々。
仮に8坪なら800万円。通常の減価償却の計算式ではないですが、6年定借で最悪そこで出ていかないといけないならば、毎月約11万円の固定費が乗っかってくると考えた方が良いです。
この記事の著者・堀部太一さんのメルマガ
■PLを考える
まずはコストだけを考えてみます。
原価 :通常通り
人件費:通常通り
家賃 :400,000円
家賃加重:最低額を超えると8%程度かかってきます
固定費:200,000円(※上述共益費など
減償 :110,000円(※敷金除く
消耗費:5%程度
水光費:3%程度
販促費:都度発生
手数料:5%程度(※クレカ手数料が高止まり
その他:3%
これくらいになります。
それで6年間頑張ったが全く利益は出なかった。知名度は上がったかもしれないが。。という損益分岐点ラインがこうなります。
売上 :3,300,000
原価 :990,000(30.00%)
人件費 :990,000(30.00%)
家賃 :400,000(12.12%)
家賃加重:0
固定 :200,000(6.06%)
減償 :110,000(3.33%)
消耗費 :165,000(5.00%)
水光費 :99,000(3.00%)
販促費 :66,000(2.00%)
手数料 :165,000(5.00%)
その他 :99,000(3.00%)
営業利益:16,000(0.48%)
坪売上で見ると8坪で考えると40万円程ですね。ただこれはとてもネガティブ。やって良かったと最低限思える営業利益率10%で考えたらこうなってきます。
売上 :7,800,000
原価 :2,340,000(30.00%)
人件費 :2,340,000(30.00%)
家賃 :400,000(12.12%)
家賃加重:224,000(2.87%)
固定 :200,000(2.56%)
減償 :110,000(1.41%)
消耗費 :390,000(5.00%)
水光費 :234,000(3.00%)
販促費 :156,000(2.00%)
手数料 :390,000(5.00%)
その他 :234,000(3.00%)
営業利益:782,000(0.48%)
やはり投資額も大きい分、しっかり利益を出そうと考えるとこれくらいの売上が必要になってきます。8坪なので坪売上は97万円くらい。
そうなると次の課題が出てきます。
・それだけの集客ができるのか?
・それだけ作ることができるのか?
この視点です。
■集客について
やはり市場規模が大きく、安価な業態の方が基本的には強いです。
- ラーメン
- うどん、蕎麦
- 丼系(天丼、牛丼、親子丼)
- バーガー(大手中心)
- 揚げ物(とんかつ、唐揚げ)
- 韓国
- 中華
- アイス
- たこ焼き
などなど。
フードコートは目的来店ではなく、フードコートに来られたお客様の衝動注文をどう獲得するか。それを前提としたビジネスモデルになるので、自分たちだけが中価格帯以上で頑張ろうと思っても集客が非常に困難になります。
もちろん、フードコート全体の価格帯が上がってくれば、中価格でも成り立つことは稀にありますがやはり基本的には難しいですーーー(『飲食・デリバリー企業向け/業績アップメルマガ』2026年5月11日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください、初月無料です)
この記事の著者・堀部太一さんのメルマガ
image by: Utikhrt / Shutterstock.com