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トランプ訪中で「日中関係」はどう変わってしまうのか?世界各国の「米国への信頼低下」と「中国の地位上昇」という現実

国際法を軽視するかのようなトランプ大統領の強硬姿勢により、世界各国で揺らぎ始めた米国への信頼。その一方で、中国を巡る国際社会の評価にはこれまでとは異なる変化が現れているのが現状のようです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、ASEAN諸国やアメリカ国内で進む「対中観」の変化を分析。さらに中国の地位が相対的に高まりつつある背景と、米中関係の変化が日本に与える影響について考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:イラン戦争の中で行われる米中首脳会談で、中国の立場は強化されるのか

関税を振りかざし応じなければ制裁。トランプの“独り相撲”で世界の信頼を失う米国と相対的に高まる中国の地位

ドナルド・トランプ大統領が中国訪問を果たせば、もはや「日米」の利害は一括りにすることは難しくなるかもしれない。

昨年10月末の米中首脳会談から、それに続いてトランプ政権が出した「国家安全保障戦略」(NSS)の中で位置付けられた米中関係が、より現実的な流れとなって動き出す可能性が高い。

先週、オーストラリアのテレビ局「ABC」からインタビューの依頼を受けた。

テーマは「トランプ訪中で日中関係がどう変わるのか」。つまり米中関係の変化を日中双方のゼロサムでとらえ、日本はどうするのか、という問いだ。西側先進国の視点がよく分かるが、台湾問題もこのゼロサムから視点から見ているのだろう。

先週まで2回にわたり、トランプ大統領の国際法を無視した振る舞い──イランへの攻撃など──が、世界のアメリカへの信頼を弱めたことを書いてきたが、今回は少しアメリカ国内の変化にも触れたい。

まずは、先週の続きで世界のアメリカに対するとらえ方で、まだ触れてこなかった東南アジアの見方を紹介しよう。

気になるのは今年4月7日、シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所がASEAN加盟11カ国の識者らを対象に行った調査報告書の結果だ。「もし中国かアメリカのいずれかと同盟を結ぶことを余儀なくされた場合」という設問に対し、「中国を選ぶ」と回答した割合がASEAN加盟国平均で52%と、過半数を上回ったことだ。この結果は、実は2年ぶりのことで、すでに起きていたASEANの「中国シフト」が再び戻っていることを示した結果だ。

なかでもインドネシア(80.1%)とマレーシア(68%)など、国内に多くのイスラム教徒を抱える国から中国への支持が高いのは、アメリカが中東での紛争に深くかかわっていることと無縁ではないのだろう。

また、2019年の調査開始以降初めて、中国に対して「信頼」との回答が「不信」を上回ったという。

いずれにせよ関税を振りかざして交渉し、応じなければ制裁し、また敵対する国には容赦なく力を行使するアメリカの姿勢を肯定的にとらえる国は少なくなっているということだ。そして、それとは対照的に世界と向き合う中国の地位は、相対的にも高まっているようだ。

こうした世界の見方の変化は、いまアメリカ国内にも対中観の変化として現れ始めている。

変化とは、言うまでもなくアメリカ国民の対中感情の好転だ。

根拠となるのは、米調査会社のビュー・リサーチ・センターが2026年1月と3月に行った調査だ。

もっとも、「好転」といっても全体として対中感情が良いわけではない。ピュー・リサーチ・センターのホームページに掲載された記事に「近年、中国に対する米国人の見方は幾分好意的になっている」という見出しがつけられているように、対中感情が改善したとはいえ、それは僅かである。

例えば、中国のことを好意的に見るアメリカ人の割合は、3月の調査では27%でしかない。

ただ、この27%という数字は、前年の調査から見て6ポイントの上昇となり、さらに2023年時の調査から見てほぼ倍増したことになるというから、無視してよい変化ではない。

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「50歳未満の成人の3分の1」が中国に好意的なアメリカ国民

また中国がアメリカにとって「パートナー」か「敵」か「競争相手」かを尋ねたところ、2025年よりも中国を「敵」と見なすアメリカ人は減少(33%から28%に)したことも示された。

ピュー・リサーチ・センターの調査は、共和党支持層で中国に対する見方が厳しく、民主党支持層ではそれが大きく改善されるという伝統的な傾向が相変わらず明らかになっている。

だがその一方で興味深かったのが年齢層別に中国に対する見方が大きく異なって現われたことである。

前述したピュー・リサーチ・センターのホームページの記事には、以下のような記述が見つかる。

若年層は高齢層よりも中国に対して好意的な見方をしている。50歳未満の成人の約3分の1(34%)が中国に好意的な意見を持っている。50歳以上の成人では、そうした意見はわずか19%でしかない。また、50歳未満のアメリカ人は、50歳以上の人々と比較して、中国をアメリカの「敵」と答える割合がはるかに低い(20%対38%)のである。特に共和党員では、年齢による差が大きい。

この理由をインターナショナル・クライシス・グループのアナリスト、アリ・ワイン氏は「ドナルド・トランプ米大統領が中国のせいだと非難したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の記憶が薄れたこと。トランプ氏が2期目に西半球と中東に焦点を当て、北京がアメリカ人の関心の最前線から外れた」ためだと分析する。

だが、それだけではない。この裏側にはアメリカがイランとの戦いで圧倒的な火力を見せつけても、中国がほとんど揺らいでいない現実を世界が目撃してしまったことが影響したとの指摘もある。

ノルウェー防衛研究所のヨー・インゲ・ベッケボルド中国担当上級フェローは、『ニューズ・ウィーク日本版』に寄稿した記事の中で、その力の差を以下のように記述している。

(湾岸戦争が起きた)91年当時、中国に衝撃を与えた米軍との技術格差はもはや存在しない。それどころか、今や中国の軍事力への自信は増す一方。アジアが対米戦の戦場になれば、自国に「地の利」があることも承知している。

イラン戦争は様々な意味から、悪手だったのかもしれない。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年5月10日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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【著者】 富坂聰 【月額】 ¥990/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

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