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「軍事に手を出さなかったから日本は製造業大国となった」高市首相に聞かせたいソニー創業者・井深大の“核心を突く”言葉

結党以来、憲法改正を党是として掲げてきた自民党。こと第29代総裁となった高市早苗氏は、その「野心」を全面に打ち出すかのような姿勢を鮮明にしています。今回のメルマガ『『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中』~時代の本質を知る力を身につけよう~』では、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野晃一郎さんが、ソニー創業者として知られる井深大氏の言葉を紹介しつつ、高市政権による改憲や武器輸出解禁の動きを強く批判。その上で、現在の日本社会全体に漂う「危うさ」に対して警鐘を鳴らしています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです:ソニー創業者井深大氏が残した言葉

ソニー創業者井深大氏が残した言葉

5月3日は「憲法記念日」でしたが、今年で「日本国憲法」は施行から79年を迎えました。この現行憲法に対し、高市早苗首相は自民党大会で、「時は来た」などと言って改憲に前のめりの姿勢を示しています。

そのことに関連して、今回は以下の自分のポストを取り上げます。古賀茂明氏が私のポストを引用してポストしたものを、さらに引用してポストしたものになります。今号から、後半の「今週のメインコラム」では、「3周年記念特別企画」として、ソニー元社長の安藤国威氏との対談を連載でお届けしますので、そちらの内容にもつながるものとして選んでみました。

30万インプレッションですから、思いがけずかなりバズりました。

https://x.com/ktsujino/status/2049769782506041724

評論家の佐高信氏も、かつてソニー創業者の一人井深大氏をインタビューしたときに、「井深氏が『アメリカのエレクトロニクスは軍需によってスポイルされる』と言い切ったことが忘れられない」と各所で書いています。

【関連書籍】『日本再興のカギを握る「ソニーのDNA」』(講談社+α新書)

高市氏は、「来春までには改憲の発議に目途をつける」と発言しており、日経新聞の世論調査では、7年連続で改憲賛成派が反対派を上回っています。

私は、憲法はコンピュータで言うところのアーキテクチャ、あるいはOSのようなものだと思っているので、時代に合わせて内容を見直すことに反対ではありません。しかし、現在の自民党や維新などを中心とした改憲の動きには、強い反発と警戒感を禁じ得ません。

特に高市氏については、過去の発言動画がネット上にも出回っていますが、憲法前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という一文を「おめでたい」と揶揄し、「改憲の機会があれば真っ先に変えたい」などと発言しています。

https://x.com/Lanikaikailua/status/2049635167657218229

他にも、以下のような、先の大戦への反省を否定するいくつもの軽々しい発言にはまさに耳を疑います。

https://x.com/JTruelove1111/status/2049803729407463730

https://x.com/JTruelove1111/status/2049510309136843014

「自分が生まれる前のことなど知ったことか」という態度は、ビスマルクの名言、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」ということの格好の事例ともいえるでしょう。若かりし頃の発言とはいえ、このような浅薄で不遜な人物が日本国の首相であることは実に恥ずべきことであり、国家の価値を毀損し、国民を危険に晒すものと言わざるを得ません。

実際、不用意な発言で無駄に中国を怒らせ、トランプ氏には「キャバクラ外交」と批判されるような下品な擦り寄りで国益を差し出し、連休中の東南アジアやオーストラリア歴訪でも、恥ずかしい言動が目立ちました。

先日の防衛装備移転3原則における5類型の撤廃では、ついに殺傷能力のある武器輸出を解禁しました。これは、かつて世界から賞賛された「メイド・イン・ジャパン」のブランドが、今後は人殺しの道具を意味するものに変質するということです。

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かつて、宮澤喜一元首相が外務大臣だったときに「我が国は兵器の輸出で金を稼ぐほど落ちぶれていない、もう少し高い理想を持った国として今後も続けていくべき」と発言していますが、これを高市氏は「もう時代が変わった」と一蹴し、防衛産業を成長産業と位置付けています。

しかし、5類型の撤廃は、平和主義を貫き軍需産業を封じ込めてきた我が国にとって大きな方向転換です。実際、BBCやニューヨークタイムズなどは、「日本は戦後の平和主義を転換させた」と報道しており、世界が日本を見る目は明らかに変わりつつあります。

ポストした井深氏の発言に戻ると、「軍事技術が民生用に転用されることで技術は進化する」という世間一般の解釈とは真逆のものですが、戦時中に海軍の技術将校として戦争に関わったことへの反省も込めた弁だったのではないかと思います。

このポストに対して、「だったらソニーはインターネットを使ってないのか」とか、「デュアルユースは常識だろ」とか、「CMOSセンサーなどのソニー製部品が兵器に多用されている」などと揚げ足を取るような反論も寄せられましたが、それらの指摘は、井深氏が戦争体験を経て軍事を全否定するようになった信念とはまったく関係がありません。

ノンフィクションライターの立石泰則氏が、自著『戦争体験と経営者』(岩波新書)の中で、「長年、様々なタイプの経営者を取材してみて、彼らの間には明確な一線がある」と書いています。実際に戦場に立った経験の有無が、戦後の彼らの生き様に決定的な違いをもたらしているとして、ダイエーを創業した中内功氏をはじめ、戦後、徹頭徹尾平和主義を貫いた経営者を何人か取り上げて紹介しています。

それ以外にも、平和主義を貫いた気骨ある経済人はいくらでもいました。例えば、旧日本興業銀行頭取だった中山素平氏は、1991年に湾岸戦争が勃発した際、「自衛隊の派兵はもちろんのこと、派遣も反対だ。憲法改正に至っては論外だ。第二次世界大戦であれだけの犠牲を払ったのだから、平和憲法は絶対に厳守すべきだ。そう自らを規定すれば、おのずから日本の役割がはっきりしてくる」と述べたそうです。しかし最近では、政府にはっきりと意見するような経済人はめっきり見掛けなくなりました。

政治家の最も重要な責務の一つは、自国が戦争に巻き込まれないようにすることに他なりません。しかしながら、高市氏や維新の馬場氏など、改憲を推し進めようとする人たちの乱暴な意見を聞いていると危うさしか感じません。

政府は、「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」なるものを設立し、先月末に最初の会合を行っていますが、構成メンバーを見ると、「何でこの人が?」というようなメンバーが散見され、改憲や安保3文書改訂に向けたアリバイ作りの場であることは明らかです。

曲がりなりにも井深氏の薫陶を受けた者の責務として、今後の政府の動きには警戒を続けたいと思っていますが、読者の皆さんはどのようにお考えでしょうか。

(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2026年5月8日号の一部抜粋です。このほか「【3周年記念特別企画】ソニー元社長安藤国威氏と語る」と題した「今週のメインコラム」や「読者の質問に答えます!」、「スタッフ“イギー”のつぶやき」など、レギュラーコーナーも充実。この機会にぜひご登録をご検討ください)

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image by: 財界研究社、撮影者不明, Public domain, via Wikimedia Commons

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辻野 晃一郎(つじの・こういちろう):福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。

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【著者】 辻野晃一郎 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 金曜日 発行

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