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かっぱ寿司も餌食に? 過激発言で炎上「コロワイド」の黒い本性

「牛角」や「かっぱ寿司」などを運営する外食大手コロワイドで発生した、社内報の大炎上騒動。やる気のない社員に同社会長が浴びせた言葉が「馬鹿野郎」「アホ共」などと過激だったことから、SNSであっという間に拡散、激しい批判を浴びる事態となりました。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは、一連の騒動に「プロとしてあまりにもお粗末だった」と苦言を呈すとともに、「かっぱ寿司」の業績不振にも触れ、今回の騒動によるブランドイメージの低下がコロワイド・グループ全体の崩壊を招きかねないと厳しい見方を示しています。

「牛角」や「かっぱ寿司」のコロワイド会長の言葉が炎上。グループ崩壊の危機

●関連記事「営業利益9割減で「溺死」寸前。かっぱ寿司は息を吹き返せるのか?

佐藤昌司です。

「お馬鹿は、会議が意味もなく長い」
「人の話も聞いてない馬鹿野郎」
「こういう自己中馬鹿は、言っても治らないので、転職を勧める」
「パワーと意識が希薄な無能な善人達ヨ」
「現実が見えないアホ」
「お馬鹿と利口を分けること、これが格差社会」
「そのアホが、何故会社にいる?」
「生殺与奪の権は、私が握っている。さあ、今後どうする。どう生きて行くアホ共よ」

上記の言葉は、「かっぱ寿司」などの飲食店を展開するコロワイドの蔵人金男会長が、同社傘下で「牛角」や「しゃぶしゃぶ温野菜」などを運営するレインズインターナショナルの社員らに向けて社内報で述べた言葉を抜粋したものです。

社内報はツイッターなどのSNSで拡散し炎上しました。同社は問題となった社内報をホームページ上で公開し、「当該文書はビジネス・商売の基本となる考え方を同会長の独特の言い回しで述べたもので、本来の意図が伝わらなかった」と釈明しています。しかしそれにしてもお粗末と言わざるを得ません。

社内報で同会長は、経営学者のピーター・ドラッカーの「人は貢献によってのみ報酬を得る事が出来る。単なる努力は、賞賛の対象となるに過ぎない」という言葉を引用し、会社に貢献していない社員を非難しています。

もしかしたら一部の社員は非難されてしかるべきなのかもしれません。会社や組織に対して貢献していない社員がいるのかもしれません。指摘の通り、人の話を聞かない社員がいるのかもしれません。ただ、社内報で一方的に社員を非難するのは如何なものかと思います。ドラッカーは次のようにも述べています。

組織の目的は、凡人をして非凡をなさしめることにある。組織は天才に頼ることはできない。天才は稀である。当てにはできな。凡人から強みを引き出し、それを他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決める。同時に、組織の役割は、人の弱みを無意味にすることである。
(『マネジメント[中]』99頁/P.F.ドラッカー著/上田惇生訳/ダイヤモンド社)

ドラッカーは人の弱みを無意味にし凡人から強みを引き出すことが組織の役割であると述べています。組織に対して貢献していない社員がいるのは、その社員自身にも問題はありますが、その社員の弱みを無意味にできない組織にも問題があるといえます。組織として機能していないのです。そのことを棚に上げて公然と社員を批判はできないでしょう。組織を構築するのがトップの責任だからです。

ツイッターで自身の犯罪行為や素養がない行為を晒す「バカッター」が一時期流行しました。店の従業員が食品保存用冷蔵庫に入った画像をツイッターに投稿するといったような行為が社会的な批判の的になりました。先の社内報の件は自身でツイッターに投稿した訳ではありませんが、バカッターと大差がないと言わざるをえません。SNSなどで世間に晒される可能性を考えることはできなかったのでしょうか。

業績の悪化が先の言葉を生んだのでしょうか。コロワイドは2,300億円を超える売上高(2016年3月期)を誇る大手外食企業です。ただ、目下の業績は褒められる状況ではありません。2月10日に公表された2016年4~12月期の売上高は前年比1.6%減、営業利益は58.3%減です。減収減益です。純損益は19億円の赤字です。不振を受けて通期の業績予想を下方修正しています。

特にすしチェーン「かっぱ寿司を展開するカッパ・クリエイトの業績が深刻です。2016年4~12月期の売上高は前年比3.0%減、営業損益は6億円の赤字です。減収減益です。純損益は55億円の赤字です。通期の最終損益は59億円の赤字に転落する見通しと発表しています。

これを受けて経営体制を刷新するために、四方田豊社長が退任し、コロワイド傘下のバンノウ水産社長を務めている大野健一氏を社長に据える人事を発表しました。人事を刷新し赤字からの脱却を図ります。

しかし、かっぱ寿司の業績回復は簡単なものではありません。ブランドイメージの低下に歯止めがかからない状況だからです。「安かろう悪かろう」というイメージが定着してしまっています。昨年10月にロゴを刷新してイメージ回復を狙いましたが、効果は限定的のようです。業績の悪化が止まらない状況がそのことを示しています。

業績の悪化は人件費の高まりも原因となっています。同社は人手不足を理由として挙げています。人手不足は同社だけの問題ではありませんが、人が集まらないのには会社としての何かしらの問題があるといえるでしょう。

企業イメージがよくなければ人材は集まりません。先の社内報の問題により、さらなる企業イメージの低下が発生してしまえば人材はより集まらなくなるでしょう。先の社内報の問題はレインズでのことですが、カッパ・クリエイトは同じグループ企業のため影響は少なくないといえます。

コロワイドグループでは他にも問題が発生しています。昨年の11月に、しゃぶしゃぶ温野菜の北習志野店(千葉県船橋市、閉店)で働いていたアルバイト男子学生に暴行を加えたとして、元従業員の男性が逮捕されるという事件が起きました。被害者は警察に告訴状を提出しました。ブラックバイトを巡る訴訟は全国初とみられ、話題になりました。SNSなどで拡散し、ブランドイメージは大きく毀損しました。

この事件は加害者である元従業員の個人の問題という側面もありますが、そういった人物を管理者に登用していた組織側の問題もあるといえるでしょう。この店は別会社の「DWE Japan」が運営するフランチャイズ店でしたが、同じブランドを共有するレインズ側に問題がなかったとはいえないでしょう。レインズにはフランチャイズ店を指導する責任があったからです。

これらは全てコロワイドグループでの出来事です。グループ全体に人的な問題が蔓延っていると言わざるを得ません。先の社内報ではグループのトップである会長が部下の社員の言動をたしなめていますが、その前にまずはトップの会長の言動を改めるべきではないでしょうか。先の社内報を見て、誰もが思うことでしょう。問題点を指摘しているだけでは解決にはなりません。それでは組織は活性化しません。

最後にドラッカーの言葉を示したいと思います。

人の強みよりも弱みに目のいく者をマネジメントの地位に就けてはならない。人の得意なことに目が向かない者は、組織の精神を損なう。
(同109頁)

 

 

 「女子大生のハンバーガー店経営物語 (クリエイションコンサルティング)」 

 

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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