MAG2 NEWS MENU

史上最高値の更新が続くビットコインは、第二の金になり得るのか?

ビットコインの取引所・マウントゴックス社の経営破綻以来、ダークなイメージがつきまとう「ビットコイン」ですが、メルマガ『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』の著者でNY在住の猫好き医学博士・しんコロさんによると、不安定な国際経済の状況と、政府に対する不信感から、ビットコインを見直す流れとなり、価格が急騰しているそうです。果たして、ビットコインは「第二の金(ゴールド)」となり得るのでしょうか?

ビットコインの話

このメルマガを読んでくださっている方々はオンラインショッピングなどにも比較的抵抗がない方々だと思いますが、ビットコインとなると馴染みがないし「実態がよくわからなくて怖い」と感じる方も多いと思います。日本円やUSドルが政府の中央銀行によって保証されているのに対して、ビットコインは中央銀行を介さず、「ブロックチェーンという技術を使って完全にインターネットのサイバー空間に存在しています。つまり、ビットコインは中央銀行のような発行母体というものが存在しないのです。政府発行のお金しか使ったことのない我々にとっては「そんなものは信用できない」と思ってしまうのも無理はありません。しかしその一方で、このブロックチェーン技術によって、ビットコインはその取引が匿名で公開され皆にチェックされることで、逆に安全性を高めています。つまり、ハッキングや詐欺行為が非常に難しいのです。

とはいえ、以前「マウント・ゴックス」というビットコイン取引所が破綻してビットコインのイメージが悪くなったことがありましたね。しかしあの事例は例えたら「地方銀行がつぶれた」ような話であって「日本円が破綻した」わけではないのと同じことです。もちろんマウント・ゴックスにすべてを預けていた人は損害を被ったわけですが、損害を個々の利用者が回避することも不可能ではありませんでした。「卵はひとつのカゴに盛るな」という格言があります。もしそのカゴを落としてしまったら、卵がすべて割れてしまいます。従って、いくつかのカゴに分散して保管しておくことが大切なのです。卵でも日本円でもビットコインでも同じことがいえます。これは意外と大切な話で、皆さんは「銀行が潰れるワケがない」と思っているかもしれませんが、実は今の時代では銀行が破綻することは十分あり得ることなのです。

「なんだか自分とは関係のない話になってきた」と思われるかもしれませんが、ビットコインはもしかしたら世界通貨の未来を大きく変えるかもしれませんし、皆さんの生活を変えるかもしれないし、はたまた、大きなチャンスになることだってあり得ます。インターネットが情報伝達の大ブレイクスルーであったのと同じように、ビットコインは通貨の大発明として歴史に刻まれることになる可能性もあります。ビットコインのように、中央銀行を介さず、政府に邪魔されず、自由市場の原理に則って、世界中のどこにでも一瞬にしてほぼ手数料ゼロで送金できる通貨というのは、これまでに存在しなかったからです。

実は崖っぷちにいる僕達

一方で、ビットコインのように匿名で政府の目のとどかないところで資金のやり取りができるようになると、マネーロンダリングやテロや暴力団の資金調達の温床になるという懸念もあります。しかしこれはなかなか微妙な問題です。極端な例ですが「テロリストはトイレを使うから、世界からトイレを無くそう」というのが馬鹿げた理論であるように、テロだけを理由に自由市場が努力していることを政府が妨げてしまうと、新しいイノベーションやビジネスが生まれなくなります。実は多くの政府が「テロ防止のために」と言う時には、その後ろにまた別の思惑があります。「テロ防止」を口実として金融システムをデジタル化(インドように大きい額の現金を禁止することもしかり)することで、政府は国民の金融資産や取引状況を監視して自由に使えるからです。これは、すごく、すごーく怖いことなのです。

ある日突然、「政府の借金が増えてきたから、国民の貯金を財産税という名目でちょっと取っちゃおう!」と政府が決めたら、政府はデジタル化した国民の資産を簡単に差し押さえたりすることができるからです。また、政府は国民にバレない形で資産を奪うのもデジタル化をするとより簡単になります。例えば、デジタル化しておけば簡単に政府の帳簿のゼロを一つ増やしたりでき、通貨の量を手軽に増やすことができます。借金を返すために通貨を増やし借金を返したら後はシラネ~と放置するのです。するとどういうことが起きるでしょうか。世の中に増えたお金が回り始めると、今までと同じだけの物品やサービスをより多くのお金が追うわけですから、物価がつりあがる「インフレ」が起きるわけです。国民は「値段があがった!店が悪い!」くらいにしか思いませんが、実はそういったシナリオは政府や中央銀行のせいなのです。国民に気づかれない形で国民の資産を奪ってしまうのと同じことです。これは大掛かりな詐欺なのに、それにほとんどの人が気づいていません

今ベネズエラでは経済崩壊に次ぐ激しいインフレで、国民は貧困と飢餓に陥って、路上や動物園の動物を殺して食べているほどです。治安も極めて悪化しています。そんなことが今にでも起きうる状況が、グローバルに起きているから怖いのです。ちなみに日本も大きな債務国ですが、実は日本は海外に資産が多く、借金も円建てなのでベネズエラのような崩壊シナリオにはなりにくいです。しかし怖いのは、アメリカやドルが崩壊した時にとばっちりを受けることです。実際にそういった崩壊が起きた時にアメリカで何が起きるかを予想すると、銀行がドミノ倒しのように破綻して、経済が麻痺します。ギリシャが破綻した時のように銀行に行っても現金が引き出せず、潰れていない銀行でも「一日当たり300ドル」というように引き出し制限が設けられます。スーパー等からはしばらく食品が消えるでしょう。それに伴って暴動が起きるでしょうし、警察などの政府機関が一時シャットダウンし、暴動の収集がつかなくなることもあり得ます。実は、2008年のリーマン・ショックの時でさえ、銀行が連鎖的にドミノ倒しになるほんの手前まで行ったのです。しかし、そんなことは国民は起きた後にしか知りません。今のアメリカ経済の状況は、2008年のリーマン・ショック直前の時よりも遥かに悪いということは自覚しておかねばなりません。史上空前の借金バブルが世界中を包んだ状態になっているからです。

点と点をつなぐ

ここでちょっと話を繋げてみたいと思います。実は最近世界中でビットコインが話題となり価格が急騰しているのは、不安定な国際経済の状況と政府に対する不信感があるからなのです。中国の人民元の価値が下がって中国人がビットコインを買い漁っていたのも一時期のビットコイン価格高騰の原因ではありますが、今や世界中で政治や経済に不安を持つ人達はビットコインを「政府が手をつけられない資産保護の場所」の一つとして目を向けています。ビットコインはデジタル通貨でも「みんなで管理するデジタル通貨」であり、「政府が管理するデジタル通貨」ではないからです。これまでは通貨は政府が管理してきましたが、それを「みんなで行おう」という試みは、通貨の概念を大きく変えてゆくことになる期待が、こういった動きを助長しているわけです。

ちなみに、政治経済への不安や政府への不信感で皆が求めるものとしては、古くからはゴールド)があります。ビットコインの価格が上がっているのも、その現象にある意味似ています。そして奇しくも、先週はビットコインの価格が1オンスの金の価格を史上始めて超えました。アメリカではこれが大きなニュースになっています。ニュースを見ると「ビットコイン派」と「金派」が意見を闘わせています。目の前の経済不安に、「ビットコインを持つべき」という人と「いやいや、金を持つべき」という人たちがいるのです。ビットコインは発明されてから10年足らずの歴史しかありませんが、金は数千年に渡って「お金」として扱われてきた経歴があります。いずれにしても、今世界中の人たちが不安にある状況であることには変わりありません。

デット・シーリング

皆さん聞きなれないかもしれませんが、「デット・シーリング」という言葉があります。これは直訳すると「借金の天井」です。アメリカ政府が借金する上限はここまでにしとこうぜと決めた額のことです。今までアメリカ政府は、借金が増える度にこの天井を高くしてきました。オバマ政権はアメリカ史上最高額の借金を生み出し、その借金爆弾をトランプ政権が引き継ぎました。実はトランプはそのことは分かっていて、選挙活動中に「ファット・アグリー・バブル(ブクブクの醜いバブル経済)」とオバマ政権時の経済をこき下ろしました。トランプが引き継いだ後も何も変わるどころか、さらにバブルは膨れています。ところがトランプはそのバブルを批判するどころか、今では「自分のおかげ」的な姿勢に変わってしまいました。株価が上がるのはバブル症状の一つですが、「どうだすげぇだろ!」とドヤ顔になっています。そんなドヤ顔トランプですが、今月の15日に一時期オバマ政権で保留になっていたデット・シーリングが再施行されます。そうなると、トランプ政権は非常に困ることになります。デット・シーリングを上げないとこれ以上の借金ができないからです。トランプは防衛費を増やすとか言っていますが、そもそもお金がない上にデット・シーリングがあるので、実現可能なのか疑問です。ならばデット・シーリングを上げれば良いのですが、それには議会を通す必要があるのでハードルが高いのです。

アメリカ政府はとりあえず今後3ヶ月分くらいの現金は所有していますが、夏くらいにはそのお金が尽きてしまいます。すると借金が必要になるわけですが、このデット・シーリングが邪魔をするわけです。お金がなければ、何もできません。すると政治が混乱するし、部分的にシャットダウンすることもあり得ます。そうなると、NYに住む我が家にも直接影響があるわけです。そしてそういった政治経済の不安が起きた時、市場の心理も大きく動きます。その時、ビットコインや金(ゴールド)に人が押し寄せて価格が上がることも、もしかしたらあるかもしれません。

僕は金融のプロでもファイナンシャルアドバイザーでもないので、その時期を見越して投資を薦めているわけではありません。ただ、今話題のビットコインと、その背景にこんな世界情勢と経済危機があるということをお伝えしたいと思いました。日本のニュースを見ていると「ビットコインでお寿司の支払いができます!」とか、非常に呑気なものばかりなので、世界で起きている背景を皆さんにお伝えしたいと思ったのです。こんな不安な時勢だからこそ、時代を生き抜く知恵を持つことは、どんな人でも大切なのではないかと思うのです。

追記:ビットコインに興味を持って買ってみたいと思った方は、ご自身の判断と責任で行って下さい。ビットコインはまだ非常に価格変動が激しく不安定なアセットです。また、今週の11日までに、アメリカのSEC(証券取引委員会)がビットコインのETF(上場投資信託)を認可するかどうかの決断を下すことになっており、その結果によってはビットコインの価格が大きく変動する可能性があるのでくれぐれも注意して下さい。

 image by: Shutterstock.com

 

しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」

著者:しんコロ

ねこブロガー/ダンスインストラクター/起業家/医学博士。免疫学の博士号(Ph.D.)をワシントン大学にて取得。言葉をしゃべる超有名ねこ「しおちゃん」の飼い主の『しんコロメールマガジン「しゃべるねこを飼う男」』ではブログには書かないしおちゃんのエピソードやペットの健康を守るための最新情報を配信。

≪初月無料/購読はこちらから≫

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け