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「反中」に逆戻り?中国のウソに気付いたトランプの逆襲

先日掲載の記事「だから中国は侮れない。トランプの態度を一転させた懐柔作戦の全容」でもお伝えしたように、一時は中国の手に落ちたかのように見えたトランプ大統領。しかしここに来て中国の銀行に制裁を課すなど、就任前の「反中国」に戻り始めたかのような姿勢を取り始めています。この流れを、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で世界情勢に詳しい北野幸伯さんは、どのように見ているのでしょうか?

トランプが中国の銀行に制裁!その背景は???

トランプが、中国の銀行に制裁を課すことにしました。

米トランプ政権、中国の銀行に制裁 北朝鮮への圧力強化

CNN.co.jp 6/30(金)11:35配信

 

ワシントン(CNN Money) 米財務省は29日、中国の銀行が北朝鮮との不正な金融取引にかかわったとして、米国の金融システムから締め出す制裁措置を発表した。核兵器や弾道ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、圧力を強める狙い。

制裁の内容を見る前に、これまでの流れを振り返ってみましょう。

米中関係の流れ

大統領選挙戦中トランプは、「親ロシア反中国」でした。そして、選挙で勝利した後も、しばらく「親ロ・反中」だった。たとえば2016年12月、トランプは、台湾の蔡英文総統と電話会談し、世界を仰天させました。

しかし、今年1月、大統領に就任すると、だいぶ様子が変わってきた。まず、「ロシア・ゲート」が盛り上がり、「ロシアと仲良くできない状態」が続いている。それでも、トランプ自身が親ロシアなのは変わらないようですが。

そして、彼の「反中度が弱まってきた。一つは、「中国の強力な工作」によって。もう一つは、「北朝鮮問題で中国の協力が必要」なので。北は、「アメリカ本土を核攻撃できるICBM完成間近」と宣言している。北の暴走を止めるためには、中国の助けが絶対必要。

トランプは4月、習近平と会談しました。その後、「私は、習近平のことがとても好きだ!と公言するようになった。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)4月13日付を見てみましょう。

ドナルド・トランプ米大統領は12日、就任後に知己になったある国の首脳との関係について冗舌に語った。「われわれの関係は非常に良い」。トランプ氏はホワイトハウスの大統領執務室で行われたウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューでそう述べた。

 

「われわれの相性はすごくいい。互いに好意を持っている。私は彼のことがとても好きだ。彼の妻も素晴らしい」

 

これほど温かい言葉で評されているリーダーとは誰か。中国の習近平国家主席だ。

なぜトランプは、習近平が大好きになったのか。そう、習が「北朝鮮問題解決に全面的に協力する」と約束したからです。「3か月で結果を出す」ことで、二人は合意した。ところが…。

習近平のウソに苛立つトランプ

習は現在、「美しい言葉」を語ることで、世界での評判を上げています。どんな美しい言葉?

などなど。日本以外の多くの国々では、「おお~、習近平はトランプより偉い!」と考えられている。

北朝鮮の話。中国がアメリカのために北朝鮮を叩きつぶすというのは、もちろん「ウソ」です。なぜ? まず、中国は北朝鮮の核ミサイルを恐れていない。なぜなら、北のターゲットは、アメリカ、日本、韓国なのです。次に、中国にとって北は、アメリカの侵略を防いでくれる「防波堤」「緩衝国家」。だから、強くてもいい。

では、なぜ習は、トランプにウソをついたのか? 「米中関係を悪化させないため」でしょう。アメリカが本気で「中国封じ込め」に動けば、中国は困ります。

しかし、ウソはしょせんウソ。トランプは、「習の野郎、やはり口だけだ!」と気が付き始めた。そして、苛立ち始めた。

トランプ氏不満、中国の北圧力は「不十分」

読売新聞 6/21(水)11:07配信

 

【ワシントン=大木聖馬】トランプ米大統領は20日、ツイッターに、「北朝鮮を巡る習近平(シージンピン)中国国家主席と中国の努力には非常に感謝しているが、うまくいっていない」と書き込んだ。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する中国の圧力が不十分との認識を示した。

悪化し始めた米中関係

トランプさんは、「口だけ」ではありません。それが「良いか悪いか」はともかく、「有言実行」です(たとえば、「パリ協定離脱」など)。ツイッターで投稿するだけでなく、現実に中国への圧力を強め始めました。

まず、いままでノータッチだった中国の人権問題を批判し始めた。

米国務省の人身売買報告書、中国を最低ランクに格下げ

CNN.co.jp 6/28(水)12:10配信

 

(CNN) 米国務省は27日、世界各国の人身売買の実態に関する年次報告書を発表し、中国を4段階中の最低レベルに格下げした。報告書は格下げの理由について、中国は「人身売買の廃絶に向けた最低基準を満たさず、目に見える努力をしていない」と説明している。

さらに台湾への武器売却を決めた

米、台湾へ武器売却の意向表明 トランプ政権下で初

CNN.co.jp 6/30(金)10:29配信

 

(CNN) 米国のトランプ政権は29日、台湾に14億ドル(約1,570億円)相当の武器を売却すると議会に通知した。トランプ政権下では初めて。中国からは強い反発が予想される。台湾への武器売却は、米国家安全保障会議(NSC)のアントン報道官が確認した。

そして、中国の銀行に制裁

米トランプ政権、中国の銀行に制裁 北朝鮮への圧力強化

CNN.co.jp 6/30(金)11:35配信

 

ワシントン(CNN Money) 米財務省は29日、中国の銀行が北朝鮮との不正な金融取引にかかわったとして、米国の金融システムから締め出す制裁措置を発表した。核兵器や弾道ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、圧力を強める狙い。

制裁されるのは、具体的にどの銀行なのでしょうか???

制裁の対象となるのは中国の丹東銀行。米政府によると、北朝鮮の不正な金融取引を支える仲介役を果たしたとされる。さらに、中国の個人2人と企業1社に対しても新たな制裁を発表した。
(同上)

トランプは、「正しい戦略」に戻れるか?

トランプ、頭の中にある大戦略は、「ロシアと和解して中国に勝つ」です。もっと言えば、「日米ロで中国に勝つ」。この戦略は、ルトワックさんやミアシャイマーさんが推奨しているもの。だから、私たちも、トランプ政権誕生を歓迎しました。なぜなら中国は、「日本には、尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない!」と宣言し、領海侵犯、領空侵犯を繰り返している。

ところが、トランプさんはなかなか戦略通りに動けません。まず「ロシア・ゲート」で、ロシアと仲良くさせてもらえない。北朝鮮問題があるので、中国との仲を険悪にできない。しかし、トランプは、習近平のウソに気づき、態度を変化させてきました。これは、日本にとって、良いことです。

とはいえ、「このまま行く」と断言するのは早すぎでしょう。「チャイナ・ロビー」の力は、すでに「イスラエル・ロビー」を超え、「アメリカ国内最強」になっている。

私たちは、米中間で起きていることを、注意深く観察し続けていきましょう。冷静に状況を追い、分析し、対応策を考え、実行する。30年代の日本は、これをしなかったので、ドイツと組んで破滅したのですから。

image by: lev radin / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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