9月25日に主要キャリア3社それぞれが行った新型iPhone発売記念セレモニー。その後、各社社長が囲み取材に応じましたが、やはり記者の興味の対象は、安倍首相の通信料金値下げ要求に対するキャリアの反応でした。『石川温の「スマホ業界新聞」』ではドコモ社長の発言にツッコミを入れつつ、その模様を誌上再現しています。
「言っちゃいますけど、去年より予約数は2割増」
―ドコモ社長の囲みにツッコミ
9月25日、NTTドコモはドコモショップ丸の内店/ドコモラウンジにて新型iPhone発売記念セレモニーを開催。終了後、加藤薫社長の囲みが行われた。
Q:iPhoneの予約状況はどうか。
加藤社長:去年より多いんです。言っちゃいますけど、2割ぐらい多いです。
(★ ずいぶんとぶっちゃけた感じ。ツートップ戦略でAndroidを買った人が群がっていそう)
Q:その理由はどういうところにあるのか。
加藤社長:年々、進化していますから、それを楽しみにしている方がどんどん増えているのではないか。
(★ 確かに今回のiPhoneは進化しているし、買いといえるモデルかも)
Q:ドコモでiPhoneを発売して2年が経過するが、KDDIやソフトバンクに追いついた印象はあるか。
加藤社長:これからまだまだたくさんの人に使ってもらおうと思う。ずっと続いていくんだろうと思う。
(★ 光とのコラボもあるし、料金プランも揃っているし、追いついている感はあるな。)
Q:KDDIに流出したユーザーは今回で取り戻せるか。
加藤社長:前回も戻ってきていただいているし、(現在も)どんどん戻ってきていただいている。
(★ MNPはもうちょっとなのかな。最近、動向がわかりにくくなっている)
Q:月額1,700円の新料金プランで、ドコモは10GBが対応していなかったようだが。
加藤社長:シェアプランですね。音声は使わないけど、パケットをたくさん使いたい、もしくはデータをたくさん使いたい方を対象にしたいと思っていますので。
Q:業績的に10GBを入れないのが重要だったりするのか。
加藤社長:まぁ、そうかも知れませんけども、お客さん第一に考えています。
(★ この10GBを対象にすると、家族の回線が一気に1,700円になって減収要因が大きくなっちゃうんだろうな)
Q:安倍首相の携帯電話料金が高すぎるという指摘があったが、どう捕らえているか。
加藤社長:なかなか難しい問題だと思う。どういった意図があって、そういったご意見になっているのか、私どもでもわからないところがある。
10年間でいろんな変化がありましたし、大きな変化と言えば、スマートフォンに変わった。スマートフォンでいろいろなことができますので、たくさんできることが増えた。
一方では、ドコモが最初に出したんですけども、新しい料金プランの体系。長く使っていただいている方、若い方への応援だとか、いろんな組み合わせができ、お客様が工夫できる料金にした。
それをさらに理解していただき、工夫が必要なら、これからも検討していき、お客様のためにやっていきたい。お客様の声に耳を傾けながら、検討していきたい。
(★ 総務省も寝耳に水だったという話もあるし、キャリアとしてはどう対処していいのかわからなそう)
Q:新しい料金プランも考えているということか。
加藤社長:どうでしょう。私どものプランをベースにしながら、今後、総務省だとか、検討がなされるようですから、我々も意見を申し上げながら、ご協力しながら検討していくことになるだろうと思います。
(★ ガス抜き的なやる気のないプランが出てきそう)
Q:SIMロック解除できるiPhoneだが、影響はありそうか。
加藤社長:我々は前々からSIMロック解除をやっていたが、実際にSIMロック解除をしたのは累計で30万件程度。いまのところどうなるか見えていない。いちばん人気のある機種だけにこれからどうなっていくか注視していきたい。
(★ SIMロック解除、my docomoからやったら簡単すぎでビックリした。ただ、どれだけの人がやるかはさっぱり見えないが)
Q:KDDIが既存顧客を重視するというメッセージをしているが、その点ではNTTドコモが先行していたのではないか。
加藤社長:去年、新しい料金プランを導入したが、特に長く使っている人には割引を、という考えにした。じっくりとドコモのネットワーク、ドコモの商品を使ってもらおうとしている。
さらにそれがご理解いただけますように、かつ喜んでいただけるように努力していきたい。
(★ 長期契約している人には、iPhoneが優先的に手に入るとか、もうちょっと優遇策があってもいいと思うけど)
Q:月額1,700円のプランに追従するのに時間がかったのではないか。何か悩みでもあったのか。
加藤社長:悩みというか、突然、出てきましたので。この発表イベントの関係でアメリカにいましたし、帰ってくる時だったんですけど、その後、土日が挟まって、発表が水曜日だったと思います。それほど遅くなく発表できたのではないか。
(★ サンフランシスコのアップルイベントから帰国する日も考えないと、飛行機乗っている間に他キャリアが値下げプランを発表していた、ということもあるってことね。ソフトバンクは宮内社長が飛行機に乗っている間に対抗プランが発表されていた、という噂もあるけどどうなんだろうか)
Q:フィーチャーフォンからスマホの乗り換えが鈍化しているが、今回のiPhoneで市場は活性化しそうか。
加藤社長:もう一度、スマートフォンへという方が増えていただきたいと思う。一方、フィーチャーフォンも、いっちゃいますが、もうすぐ商品発表会があるのですが、そのなかでも新しいフィーチャーフォンを出す。
フィーチャーフォンがいいよという方、もしくはフィーチャーフォンとスマホ、タブレット、2台持ちという方もどんどん増えている。そういう方のご要望に応えるようにしたい。
(★ フィーチャーフォンユーザーにはもっと安くスマホが使える料金が必要かと)
Q:最終的にフィーチャーフォンとスマートフォンの比率はどれくらいに落ち着きそうか。
加藤社長:どれくらいでしょうかね。私も2台使いですから、両方お使いのかたを含めると2~3割程度なのかなと。単純な感覚です。
Q:今回のiPhone、2万円ほど値上がりになっているように思うが。
加藤社長:機能、性能が上がっており、それなりのプライスだが、いろんなキャンペーンでお求めやすいようになっている。(他社から)帰ってこられる方、また機種変更される方も、できるだけ、お手軽に手にとっていただけるように工夫している。
(★ キャンペーンをいかに活用するかがカギだけど、一般的にはなかなかわかりにくい)
Q:御社だけ、乗り換えを重視されているように見えるが。
加藤社長:そうですね。ネットワークも含めて、トータルの良さを感じていただきたい。
(★ キャッシュバックはしないけど、相当、予算を突っ込んでいるようで)
Q:iPhoneに向けてネットワークを強化してきたのは初めてのように思えるが、相当、仕込んできたのか。
加藤社長:LTEのネットワークを充実させながら、広さとスピード、快適さを上げていくのはずーっと続けていますので、ここ4年ぐらいの営みになっています。
キャリアアグリゲーションとして300Mbpsを目指していますが、今年中にネットワーク側は準備し、それに対応する端末も出てくると、実際に手にとってスピードを体感していただける。こういう段取りになっている。
長い時間をかけてここに来たと思っている。まだまだ生き物であるネットワークを進化させていきたい。
(★ 各キャリア間の最高速度競争って、端末が出てくるタイミングにもよるしね)
Q:今回のイベント、お客さんの集まりが年々、減っているように思えるが。
加藤社長:2年前はずいぶんと並んでいただいたが、前の日から寒い夜、暑い朝というようにご迷惑をかけないように、予約を重視したいなと。
発売が例年よりも1週間、伸びていますので、ネットでの予約をたくさん取ろうという結果になっていると思う。
(★ アップルが行列をつくらせないようにしているから仕方ない。行列はNGだけど、それなりに盛り上げなくてはいけないというプレッシャーがキャリアにはあるらしい)
Q:料金について、1GBや1.5GBといった少量プランを用意すれば良いという意見もあるが。
加藤社長:これから検討会で研究されていくと思う。お客さんが何を望まれているのか。じっくりと考えていきたい。
(★ そうやって安価な設定に群がる人こそ、Youtubeやゲームしまくって「パケ死した。許さない」って言ってきそうな気もするが)
Q:政権からああいった意見が出てきたこと自体をどう思うか。
加藤社長:(アメリカから)帰ってきた日だったが、ちょっとビックリした」
(★ 安倍首相、あんなことを言うんだったら、通信料金への消費税は8%のままにして欲しい)
Q:料金が下がれば、景気が良くなりますか。
加藤社長:いやー。10年間で起こってきたこと。我々も苦労しながら、値下げとか使いやすい料金とか、やってきましたので、その上で、どんな答えがあるのか、考えていきたい。
(★ 起きている間、ずっと使い続けていることを考えても、スマホの通信料金は安いと思うんだけど。それで言ったら、他にもっと高いもの、あると思うけどなぁ)
Q:ツートップ戦略から2年が経過し、AndroidからiPhoneへの乗り換えが加速するのではないか。
加藤社長:2年経過していますし、一定の方々は移っておられますし、それぞれに良いところがありますから、よくお考えになって選んでいただけていると思います。その数は言えませんけども、一定の状態になっていると思いますし、今回のiPhoneはまた進化していますし、ユーザー目線の機能が充実していますし、ユーザーインターフェイスがとっても良くなっていますし、そういう意味ではいろいろ悩まれるかも知れません。
(★ Android陣営は、iPhoneとの違いを見せようと、頑張っていきそうな予感)
Q:社長は何色を選ばれるんですか。
加藤社長:今年はピンクゴールドにしようかと。女房とも欲しいな、と言っていました。
(★ ピンクゴールドではなく、ローズゴールドね。田中社長はローズピンクって言っていたらしい)
取材を終えて
記者の関心はNTTドコモが推すネットワークではなく、安倍首相発言の影響についてのものが多かった。テレビや新聞は今回のiPhone発売をどのように取り上げるか相当に悩んでいたようで、結果として「iPhone発売。安倍首相発言で、料金は値下げされるのか」というテーマで特集を組んだところが多かったようだ。NTTドコモとしては、去年、新料金プランを出したこともあり、すぐに料金改定というのは現実的ではないと思われる。
image by: NTT docomo
著者/石川 温(ケータイ/スマートフォンジャーナリスト)
日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。
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