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それは単なる「便利な子」。本当に「自立」した子どもの育て方

「部屋の片づけができない」「宿題も自分からやらない」…。親としては気がかりですが、実はそれほど心配する必要はないようです。今回の無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』では著者で漫画『ドラゴン桜』の指南役としても知られる親野智可等さんが、自立心を育てるためには、苦手なことをつつくのではなくむしろやりたいことを応援してあげるのが親の役目だと記しています。

大人はみんな「自立」の意味を勘違いしている。本当の自立とは?

子どもを自立させたいと、親たちはよく言います。

「うちの子は毎日同じことで叱られている。何度言ってもできない。言われなくても自分でできる子にしなければ。ちゃんと自立させなければ」。

そこで、考えてもらいたいのですが、自立とは何でしょうか?わが子にとって、あるいは人間にとって、本当に必要な自立とは何なのでしょうか?みなさんは、それについて考えたことがありますか?

失礼ながら言わせていただけば、たいていの親は1分間も考えたことがないと思います。みんなが言うことや本や雑誌やテレビで見聞きしたことを、そのまま受け入れて思考停止状態になっています。

親たちが漠然と思っている自立とはこういうことです。

朝は自分で起きて、自分で顔を洗って、食事をしたら自分で歯を磨き、自分で着替えて、自分で学校の支度をして…。帰ってきたら自分でうがいと手洗いをして、遊ぶ前に自分で進んで宿題をやり始め、次の日の支度も自分でして、玩具で遊んだら自分で片づける、整理整頓がバッチリできる…。

いちいち親に言われなくてもこういった生活習慣的なことが自分でできるそれを自立と呼んでいるのです。

本当の自立とは自己実現力があること

でも、本当はそんなものは自立ではありません。それは、親たちがやらせたいことを自動的にやってくれる便利な子というに過ぎません。自立ではなく自動化です。親たちの望み通りに動く、親たちにとって都合がよい、手のかからない育てやすい子というに過ぎないのです。

もちろん、そういった生活習慣的なことはできたほうがいいです。できるにこしたことはありません。でも、実は、今できないことがあってもそれほど心配することはありません。なぜなら、本人がその気になれば一瞬にしてできることばかりだからです。

本当に大切な自立とはそういったものとは全く別ものです。ある意味で正反対かも知れません。

本当に大切な自立とは、自分がやりたいことを自分で見つけて自分でどんどんやっていくということです。つまり、自己実現力のことなのです。「自分がやりたいこと」を「自分で見つける」のです。親がやって欲しいことではありません。自分の人生を自分で展開するということです。そのために人は生まれてきたのです。それができる人が本当の自立した人間です。

そして、それは大人になって急にできるものではありませんなぜならその人の生き方そのものだからです。子どもの頃からさんざん「そんなことはやめて、これをやりなさい」と言われ続けて大人になり、そこで急に「あなたはなにをやりたいの?自分のやりたいことを自分で見つけなさい」と言われてもできるはずがありません。

自己実現力がある人は苦手な生活習慣も直ってくる

実際に大人でもそういう人はたくさんいます。言われたことはなんでもやり、生活習慣もバッチリです。でも、特に自分でやりたいことはありません。こういう生き方はさみしいですね。自立とはほど遠いものです。

本当に自立している人、つまり自己実現力がある人は、仕事でもプライベートでも自分でやりたいことを見つけてどんどんやっていきます。そういう人は同時に自己肯定感も高いので、「これをやりたい。自分ならできるはずだ」となって、勝手にスイッチを入れて勝手にがんばります。

自分で決めた目標や夢ですから大いにがんばります。すると、その途中で生活習慣的なことで苦手だったこともだんだんできるようになることが多いのです。なぜなら、「Aをやりたい」と思っても、時間にルーズでは成し遂げられないからです。そこで初めて時間を守るようになります。「Bをやりたい」と思っても、忘れ物ばかりしていては達成できません。そこで初めて忘れ物をしなくなります。

挨拶ができなければを夢をかなえることができない、とわかったとき挨拶ができるようになります。片づけができなければ目標を達成できない、とわかったとき片づけができるようになるのです。

ですから、本当に自立している人は、子どもの頃に苦手だった生活習慣的なこともだんだんできるようになります。親がいくら叱ってもできなかったことが、本人がその気になれば一瞬にしてできるようになります。それ以前には、モチベーションがないので無理なのです。

子どもがやりたがることをやらせて、応援しよう

では、どうしたらこのような自己実現力がついて本当の自立ができるようになるのでしょうか?

そのためには、子どもがやりたがることをやらせてあげるのが一番です。そして、さらに深められるように応援してあげてください

ある男の子はブロック遊びが好きで、お母さんがそれを応援してくれました。お母さんは、まずブロックを買い足して数を増やしました。それから、作品ができたら子どもの説明をしっかり聞くようにして、がんばりや工夫をほめました。

作品を玄関に飾ってみたら、子どもが大喜びしました。それを見てお客さんがほめてくれました。作品をバラバラにする前に、写真を撮ってプリントアウトしました。それをおじいちゃんやおばあちゃんに送って、ほめてもらいました。ときには、ネットでブロックの作品例を探して見せてあげました。これもけっこう刺激になったそうです。

できないことはやってあげよう

これは一つの例ですが、このように親が応援してくれると、子どもは好きなことをどんどん深めていくことができます。すると、「自分はこれが得意だ」と思えるので、自信がついて自己肯定感が高まります。そうなると、他のことでもできると思えるようになります。同時に、自分がやりたいことを自分で見つけてどんどんやっていく自己実現の喜びを味わうことができます。

こういう経験をたくさんさせてあげることで、自己実現力がつき、自立できるようになります。ですから、生活習慣的な面で苦手なことは、できるように工夫してあげてそれでも無理ならやってあげてもいいですから、いつまでもそんなところをつつかないでください。その分もっと伸ばせるところを先にどんどん伸ばしてあげましょう。そうすれば、よい循環が始まります。

子育てや教育のコツは、「難しいことは後回しにする先に上げられるところから上げていく」ことです。

このようなわけで、「できないことをやってあげると自立ができないなどという迷信・ウソ作り話で苦しむ必要など全くないのです。できないことはやってあげてください。しかも明るく楽しく。

叱り続けて親子ともども弊害の泥沼に沈む、などといった最悪のパターンだけは絶対に避けてください。

初出『月刊サインズ・オブ・ザ・タイムズ(福音社)』

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5年連続でメルマガ大賞の「教育・研究」部門賞を受賞!家庭教育メルマガの最高峰。教師生活23年の現場経験を生かし、効果抜群の勉強法、子育て、しつけ、家庭教育について具体的に提案。効果のある楽勉グッズもたくさん紹介。「『親力』で決まる!」(宝島社)シリーズは30万部のベストセラー。

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【著者】 親野智可等 【発行周期】 不定期

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