バイト募集で人は集まりはするものの離職率が高く、慢性人不足に陥っているというとある飲食店。現場リサーチの結果、判明した「原因」は…。今回の無料メルマガ『飲食店経営塾』では著者で飲食店コンサルタントの中西敏弘さんが、「挨拶やコミュニケーションが苦手な人材の増加」を意識した上で、あえて感謝を伝えるsns導入などの必要性を記しています。
「ありがとう!」を社内・店内に増やすことが人材不足対策になる!
社長 「この前、アルバイトさんからクレームがありまして」
僕 「えっ?何があったんですか?」
社長 「いやあ、実は、この前ある店に行ったときにアルバイトから色々言われたんですね。で、あくまでアルバイトが言うにはなんですけど…。
毎日仕事を上がるときの時間を社員が伝えてくれないらしいんですよね。だから、いつまで働けばいいんだろうって毎回感じるし、それに上がる時間が忙しいと、何も言われないでそのまま働くことになるらしいんです。
仮に上がったとしても、まかないを食べているときに店が忙しくなると、社員が『忙しいんだから、まかない食べてないで手伝えよ』っという雰囲気をあからさまにだすらしくて、だから、バイトは、上がる時間になるといつもソワソワというか嫌な気になるらしいんです」
僕 「シフトで最初から何時までって決まってないんですか?」
社長 「いや、決まっているんです。でも、その時間になっても社員が『上がっていいよ』とか、『今、忙しいからもう少し手伝ってくれる?』とか『忙しいけど、今日は上がっていいよ』ということを言わないらしいんです」
僕 「えー!そうなんですか?そりゃ、バイトさんも嫌ですよね」
社長 「そうなんですよ。だからなのか、数か月前に結構アルバイトを採用したんですけど、この店はいつも『人が足りない!』って騒いでいるんですよね」
と、先日、ある社長さんと話をしていました。僕も現場経験があり、社員の立場でもアルバイトの立場でも現場で仕事をしていましたが、こんなことはありえない話なので、すごくびっくりというか驚きました。
なので、他の会社ではどうなんだろうって、さりげなく他社さんでも聞いてみたのですが、「バイトに上がる時間を言わない(伝えない)、というのは、結構“あるある”ですよ!」と言われ、さらに驚いてしまいました。
僕が現場で社員として働いていた時は、アルバイトと結構距離が近くて、普段から色々話したり、店が終わってからも結構飲みに行っていたりしたので、早上がりしてもらったり、また、反対に、忙しかったら延長して働いてもらったりすることは日常茶飯事でした。
でも、大切にしていたのは、大袈裟にいうと“コミュニケーション”で(その当時はあまり意識していなかったと思います)、「悪いけど、今日は早く上がってくれる?」とか「悪いけど、今日、もうちょっと手伝ってくれる?」とお願いしたり、また、簡単な事でも色々助かった時には「ありがとう!」って何気なく伝えたりしていたと思います。
で、上記の社長さんに、「店長は、『ありがとう』とか『悪いなあ』とか、『助かるわ』みたいな、言葉をアルバイトに言わないんですか?」と聞くと、「彼はあまりそういうことは言わないんですよ!」と話されていました。
最近は、社内のコミュニケーションを円滑にするために、SNSなどを活用したツールを使用する企業がすごく増えてきた印象があります。また、昔から「サンクスカード」というような名称で、職場で人に対して「感謝」の気持ちを伝えようというような仕組みを採用している企業もたくさんあります。
正直、僕はこれらのツールや仕組みを導入する意味があまり分かりませんでした。なぜなら、普段からちょっとしたことでも「ありがとう」っていう癖が僕にはあるので、「わざわざそんなツールや仕組みを使わなくったって、普通に、『ありがとう』とか『サンキュー』って言えばいいじゃん!そんなことまでやらないと人に感謝の気持ちを伝えられないのかな?」と、いう気持ちが強かったからです。
でも、この話を聞いて、考えが変わりました。今の子といういい方はあまり好きではありませんが、今の子は、人に「ありがとう」っていうのが苦手な人が多いんだなあと。それに、この件で色々な社長さんと話をしましたが、「他人に対して興味のない子が多いかも」っていう話もでてきました。
そのためなのか、簡単なコミュニケーションをとれないスタッフが多い、と。例えば、「なんか元気ないなあ。どうした?」とか「おっ、今日の服、格好いいなあ」とか「彼女とどうよ?」なんて、冗談を言いながら、こんな会話を普段からしていない人も多いようです。
アルバイトからしたら、こういった会話もなく、また、働いていてもねぎらいや感謝の気持ちも伝えてくれず、ただ、「指示ばかりだす!」ような社員、店長さんの元で働いてても「楽しく」ないはず。だから、シフトに入る日数も限定的になるし、店に貢献しようなんて気にもならない!だから、こういう店長の店では、業績も良くないし、バイトさんの離職率も高いし、シフトもいつも困っているのでしょう。
「ありがとう」が言えない、コミュニケーションが取れない人ばかりではないと思いますが、店舗の雰囲気が悪い店は、店長のこのちょっとした「ありがとう」と「コミュニケーションが足りない店」であるような気がします。
だからこそ、「ありがとう」を自然に言う風土、雰囲気を店に作り出すことができたなら、きっと人材不足も解消できるし、離職率ももっと減るのではないか?そんな結論に至ったのです。
そのためにも、最初は、「強制体に」ツールや仕組みを使って「ありがとう」を増やす取り組みをやるのはありかなって?できれば、自然に増えるのが一番だと思いますが、最初は強制的に増やす取り組みをするべきかなっと。
昨日、「固定概念って怖いなあ」「僕の当たり前が当たり前であるはずがない」って思いながら、帰途についていました。
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