アメリカの意向を無視する形でGSOMIAを破棄し、さらに米国に対しその行為に対する不満表明の自粛要請を行うなど、「離米」に舵を切ったとしか思えない韓国。文在寅大統領はどこに向かいひた走っているのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、文政権は米韓同盟を破棄し北朝鮮との統一を実現させるのではないかとの見方を示しています。
トランプ・ディールの不調で変わる世界情勢
トランプ・ディールがうまくいっていない。このため、韓国、トルコなどが離米してきた。今後を検討しよう。
日米株価
NYダウは、利下げ期待で、7月16日27,398ドルと最高値を更新したが、中国の対抗関税と米国の追加関税UPで株価は、8月23日25,507ドルまで下がったが、その後、トランプ大統領のツイートで米中交渉を29日に行うとしたことと、景気指標がよかったことで逆イールドでなくなり、NY株価は8月30日26,403ドルまで戻している。
日経平均株価は、2018年10月2日24,448円になったが、以後低調で、12月26日18,948円と暴落し、米国利下げ観測で、7月25日に21,823円まで戻したが、その後一進一退で8月30日20,701円になっている。10月の消費税増税ができるように、2万円死守とPKOが株価を支えているような雰囲気である。また、26日は104円台に突入したが、30日は106円台になり、株価も上昇したが、市場参加者が少ない。
日経株価は、レンジ相場になって20,400円から20,700円の狭いレンジで株価が動いている。今までは、1998年と似た株動向であったが、9月2日からの値動きが上昇になると、1998年とは違うことになる。
米国は、トランプ大統領の強気の対中強硬策と、それを打ち消すツイートで、株価は大きく上下している。この原因がAIの機械取引が主流になり、トランプ発言の重みが大きいことによる。しかし、このアルゴリズムで、ほとんどの投資アプリが損を出しているので、徐々にトランプ発言の重みが少なくなったようだ。このため、良い方向のツイートに反応しなくなっている。
そして、トランプ大統領は、FRBには利下げを要求している。しかし、個人消費が旺盛で米GDPは2%成長と、景気はまだ好調であり、このため、株価は戻しているが、FRBは景気が良く利下げの理由がない。FRBの利下げなしを予想してか、ムニューシン財務長官は、100年債など超長期債の発行を検討するとした。
中国は、対抗関税で米国のすべての輸入品に関税を掛け、自動車には50%の関税がかかることになった。このため、米企業は追加の関税に反対である。このため、トランプ大統領は、中国と29日に電話会談をするとしたが、中国政府は電話会談を確認できないとした。また、トランプ大統領は、追加関税に反対する企業を批判している。
日本は消費者性向指数と実質賃金の伸びが、両方ともにマイナスであり、景気は良くないし、飲食店を中心に赤字になる企業が増えている。消費税前の駆け込み需要もない状況で、株価は2万円を維持しているのに、市場参加者が少なく、閑散相場になっている。
日米通商交渉の結果、日本の関税は農産物をTPP並みの関税で、米国の自動車関税は協議続行となり、中国が買わないトウモロコシを、250万トン250億円で日本が緊急輸入することで決着した。自動車の米国輸出額は、4兆円以上であり、自動車に25%関税を掛けられると大変なことになるので、それを回避できたことは良かった。日本が想定した通りの展開になっている。このため、経済や株価には影響せず、無事通過した。
そして、景気好調でもトランプ大統領の要求する利下げをFRBがすると年末にかけて100円か100円割れの円高になり、利下げができない日本は、欧州と同じで景気後退になる可能性が高い。円ドル相場は大きな三角持ち合いであり、それを下に抜ける可能性もある。
トランプ・ディールの不調
トランプの強硬的な対中国、対イランのディールは、ほとんど成功していない。対抗して中国もイランも強硬的な対応をするので、交渉が成り立たない。G7の場で、他のメンバーから批判が出て、強気のディールを少し緩和すると発言したが、今の処、その発言を裏付ける政策変更はない。中国やイランと強気の取引することと欧州などの同盟国にも過剰な要求をすることでディール全体が失敗して、世界経済は下降してきて、G7の指導者からも不満が出てきた。
ドイツは、輸出が減少して景気後退が確実であり、財政出動も検討するとしているし、ラガルド次期ECB総裁は、量的緩和を広げるとしている。欧州は、景気後退の金融財政政策を実行する方向である。しかし、これらによるユーロ下落に対して、トランプ大統領は、ドルの為替介入をするとしている。
しかし、フランスのデジタル課税に対抗するフランス・ワインへの対抗関税はしないと表明した。不満に対してトランプ大統領も考慮したようである。
アルゼンチンは、9回目の債務不履行(デフォルト)になった。発展途上国は先進国より早く経済危機に直面するが、それが来たことになる。
そして、トランプ大統領は、経済金融理論などを無視したドル安を志向するので、8月のジャクソンホールでの金融政策検討会議でも、各国中銀総裁たちは、世界経済攪乱での金融政策に無力感が漂っていた。攪乱するのは、もちろんトランプ大統領である。
その上に、英国ジョンソン首相は、国会を閉鎖して、国会での審議なしでハードブレクジットを実行するようである。もう1人、世界経済を攪乱する政治家が出てきた。しかし、このような行動をしても、ポンドが一段下げにはならずに、むしろ上昇している。ポンド相場では、大量の空売りを買戻す方向で、一時的に上がっているようである。
そして、世界の攪乱で、金の価格が上昇している。ドル離れで、中国とロシアなどの中央銀行が金を積極的に買っている。
人種差別を口にする白人優先主義で、銃規制反対で世界経済を攪乱するトランプ大統領を、FOXニューズも批判し始めたので、トランプ大統領は、FOXに対しても不満を表明した。しかし、来年の大統領再選で、味方になる報道機関が無くなりつつある。トランプ・ツイートで報道機関なしでも戦えると見ているのかもしれないが、人種差別や銃規制反対的な発言が減ってきた。
もう1つ、米国の全国農業者組合(NFU)はトランプ大統領による関税引き上げについて、「事態を改善するどころかますます悪化させている」と、オハイオ州の大豆農家も「対中貿易戦争によって、トランプ大統領に再び投票することはない」とした。農家の支持も失っている。米国が景気後退になると一層、再選はないことになる。
離米化する諸国
トルコ
トルコは、NATO加盟国であるが、ロシアのS-400迎撃ミサイルを購入し、米国はF-35戦闘機を売らないとしたことで、ロシアのsu-34戦闘機を購入し、国産化するという。しかし、シリアに展開する米軍の退避ルート確保の関係で、米国はトルコを非難出来ない状態になっている。その上にイドリブ地域の安全地域確保で、トルコ軍と米軍は、共同作戦本部を作り、トルコ軍がシリアのクルド人地域を攻撃しているが、米軍の駐留地域を避けている。
トルコは、巧妙に米国とロシアの中間位置にシフトさせて、米国から離れている。トルコはイランとも関係を持ち、イドリブを攻撃するシリアとは敵対しないようにしている。米国の覇権力が落ちて、中東地域では中間位置に自国を持っていくことが必要になっていると見ているようだ。
サウジの同盟国UAEもイエメンから撤退してサウジから離れている。バーレーンはイランとの関係を維持し、トルコと同じ位置をキープしている。この地域でのトルコの影響力は強い。その分、米国とサウジの影響力が減っている。
エルドアン大統領は巧妙であるが、西側から離れたことと利下げを先行する金融政策でトルコ・リラも大幅に下がっている。
韓国
これと同じ事が韓国に波及している。韓国も米国から継続を強く押された日韓軍事情報協定(GSOMIA)を破棄した。米国が強い不満を表明すると、韓国は米韓同盟より、自国の国益が重要であり、米国の不満表明を自粛しろとハリー・ハリス駐韓米国大使を呼んで抗議した。韓国は、米国に対しても強気な対応をしている。
その後、米国務省は「最近の韓日対立を考えると、リアンクール岩礁(竹島)での軍事訓練のタイミング、メッセージ、そして規模の拡大は、問題を解決するのに生産的ではない」とし、同盟国の防衛訓練に対して異例の批判を行った。これに対して、韓国は国益に口出しするなと、米国に抗議した。
日本は韓国を「ホワイト国」除外したが、貿易管理という意味では、米のNPO、Institute for Science and International Security(ISIS)が、今年5月に発表した、200カ国の戦略物資の貿易管理システムの評価結果では、韓国は17位であるのに対し、日本は36位と、韓国のシステムの方が高評価されている。
このため、韓国は、日本に対して、「ホワイト国」除外は、徴用工賠償請求に対する報復であると言うのであるし、日本が韓国の貿易管理不具合を指摘できない理由でもある。しかし、世界的には韓国を「ホワイト国」にしていない。これは、管理レベルの他に、お互いの国の信頼という要素がある。日本との貿易管理の会議を拒否した韓国を信頼できないと言い始める必要がある。
しかし、日本も米国のISISの記事を見て、外務省は韓国との定期的な会談を行うとした。しかし、米国の要請を拒否して、韓国が自国の国益を優先したことで、米国は在韓米軍の撤退を志向する必要が出てきた。日本の自衛隊の支援なく米軍が韓国では行動できない。
このため、今年の米韓協議で、駐留費の5倍増を正式に要求することになる。逆に、韓国安保会議(NSC)は、26カ所の在韓米軍基地を早期返還させるとした。米韓共に同盟終了に動き始めている。
もう1つ、米国の軍事費増大が限界になり、世界規模での前方展開態勢を見直す必要になって、望まれない在韓米軍の撤退を優先的に行うことになる。
そして、韓国の離米に合わせて、北朝鮮の崔善姫外務次官も米朝実務協議の開催は困難になったと表明。ICBMや核実験も再度始める可能性が出てきた。その時、在韓米軍が撤退していると北朝鮮攻撃ができる状態になる。
韓国の文政権は、米韓同盟を破棄しても自国の国益を優先するとしたので、北朝鮮との統一を優先して実現するようである。というように、韓国は離米に舵を切り、北朝鮮は反米に戻ると見るべきである。アジア地域での米海軍が中国海軍に負けているという豪州シンクタンクの報告が、大きく影響しているように思う。
中国の強気
中国も、世界の離米が強まったことで、強気になっている。不良債権が90兆円程度あるが、中国の景気対策で内需が拡大してきた。外需は大幅な減少になっているが内需が拡大したことで、対米貿易交渉でも、米国の追加関税を破棄しないなら、対面交渉はしないとトランプ再選がないと見て、交渉引き延ばし作戦に切り替えている。トランプディールを失敗させる方向にシフトした。農家などの支持率低下など離反が起こり、現時点では成功している。
トランプ大統領のG7での弱気発言は、中国の自信につながっている。8月の北戴河会議でも、習近平への非難がなく、米国への強気政策を支持されたようである。習近平の権威は、高まったような感じになっている。心おきなく、香港の民主化デモに対しても強気の対応を取れることになる。国の体制もより独裁色を高めるという。
香港の林鄭月娥・行政長官が、「逃亡犯条例」改正の取り下げを申し出たのを、中国政府は却下したようであり、民主化デモが収まらない理由でもある。民主化の指導者を大量に逮捕して、強硬策に出る準備をしている。
これに対して、米国は言葉で牽制はするが、実効的には何もできない。米国はトランプ大統領の人種差別的発言で、中国のレベルと、あまり差がないように見えてしまうからである。
トランプ大統領の白人優先主義で、中国の行動を強く縛ることができなくなっている。中国の独裁主義が益々、世界に出ていくことになる。
このような、韓国と中国の動きに、米国は電子製品などの中国・韓国から輸入を減らして、台湾の電子部品を大幅に輸入し始めた。この裏で、台湾を米国は守るとしたようだ。次の世界秩序に向けて、米国も動き出している。
米国の味方・日本
このような状況で、日本も米国一辺倒では世界から見放されることになる。米国と欧州をつなぎとめて、中国の世界に対する横暴を制御し、かつ中国の経済力を世界の発展につなげる難しい役割を担っている。
米国にも良い顔をして、中国やロシアに対してもよい顔をして、欧州とも味方であるという、八方美人的な対応をして、各国をつなぐことが、このような混沌とした世界の情勢では、一番必要とされている。
日本は、思想的な強さがなく、協調性が強い民族であり、日本しかできないことで自分の位置を確保するしかない。
しかし、米国の衰退が、目に見えるようになってきた。それを日本の報道機関は、しっかりと見ない様であり、日本国民も米国の衰退を意識できていない。覇権の移転時期にあることを、明確に意識して、政治を行う必要になってきたし、国際ビジネスでも同様なことを見ていく必要がある。難しい時代になっている。
さあ、どうなりますか?
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