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大量閉店より深刻。セブンイレブンが「聖域」に手を出した裏事情

スマホ決済サービス「セブンペイ」の手痛い失敗が記憶に新しいセブン-イレブンですが、同社が10月10日、「不採算店約1000店の閉鎖・移転」を発表したことが大きな話題となりました。これを受け、「今までのような大きな成長を今後も実現するのは容易ではない」と指摘するのは、店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さん。佐藤さんは自身の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』で、セブン-イレブンを含む大手各社の業績を分析した上で、「コンビニ業界は大きな岐路に立たされている」としています。

セブンがついに1000店閉鎖・移転。岐路に立たされたコンビニ業界

コンビニエンスストア各社が岐路に立たされている。最大手のセブン-イレブン・ジャパンは10月10日、不採算店約1000店について閉鎖や立地移転を行うと発表した。これまで店舗数を増やすことで成長を実現してきたが、ここにきて大量閉店を実行することに驚きをもって受け止めた人は少なくないだろう。

背景には収益性低下の懸念がある。1000店閉鎖・移転とともに、セブン-イレブン加盟店が本部に支払うロイヤルティー経営指導料を来年3月から減額するが、これにより加盟店1店あたりの利益は年間で平均約50万円改善する見込みの一方、本部利益は約100億円悪化するためだ。

セブンはこれまでロイヤルティーを「聖域扱いしてきたが、そこに手をつけざるをえないほど追い込まれていた

今年2月に東大阪市のセブン-イレブン・ジャパン加盟店オーナーが本部の同意のないまま営業時間短縮を強行し、本部と対立。これを機にコンビニの24時間営業の見直しを求める声が高まった。こうした情勢に対して競合のファミリーマートやローソンは時短営業の実験をするなどして加盟店オーナーに寄り添う姿勢を示してきた。一方、セブンは当初は消極的な姿勢が目立った。しかし、世論の批判はやむことがなく、何らかの対応をしなければならない状況に追い込まれた。

セブンは4月に加盟店の人手不足などの是正に向けた「行動計画」を策定。そして10月に時短営業の検討の取り組みの一環として「深夜休業ガイドライン」を制定した。まずは時短営業の実験を行っている230店舗のうち8店舗で11月1日から本実施を開始する。実施店舗は今後増える可能性がある。

このように時短営業に向けて話を進めているが、本音としては24時間営業は維持したいとみられる。それは、来年3月からのロイヤルティーの見直しの内容からうかがうことができる。

ロイヤルティーについてセブン-イレブン本部は現在、24時間営業している店舗については2%、2017年9月からは一律1%の減免措置をとっている。

20年3月からは、24時間営業の店舗で売上総利益が月550万円超の場合、月3万5000円を一律減額する。月550万円以下の店舗は計3%の減免措置の代わりに月20万円を差し引く24時間営業ではない店舗は、売上総利益が月550万円超の場合、月1万5000円を差し引く。月550万円以下の店舗は1%の減免の代わりに月7万円を減額する。

24時間営業の低収益の加盟店には月額20万円を実質的に支給するなど支援が手厚い。24時間営業の高収益店には従来の3%の減免措置に加えて月額3万5,000円を減額するなど、こちらも手厚い支援となっている。非24時間営業の場合も支援はあるが、24時間営業の方が圧倒的に有利と言えるだろう。

これは、24時間営業維持に向けた施策と言えるのではないか。聖域のロイヤルティーに手をつけてでも24時間営業を維持する狙いが透けて見える。

このようにセブンはあくまでも24時間営業を維持したい考えだが、一方で他の大手は24時間営業について柔軟な姿勢を見せ、セブンとの違いを際立たせている

ファミマは加盟店700店規模で時短営業の実験をする。ローソンは約100店で時短営業を実施しているほか、20年1月1日の元日に100店規模で休業する実験を実施する。ミニストップは加盟店が本部に払うロイヤルティーを売上総利益ではなく最終利益を基に決めることを検討するほか、24時間営業について加盟店が選択できるモデルを検討している。

これら3社は24時間営業についてはセブンと比べて柔軟な対応をとっているように見える。そうすることで、消費者と加盟店オーナーからの支持を獲得したい思惑がありそうだ。なぜそうするのかといえば、イメージアップを図って集客を実現するほか、日販(1店舗の1日当たり売上高)でセブンに大きな差をつけられているなか、イメージアップで加盟店のなり手を確保するためではないか。

18年度の日販は、セブンが65.6万円、ファミマが53.0万円、ローソンが53.1万円、ミニストップが41.3万円だった。セブンはファミマとローソンに対して12万円、ミニストップに対しては24万円の差をつけている。セブンは圧倒的な販売力を誇っており、これが加盟店のなり手を引きつける力にもなっている。加盟店のなり手の争奪戦が激化するなか、セブン以外の3社は日販では太刀打ちできないので24時間営業について柔軟な対応を見せることでイメージアップを図り、セブンからなり手を奪いたい狙いがありそうだ。

余談を許さぬ各社の業績

いずれにせよ、コンビニ業界はいま大きな転換点を迎えている。飽和がささやかれる中で店舗数が伸び悩んでいるほか、既存店の客数はマイナス傾向が続いている。同業との競争に加え、ドラッグストアなど異業種との競争も激化している。コンビニ各社、これまでのような大きな成長を今後も実現するのは容易ではない。各社の足元の業績も予断を許さない状況にある。

セブン&アイ・ホールディングスの20年2月期第2四半期(19年3~8月)連結売上高は前年同期比0.9%減の3兆3,132億円とわずかながらも減収に陥った。イトーヨーカドーなどのスーパーストア事業の売上高が前年同期比2.7%減の9,229億円と減収になったほか、国内コンビニ事業の売上高が既存店売上高の低迷で0.4%増の4,880億円と微増にとどまったことが響いた。

もっとも連結経営の利益は好調だ。営業利益は2.8%増の2,051億円、純利益は9.2%増の1,106億円とそれぞれ中間期として過去最高益を達成している。国内コンビニ事業の営業利益が出店効果で4.4%増の1,333億円と堅調だったほか、海外コンビニ事業が12.1%増の406億円と大きく伸びたことが寄与した。

ファミマの20年2月期第2四半期(19年3~8月)連結売上高(国際会計基準)は前年同期比17.4%減の2,654億円と大幅減収となった。総菜を手掛けるカネ美食品の株式の一部を売却して連結除外になったことや不採算の直営店の閉鎖を進めたことが影響した。

一方で連結経営の利益は好調だった。本業のもうけを示す事業利益は31.6%増の463億円、純利益は25.6%増の381億円だった。総菜ブランド「お母さん食堂」が好調だったこともあり既存店の日販が堅調だったほか、本部コストを削減できたため、大幅な増益となった。

ローソンの20年2月期第2四半期(19年3~8月)連結売上高は前年同期比4.9%増の3,691億円だった。コンビニにおいて、オリジナルのチーズケーキ「バスチー」が大ヒットするなどでデザートの売り上げが大きく伸びたほか、高級スーパーの成城石井が好調だったことが寄与した。

連結経営の利益も増収効果で好調だった。営業利益は6.6%増の367億円、純利益は12.1%増の201億円だった。

ミニストップの20年2月期第2四半期(19年3~8月)連結決算は厳しい内容となった。売上高は前年同期比6.4%減の996億円だった。営業損益は24億円の赤字(前年同期は14億円の黒字)、純損益は30億円の赤字(同7億円の黒字)となった。既存店の不振や不採算店の閉鎖が響いた。

大手4社の業績は一部は好調であるものの、決して楽観視できる情勢ではない。飽和がささやかれ競争が激化しているなか、24時間営業を巡る問題が直撃している。コンビニはいま、大きな岐路に立たされている。

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image by: MAG2 NEWS

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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