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中国にまた利用される。習近平の国賓待遇来日が日本を沈ませる訳

数年前までほとんど顧みられることがなかった、中国当局による少数民族・ウイグル人への弾圧が、ここに来て米英などからの非難の声が高まっています。その理由はどこにあるのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では、著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんがその理由を解説するとともに、習近平国家主席の国賓待遇訪日について改めて異を唱えています。

100万人のウイグル人が強制収容所に…

米中関係が良好であった時中国の人権問題はほとんど問題視されませんでした。アメリカ政府が、チベット問題、ウイグル問題などで中国を批判することは、ほとんどなかった。これは、欧州も同じこと。欧州は、「世界一人権にうるさい」ことになっていますが、中国の人権に関しては、ほとんど沈黙していました。なぜ?「チャイナ・マネーが欲しいから」でしょう。

国の指導者だけではありません。90年代2000年代日欧米企業は大挙して人権侵害国家中国に投資していました。理由は、「賃金が安いから」「市場が巨大だから」。

2018年7月、「米中覇権戦争」がはじまりました。すると、「中国は人権侵害国家だ!」という批判が、突然起こり始めた。この批判は事実であると同時に、「情報戦の一環なのです。

たとえば、国連は、「中国政府が、ウイグル人100万人を強制収容している!」と非難しています。BBC2018年9月11日を見てみましょう。

国連、中国政府がウイグル人100万人拘束と批判

BBC NEWS JAPAN 2018年09月11日

 

中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人を約100万人、テロ取り締まりを「口実」に拘束していると、国連は懸念を強めている。国連人種差別撤廃委員会は8月末、最大100万人のウイグル人住民が刑事手続きのないまま、「再教育」を目的とした強制収容所に入れられているという指摘を報告した。8月半ばにスイス・ジュネーブで開かれた同委員会の会合では、信頼できる報告をもとに中国政府が「ウイグル自治区を、大規模な収容キャンプのようにしてしまった」と委員たちが批判。

どうですか、これ?21世紀の今、世界第2の経済大国でヒトラー時代のドイツやスターリン時代のソ連と同じことが起きている。本当に驚くべきことです。

なぜ中国政府は、こんな残酷なことをするのでしょうか?ウイグル族は、イスラム教徒なのです。中国は、共産主義をベースに建国された国。そして、共産主義は無神論なのです。その為、中国人の約90%は、「無宗教」「無神論」です。

ところが、新疆ウイグル自治区の約6割はイスラム教徒(残り4割は、ほとんど漢人で無神論)。中国政府にとっては、「イスラム教徒というだけで弾圧の理由になる。ちなみにチベットは、「チベット仏教」を信じているので、これも弾圧の対象です。

さらに、ウイグルには独立論者」もいる。ウイグルの人たちは、長年ひどい境遇に置かれています。たとえば、ウイグル自治区では、1964年以降46回もの核兵器実験が行われてきた。

こんなウイグル族に「追い風」が吹いてきました。米中覇権戦争がはじまったので、アメリカやイギリスが、「情報戦争にウイグルを使い始めた。そして、アメリカやイギリスが動いたので、国連も他の国も動き始めました

中国は「ウイグル族の拘束やめよ」 22カ国が共同書簡で非難

BBC NEWS JAPAN 2019 7/11(木)13:06配信

 

イギリスや日本など国連人権委員会加盟の22カ国は、中国・新疆(ウイグル自治区)におけるウイグル族の処遇について、中国政府を批判する共同書簡に署名した。共同書簡はミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官あてのもので、10日に公開された。「新疆のウイグル族などの少数派を特別に対象とした、大規模な収容所や監視、制限の拡大」に関する報告書を引用し、新疆の現状を非難している。その上で中国政府に対し、国連や独立した国際組織の査察団へ、「新疆への実質的なアクセスを認める」よう強く促している。国際人権組織ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、署名した国は、イギリスと日本のほか、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、アイルランド、ラトヴィア、リトアニア、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイスの各国。

2019年7月18日、ペンス副大統領は、「信教の自由に関する閣僚級会合」で演説しました。曰く、

ペンス副大統領は、新疆ウイグル自治区での状況について「共産党は100万人以上のウイグル人を含むイスラム教徒を強制収容所に収容し、彼らは24時間絶え間ない洗脳に耐えている。生存者によれば、中国政府による意図的なウイグル文化とイスラムの信仰の根絶だ」と述べた。
(ウェッジ 2019年8月8日)

さらに、ポンペオ国務長官は、

ポンペオ国務長官は、「中国共産党は中国国民の生活と魂を支配しようとしている。中国政府はこの会合への他国の参加を妨害しようとして。それは中国の憲法に明記された信仰の自由の保障と整合するのか」、「中国では、現代における最悪の人権危機の一つが起きている。これはまさしく今世紀の汚点である」と述べた。

ウイグルの人々が解放される日が来ることを、心から望みます。

この件で、日本政府は何を考えるべきでしょうか?「100万人のウイグル人を強制収容所にとじこめている国のトップを国賓として招くのはダメでしょう。習近平が天皇陛下、皇后陛下と談笑する映像が世界に拡散され、「日本の天皇皇后はウイグル人100万人を強制収容している国のトップを歓待しているなと思われるのは極めてまずいことです。

そして、習近平はかなりの確率で、「近い将来ご訪中ください」というでしょう。天皇陛下、皇后陛下は、立場上拒否できません。両陛下が訪中される時、ウイグル問題で中国批判はさらに強まっているはずです。香港では現在2人犠牲者がでている。近い将来、犠牲者はさらに増え、この件でも中国は大いに批判されているはずです。

そんな中で天皇陛下は訪中される。「日本は相変わらず人権無視だな」と非難されることでしょう。

中国が日本を利用して、捨てた過去

1989年、天安門事件が起こりました。中国政府による、民間人大虐殺事件です。これで中国は国際的に孤立しました。同国は、どうやってこの苦境から脱出したのでしょうか?

そう、天皇陛下皇后陛下を招待した。1992年、天皇陛下、皇后陛下(現上皇陛下、上皇后陛下)が訪中されました。欧米は、「日本は、中国市場を独占するつもりだ!」と警戒した。そして、1993年になると、欧米も中国との関係を改善させはじめた。

問題はその後です。中国は、「役割を果たした日本を切りました。具体的には1994年、「愛国主義教育実施要綱」を制定し、「反日教育を大々的に行うようになった。中国は、クリントン政権取り込みに成功。それでクリントンは、親中反日で、「日本バッシング」に熱心だった。

何がいいたいか。中国は天皇皇后両陛下を天安門事件の孤立から抜け出すための道具として利用した。その後は、国内、外国で「反日プロパガンダ」を強化し、日米関係悪化政策を進めていった。

今、中国は、同じ作戦できている。当時の日本政府は、ナイーブだった。今の安倍政権もナイーブで、また同じ過ちを繰りかえそうとしています

幸い、佐藤正久先生、青山繁晴先生が代表をつとめる「日本の尊厳と国益を護まもる会」の議員40人は、習近平の国賓招待に反対しています。私は、普段穏健派ですが、この件では佐藤先生、青山先生を支持します。

過ちを繰り返すのは、愚かなこと。しかし、同じ過ちを繰り返すのは、もっとも愚かなことです。安倍総理は、

という流れを思い出していただき、だまされないでいただきたいと思います。

安倍総理は、「日本を敗戦国から戦勝国に転換させた偉大な首相」になるか、それとも、「過去の過ちを繰り返して日本をまた敗戦国にした残念な首相」になるかの岐路に立たされています。そして、安倍総理の決断が、日本国の未来にもかかってくるので、「日本も歴史的岐路に立っている」といえるのです。

image by: 首相官邸

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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