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ドコモとAmazonの提携発表、ユーザーにどんなメリットがある?

ついに発表されたドコモとAmazonの提携。先月26日、スマートフォンの料金プランである「ギガホ」を契約しているユーザーを対象に、特典として年会費4,900円の「Amazonプライム」を1年間付与することを発表しました。もちろんドコモユーザー限定のキャンペーンとなりますが、これはかなり魅力的な話。既に今月1日からサービスはスタートし、ネット上では概ね好意的な意見が広がっています。そこで、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の中で、このキャンペーンについて解説してくれるとともに、法改正が生んだある問題点も指摘しています。

ドコモは対抗ではなく「仲良しになる道」を選んだ

NTTドコモとAmazonが提携を発表した。NTTドコモの料金プラン「ギガホ」を契約しているユーザーはAmazonプライムの年会費4900円が1年間、無料になるというものだ。

ちまたでは「新規にAmazonプライムを契約した人だけが無料になり、既存の顧客は関係ない」と結構、誤解されているのだが、実は既存のユーザーも1年間無料の対象になる。すでに会員の人は特設サイトで申し込むと、契約年数の終了が1年、延期されるという立て付けだ。

NTTドコモとAmazonの関係は、電子書籍デバイス「Kindle」の3G回線提供まで遡る。今回の取り組みは5G時代に向けた、Amazonプライムビデオという動画コンテンツの調達でもあるし、また解約を抑止する効果を狙ったものだろう。KDDIのNetflixプラン対抗という点においては申し分のない組み合わせではないだろうか。

今回、NTTドコモはKDDIのようにバンドルしたプランではなく、あくまで「キャンペーン」という位置づけだ。NTTドコモとしてはとりあえず「お試し」としてユーザーの反響を見ているのだろう。1年無料ではあるが、おそらく複数年、延長していくのではないか。また、正式な料金プランとして採用されるのは、来春開始となる5G向けプランになるのではないか。

ただ、ちょっと気になるのが総務省や公正取引委員会などの反応だ。

仮にNTTドコモとAmazonがタッグを組み、Amazonプライムの年会費が組み込まれた5G料金プランが登場した場合、「競争上、いかがなものか」とツッコミが入ってくることも懸念される。NTTドコモという国内シェアナンバーワンのキャリアが、動画サービスだけでなく、通販をメインに手掛けているAmazonと組むことで「他の通販サイトが排除されかねない」と茶々を入れてくるところが出てきてもおかしくない。

ただでさえ、GAFA規制法を作ろうとしている昨今、巨大なプラットフォーム同士が距離を縮めることを快く思わないところも出てくるだろう。

今回のキャンペーンを開始するにあたり、担当者に「総務省や公取方面は大丈夫か」と聴いたところ、問題ないような回答ではあった。ただ、これがキャンペーンではなく、正式な料金プランとなると話は変わって来るかもしれない

消費者としては、キャリアが創意工夫してお得なプランを提供してくれるのは大歓迎だし、総務省が2年縛りにメスを入れるなか、このような「縛り」を設けてくるのは、メディアから見ると本当に「面白い。よくやった」と思う。

今後、4キャリアの間でこのような施策がまだまだ展開されるだろうが、総務省や公正取引委員会には、そうしたキャリアの努力を踏みにじるような無粋なことだけはして欲しくないものだ。

改正電気通信事業法の影響で、キャリアショップから挙がる悲鳴の声

今週、福岡で複数の販売代理店関係者に話を聞く機会を得た。10月の改正電気通信事業法により、一定の機種変更需要はあるものの、販売台数は大きく落ち込むなど、悲鳴が上がっている状態だという。9月までは駆け込み需要もあったが10月以降は特にひどく「流動性が落ちている」(代理店関係者)とのことだった。いまのところ、当然ながら「解除料1000円」「2年縛りの見直し」の効果は全く出ていない。

3キャリアのなかでもドコモショップが悲惨だという声もあった。6月の新料金プラン以降、低迷が続いているのだという。

そんななか、改正電気通信事業法とは別に販売代理店関係者が惨状を訴えていたのが、ショップ店員の求人に人が集まらないということだった。どうやら学生には「キャリアショップの仕事は相当きつい」というイメージがついてしまっているようで、求人をかけてもさっぱり人が集まらないということだった。
販売代理店関係者は、「応募者が増えるようにするにはどうしたら良いか分からない」とぼやくしかないようだ。

確かに、ここ最近も改正電気通信事業法の施行によって、販売方法やプログラムの名称が一ヶ月で変わったりと、ショップで働く人達には相当な負荷がかかっているように思う。

そもそも、自社の料金プランや端末の仕様、付加サービスなどを覚えるのは当然のことだし、さらにはスマホ購入者からは「LINEやFacebookの設定を教えて」と聞かれれば答えなくてはならないこともある。

平日の昼間となると、年齢層高めの人たちが毎日のように訪れ、質問してくるという。まさに茶飲み場と化した病院のような有様だ。そうした人の相手をしても、代理店にとって1円の収入にもならない。若いショップ店員さんとしても、年齢層高めの人の接客は難易度が高く、結局、辞めていってしまう人が多いという。

今後もスマホを新たに購入する人が減少し、さらに働き手も減ってしまうとなると、代理店としてもキャリアショップの維持が難しくなってくる。キャリアショップは、キャリアにとってみれば重要な顧客接点であり、一方、ユーザーにとってみても、最新のIT機器に触れ、接客を受け、納得して購入できる数少ない場所である。今後、地方などでキャリアショップが淘汰されていくようなことになれば、地方でのIT活用が滞ることになる

総務省の有識者会議では、キャリアショップでのチラシやポスターなどの広告表記のルール作りに躍起になっているが、そんなことよりも代理店がキャリアショップを維持できるよう、キャリアと販売代理店の力関係を調査したり、改善できるような手を打つほうが重要ではないか。

総務省は5Gで地方創生をさせるために5G盤整備率を重視しているが、地方のキャリアショップを延命させないことには、地方の5G活性化にはつながらない。総務省は、キャリアショップの惨状にもっと耳を傾けるべきだろう。

image by:上 ShutterstockAmazon

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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