家電量販店に足を運ぶと、ずらりと並ぶ炊飯器を目にすることはできますが、どのようなご飯が炊きあがるのかは、当然ながら想像の域を出ないものです。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』でMBAホルダーの青山烈士さんが紹介しているのは、象印マホービンが展開する、自社の炊飯器で炊いたご飯を「実食」できる飲食店。家電メーカーがいかにして飲食店経営を成功させているのか、その戦略と戦術を分析しています。
家庭用を業務用へ展開することで顧客が体験する場を提供する
今号は、お米にこだわった人気のレストランを分析します。
● 象印マホービンが展開している「象印食堂」
戦略ショートストーリー
ごはんにこだわる方をターゲットに「炊飯ノウハウ」や「お米マイスター」に支えられた「絶品のごはんを堪能できる」「食べ比べできる」等の強みで差別化しています。
徹底的にごはんにこだわる店舗をとおして、ごはんのおいしさを再発見させることで、顧客からの支持を得ています。
■分析のポイント
象印マホービン100年目の集大成として生み出した、家庭用炊飯器「炎舞炊き」ですが、炊飯器の競争は激しくパナソニック、タイガー、日立などの既存の競争相手に加えてバーミキュラなど新たな競争相手も加わっている状況です。
家電量販店でごはんの食べ比べをさせてもらえれば自分の好みの炊飯器を見つけられると思いますが、そういった売り方をしているお店は少ないです。ですから、「象印食堂」のようにメーカーが自ら自社の炊飯器で炊いたごはんを試せる場を提供することは、有効な打ち手だと思います。
ですが、家電メーカーが飲食店を出すのは容易ではありません。なぜなら、飲食店を運営するノウハウを持っていないですからね。
象印はどうしたかというと、多業態飲食店の経営を行う「ダイナック」と手を組み、料理は料理家・吉田麻子氏の監修、お米は「金子商店」の五ツ星お米マイスターによるブレンドなどその道のプロと組むことで、新たな分野に進出しています。
やはり、新たな分野にチャレンジするときにはその道のプロと組むことはセオリーですので、象印はよい選択をしていると言えますし、複数のプロと組むことがより強みを支えることにつながっています。
また、あくまでも象印の炊飯器「炎舞炊き」は家庭用ですが業務用として利用していることが、面白いと思います。家庭用と業務用は、はっきりと線引きされていることが多いので、家庭用を業務用に持ち込むという発想が素晴らしいですね。
現地の飲食店とコラボレーション店舗を期間限定で展開していますが、今後、既存の飲食店が自店にも「炎舞炊き」を入れたいという話が出てくるかもしれませんね。もしそうなれば、象印が狙っているかどうかわかりませんが、飲食店に象印(炎舞炊き)が入っていると集客につながるような(PCでいうインテル入っているのような)ことになるかもしれません。
今後の象印マホービン、ひいては「炎舞炊き」の展開に注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):ごはんレストラン
- 競合(お客様の選択肢):和食レストランなどが競合となるが、真の競合は炊飯器を作っているメーカー
- 状況:電子炊飯器の国内市場は横ばいのようです。
■強み
1.絶品のごはんを堪能できる
- 食卓の主役はごはん
- ごはんを引き立てるおかずはどれもご飯との相性を考えられた逸品ばかり
2.食べ比べできる
- 炎舞炊きの「炊き分け機能」で、ふつう/しゃっきりかための食感で炊き分けることで食感の違いが楽しめる
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
- 象印マホービン100年目の集大成として生み出したのが、象印の家庭用炊飯ジャー「炎舞炊き」
- 金子商店の五ツ星お米マイスターが炎舞炊きのためにブレンドした「象印食堂のお米」
- ごはんと共に味わうおかずは、テレビや雑誌の料理監修などで活躍中の料理家・吉田麻子氏監修による和食
- 多業態飲食店の経営を行うダイナックのノウハウ
上記のような、ノウハウなどが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- ごはんが好きな方
- ごはんにこだわる方
- 象印の炊飯ジャー「炎舞炊き」で炊かれたごはんを試してみたい方
◆戦術分析
■売り物、売り値
「ごはんレストラン」
「炎舞炊き」で炊き上げたごはんのおいしさを体験できるアンテナショップ
「おいしいごはんが、ここにある。」をコンセプトに、象印の高級炊飯ジャー「炎舞炊き」で炊き上げるごはんを提供しています
<主なメニュー>
- [ランチ]
象印御膳(鯛茶漬け付):1,600円→合わせるおかずで変化するごはんのおいしさを、手軽に感じることができます - [ディナー]
和食御膳:2,800円 - [テイクアウト]
象印二段弁当:1,500円
■売り方
- 料理教室やごはんの炊き方セミナーなどのイベントを随時開催
■売り場
- 象印食堂 なんば常設店舗(大阪市中央区難波五丁目1番60号 なんばスカイオ6階)
- 期間限定店舗
炎舞炊き 象印食堂 表参道店
炎舞炊き 象印食堂 現地の飲食店とコラボレーション店舗(北海道、愛知、福岡)
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
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