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なぜ老舗の日本橋三越がビックカメラをテナントに入れたのか?

2月7日、日本橋三越本店新館の6階にオープンした「ビックカメラ 日本橋三越」が話題です。「三越のおもてなしと、ビックカメラの家電に関する専門的品揃えを融合した『家電の新スタイルショップ』」との触れ込みですがどのような店舗なのでしょうか?メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』発行人の理央周さんが、老舗百貨店の顧客を意識した品揃えや接客などの特徴を紹介。単なるシャワー効果狙いではない三越とビックの狙いを解説します。

日本橋三越本店のチャレンジ~ビックカメラを入れてビジネスモデルを変換

三越伊勢丹ホールディングスが、2月7日に三越の日本橋店の中に、ビックカメラをオープンしました。三越の日本橋店といえば、日本で初めての百貨店と言われている老舗です。外観もかなり歴史のある趣がありますし、中に入ってもディスプレイや売り場の感じも、エレベーターまでもが、高級感あふれる、ザ・デパートといった雰囲気があります。

当然売っている商品も同じで、ラグジュアリーなブランドが揃っていますし、デパ地下も少し高めの美味しそうなものが売られています。私の好きなカフェ「ウインナ」も入っていますが、やはりヨーロッパ調のインテリアで、落ち着けるお店です。

このような中に、家電量販店であるビックカメラが、テナントとして入居する、ということになるので、「おや、珍しいな」というような感覚もありました。

ここ何年か、百貨店など大型の小売店舗は、ネット通販が出てきたこともあり、売り上げに関しては苦戦しています。そこで、ブランド力のある店を自店舗の中に置くことで、集客をしていこう、と考えることになります。

小売業では、「よく売れるブランドやショップ」が自店舗の中にあると、そこから他のフロアなどに売り上げが波及することを狙ったりできますよね上の方のフロアに集客力のある店、例えば飲食店などがあると、お客様はまずはそこに行き食事をしてから下の階で買い物をすることがあります。これを上から下へ、という意味でシャワー効果などといったりします。

名古屋にJR高島屋がありますが、飲食店のフロアには東京の有名店など、名古屋にはないお店があるのが人気で、いつも混んでいますし、日本一のバレンタインイベントと呼ばれている、「アムール・デュ・ショコラ」はなどもこれに当たります。

逆に、地下などの下層フロアに集客力のある店舗があると、まずそこで買い、ついで上の方のフロアにも行く、というパターンもあります。これを噴水効果などといったりします。

今回の三越もビックカメラの誘致は、こういった効果を狙っての施策なのですが、歴史がある老舗の三越がただ単に家電量販店を置く、ということではなさそうです。私も実際に行ってみたのですが、通常のビックカメラの店舗とは異なり、まず入ったところには、大きくゆったりとした、テレビを売っているスペースがあります。そこには、ソファなどがあり、顧客がくつろぎながら接客を受けられるようになっています。

置いてあるテレビも、300万円くらいの、かなり大きな8Kテレビなどがあり、空気清浄機や、キッチン家電も高額・高級家電が中心です。さらに、最新のコーヒーマシンやキッチン家電を使った、試飲や試食も可能だ、とのことです。やはり、三越の本来のお客様筋に合わせた店舗内での内装で、揃える商品もそれに合わせてのラインアップになっているようです。

また、日本経済新聞によると、商品や内装だけではなく、「販売員には三越がビジネスマナー研修を実施。服装もビック定番の赤いベストではなく、スーツを着用してもらう」とのことでした。

すなわち狙いは、「顧客の商品選びのサポートやアフターサービスも強化する」ことで価格だけではないところで勝負する、すなわち単に物というハードを売るということだけではなく、お馴染みさんたちの生活に即したソフト的なことも販売していく、ということが垣間見えます。

お客様というのは、何かを買う時にいろいろなことを考えて買います。もちろん1円でも安い方がいい、という買い物をするときもありますが、大事に長く使いたいからしっかりと選びたい、という需要もあります。

三越のような老舗百貨店は、長くお客様でいてくれるお得意様をたくさん抱えているはず。これらのことを考えてみると、単にデパートに集客力のある家電量販店をもってくる、という安易な発想ではなく、戦略をきっちりと描いての今回の誘致、と言えそうです。理にかなっていますよね。

今後の三越日本橋店が、ビックカメラとともにどんなサービスを提供していくのか、注目に値する取り組みです。

image by: Osugi / shuttersyock

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