薬は水かぬるま湯で飲むものであって、アルコールで流し込むなどもっての外とされていますが、一体なぜなのでしょうか。そんな素朴な疑問に答えてくださるのは、現役科学者のくられさん。くられさんは自身の無料メルマガ『アリエナイ科学メルマ』で今回、薬の種類によっては最悪死に至るとして、そのメカニズムを解説しています。
お酒で薬を飲んではいけないと言われているけどどうしてなの?
たまにビールやチューハイで薬を飲んでいる人が居ますが、基本的にとてもオススメできるものではありません。
というかアルコールとの併用が注意されている薬が病院から出ている場合(処方されている場合)は原則お酒を飲むのは控えるというか止めておくべきものなのです。理由は簡単でヤバい副作用が出ることがあるからです。
例えば、お酒が無いと眠れない…みたいな人が、睡眠薬の処方を受けて、弱い睡眠薬じゃ酒と合わせないと眠れない…みたいなとんでもない人をたまに見かけます。
これは地味に危なくて、中枢神経を鎮静させる薬とアルコールの併用はその作用が足し算ではなくかけ算的に発動することがあり、その結果、呼吸不全や循環不全といった生命の危機に直結することもあります。
弱い薬だから大丈夫、何度も飲んでるし問題ないっしょ的な人もちょいちょい見かけますが…。
「死」というSSRが入ったガチャを毎度回すのはあまりリスク工学的にもオススメできません(笑)。
その他インスリンや血糖降下剤などの糖尿病の薬も低血糖から昏倒を引き起こすことがあります(糖新生阻害作用)、血圧降下剤も効きすぎて昏倒の危険性があります。
この辺は慢性疾患の薬が多く、その慢性疾患が酒タバコ暴飲暴食から来ていることが多いので、生活習慣から修正しないと薬だけではどうにもならないことを処方時に説明を受けているはずなのですが…病院で注意されたくらいで生活を改める人はそもそも…(以下略w)。
あとはアルコールによって代謝変化が起きることで意外な副作用が出るモノもあります。
例えばセフェム系抗生剤やHSブロッカー(胃酸を押さえるアレ)はアルコール分解酵素(ADHとALDH)の働きを鈍らせることで、頭痛や紅潮、動悸、頻脈、いわゆる悪酔いを起こしやすくなります。抗生剤(厳密にはセフェム系抗菌薬)はお酒とあわせると悪酔いするよ…というわけです。
逆にお酒を飲むことで分解が促進されることもあり、吸入麻酔の多くは有機溶剤的な性質を持つモノが多く、薬物代謝酵素であるシトクロムP450のCYE2E1を活性化させることで吸入麻酔や頭痛薬として使われるアセトアミノフェンなどの効果を下げる(分解促進)させるなんてこともあるわけです。
またこの辺、詳しくは作用機序が違ったりしてややこしいのですが、深酒した後にアセトアミノフェンを飲んだりすると肝毒性を示すこともあり、危険です。安易に薬とお酒を合わせて飲んではいけない事例だと言えるでしょう。
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