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君はK-POPを聴かない。なぜいま韓国で「演歌ブーム」が社会現象に?

BTSやブラックピンクといった韓国発のK-POPが世界を席巻している今、当の韓国国内では「トロット」なるジャンルの音楽が大流行、子供からお年寄りまでがこぞって聴き、そして歌っているそうです。トロットとは一体どんなもので、その流行の裏には何があるのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、社会現象となっているトロットの全貌を詳しく紹介しています。

なんで今トロット(演歌)なんだ?

9月23日の283号に、今韓国はトロットが社会現象になっている。トロットが熱い、と書いた。なんで今トロット(つまり演歌)なんだ。そういう思いがずっとあった。下は4歳、5歳くらいから上は80歳、90歳まで今韓国はトロット一色なのだ。幼児からご老人まで全てトロット。BTSも、ブラックピンクもあるが、トレンドはトロット。つまり演歌。演歌っていったら、ロートル(年寄り)の音楽っていうイメージが強いし、それは間違ってはいないはず。筆者自身、韓国のトロットはほとんど聞かない。興味がない。歌だったら、バラード調のがいい。

なんで今トロットなんかなあ、と考えていたら偶然、「荒木和博」さんのユーチューブサイトに出会い、ここで、彼が「韓国はロートルも若者もみな疲れてしまっているんじゃないのか」というような話をされていた(ことばはちがうけど意味はこんなこと)。疲れた人がトロットを聞く、というのではないのだけれど、なんとなく筆者にはストンと腑に落ちる感覚があった。韓国の場合、競争社会のど真ん中でずっとやってるから、幼子もロートルも青年も皆疲れている雰囲気はある。しかも現在はコロナ全盛期。国全体が身も心も疲れていることは確かだ。こんな折だから、トロットが流行るんだろうか。

ことの発端は、2019年2月から5月まであった「ミストロット」だ。TVチョソン(TV朝鮮)が仕掛けた番組だった。女性だけが出られるコンテストで、ここでソン・ガインという女性が優勝しその後この子がテレビCFといわず、バラエティ番組といわずテレビに顔の出ない日がないくらい人気を博していた。

なぜこの企画(ミストロット)が持ち上がったのか。誰が仕掛けたのかはわからない。おそらくTVチョソンのPDとか放送作家とかそういう連中だろう。BTSが世界を席巻する中、なんで国内で「トロットでいくべ」となったのか。市場調査をして「今、トロットだ」というデータがあったのか。ビッグデータ解析で、「今、トロットだ」という結果がでてたのか。わからない。「なんでトロット番組」を作ろうと企画したのか、筆者としてはこの部分、一番知りたいのだが…。

そこに2020年1月から3月まであった「ミスタートロット」。決勝戦に残った7人が「トロットセブン」と呼ばれ、今現在、韓国のあらゆるテレビに顔の出ない日がない。そのうちの1人が女性問題でちょっと人気がおちてトロットシックスなどというふれこみで6人が番組に出ている。この中の一番下が3月から中学生になったジョン・ドンヨン君。一番上が44歳のジャン・ミノという人。

国全体がトロットだけといっていいほどだ。失恋を悔やみ、不運を悔やみ、人生を悔やみ、傷ついたこの心の傷を酒で癒すしかないようなそんな歌詞が多いのがトロットつまり演歌だ。こういうトロットを、幼稚園生や小学生、中学生をはじめ青年層も歌いたがっている。老年層はいうまでもないけれど。いつまでこういう現象が続くかはわからないけど、今は全国民が皆トロットにのみ耳を傾ける。荒木和博さんのいうように、韓国社会が一種の「疲れ」を帯びた状態になってるからこういう演歌調つまりトロットが流行るのかもしれない。

ちょっと一服してから出発しようという歌がトロットだと思う。ロックなどの尖った音楽が流行るより、トロットなどが流行るほうが、社会はすこしでも「落ち着き」や「ゆっくり」を取り戻すのに役立つのかもしれない。

韓国はあまりにも速く走りすぎてきたきらいがある。筆者が韓国に渡った三十余年前と比べたら今は雲泥の差だ。おりしも、韓国経済を引っ張ってきた天下のサムソンのイ・ゴンヒ会長が永眠された。韓国はここらで一休みして、また新たな出発を期すべき時に至っているのかもしれない。

【関連】なぜ日本は負けた?韓国政府の“成果物”としてのK-POPとBTS世界制覇

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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