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三菱電機のパワハラ自殺が労災認定、日本の職場環境の深すぎる闇

電機メーカー大手の三菱電機に2019年4月に入社した男性社員が同年8月自殺したことについて、家族による労災申請が認められていたことが明らかになりました。三菱電機でこの種の労災認定が下りるのは約8年の間に7件、うち自殺が4件にも上ります。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、「自殺」「労災認定」で多くの事例がヒットする現状を憂い、労基署がまだ明らかにしていない今回の認定理由を開示して、社会の教訓とすべきと訴えています。

新聞は「自殺」「労災認定」についてどう報じてきたか?

きょうは《朝日》から。6面に、労災認定についての記事があります。三菱電機の事例が取り上げられています。そこで「自殺」と「労災認定」で1年以内の紙面掲載記事を検索すると、23件にヒット。これを対象にします。まずは6面記事の見出しから。

自殺・過労 相次ぐ労災認定
三菱電機 社長処分へ

2年前、三菱電機で起きた男性新入社員の自殺が労災と認められた。三菱電機ではここ数年、自殺や過労による労災認定が相次いでいたという。

証拠が残りやすい長時間労働の場合と違い、言葉の暴力は労災認定されにくいが、このケースでは遺書があり、上司の発言が裏付けられたものと遺族は理解している。尼崎労基署は認定の理由を示していないが、教育主任だった上司の暴言(「殺すからな」など)がパワハラにあたると判断されたのではないかと。三菱電機は今回の労災認定を踏まえて社長ら関係職員を処分するという。

過労やパワハラで自殺したとする労災申請は年間200件前後あるが、認められるのは半数に満たないという。特にパワハラのケースはハードルが高いと。

●uttiiの眼

三菱電機では、2012年から19年8月の間に、7件のこの種の労災認定があり、そのうち4件が自殺。その他は脳梗塞、精神障害、くも膜下出血が1件ずつ。この点をみただけで、職場に何か基本的な問題があり、改善されていないと想像できる。

労基署が認定の理由を開示しないことはしばしばあるようだが、これはおかしい。社会が教訓を正しく汲み取るためには、なぜ労災認定に至ったのか、プライバシーに配慮をしながらも、公開していくべきではないか。

【サーチ&リサーチ】

2020年3月29日付
「(働くってなんですか)プロローグ 働き手が元気になるために」とのタイトルの記事。「新型コロナウイルスの感染拡大を発端とするショックが再び、この国の働き方を脅かしている」という時代認識のもと、三菱電機の事例とトヨタ自動車の事例が取り上げられている。

*その後、労災認定されたケースが取り上げられている。

「ノルマ達成のために自ら年賀はがきなどを買い取る「自爆営業」」を背景に自殺した郵便局員のケース。長時間労働の末に自殺したメーカー「デンカ」の研究員のケース。長時間労働で過労自殺した工作機械最大手「DMG森精機」の社員のケース。三菱自動車の社員が過労自殺したケースなど。警察官が長時間労働と過労で自殺したケースでは「公務災害」に認定。業務による心理的負担からうつ病を発症したとして認定されたヤマト運輸社員のケースも。

●uttiiの眼

仮に自殺に至らなくても、うつ病やその他の精神障害を発症した人は遙かに多くいるだろう。あるいは、そこまで至らなくとも、会社にいられなくなって、そのことが原因で経済的に困窮してしまうケースはもっと多いかもしれない。まさしく「自殺」のケースは“氷山の一角”に過ぎないと見るべきだ。

職場環境の中に様々な差別の構造が持ち込まれるようになったことがこうした問題の遠因になっているかもしれない。労働者に支払う賃金を「賃金コスト」と見なす経営者は、非正規化を亢進させるだけでなく、社員を徹底的に働かせ、絞り上げる「努力」を惜しまない。当然、職場の環境は悪化し、荒んだ空気の中でパワハラが横行する下地ができあがる。

実際に社員が自殺に至るか否かには、上司たちの個性など、様々な要素が介在するだろうが、労災認定されるケースのこの広がりを見れば、個性を飛び越えた問題であることも、また、明らかだ。そして、もう二度と「死ぬまで働かされる」などということがないよう、今、新型コロナ禍で労働環境が一変したことを奇貨として、十分考えきっておきたいところだ。

image by:Alexander Tolstykh / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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