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衆院「4月解散説」の大バクチ。国民をバカにする政治家の厚顔無恥

ワクチン接種も遅々として進まずコロナ禍に喘ぐ国民も多い中、突如降って湧いた衆議院の「4月解散」説。そもそもなぜこの時期に総選挙を行う必要があるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、与党が解散を決意した9つの考えうる理由を挙げるとともに、政権に対してあまりに国民をバカにしていると猛批判。さらに野党の側の責任についても厳しく追求しています。

4月解散説は、まるで有権者をバカにした話

今週になって、いきなり「4月解散」などという説が出てきました。非常に不思議なタイミングですが、考えられる理由としては、

1)10月に衆議院は任期満了となるが、その直前の解散だと「解散ができずに追い込まれた」感が濃くなって、惨敗の可能性がある。約半年前の4月なら、総理として「解散権を行使したという勢い」は出る。

2)五輪の海外無観客は、世論的にはプラスであり、少なくともマイナスではない。

3)4月から5月の時点なら、とりあえず50%観客で五輪はやるという構えとして、その後でボイコットが多数出てから中止という順序になるなら、政治的ダメージは極小化できるかも。

4)ワクチン確保に必死の姿勢を見せるが、一般の接種は先なので「副反応を理由とした反対運動」が、この時点で大きく盛り上がることはない。

5)第4波が懸念されるが、緊急事態宣言を出さずに、ある水準以下で抑え込めば、「ウィズ・コロナ」的な安定が感じられるかもしれない。

6)当面、5月までなら株安はないだろう。

7)4月中旬の日米首脳会談が「功績」としてアピールできるかも。

8)デジタル改革を公約にして、抵抗勢力をあぶり出す方法で、多少の票の上乗せができるかも。

9)負けそうな補選を総選挙に吸収してしまえるかもしれない。

ということで、一見すると「菅内閣が勝負に出るのも一理ある」という印象を与えるかもしれません。ですが、一番大切なコロナ対策ということでは、全く何の成果もなければ、国民の納得感もないわけです。

そんな中で、選挙をしようというのが国民をバカにしていると思います。その「バカにしている」の半分は菅政権への違和感ですが、半分は野党にも感じます。

とにかく、政府のコロナ対策への世論の支持は低いのですから、野党としては「猛烈な敵失」があるわけで、まともな政策を出せば勝てるはずです。ですが、

というだけです。とにかく無策です。例えばですが、

この10を「実行可能な道筋をつけて」訴えれば、政権は取れるはずです。そんなことは誰にも分かっているはずなのに、そこを訴えることをしないというのは、要するに野党勢力の統治能力として、「それはできません」と言っているのに等しいわけです。これでは、政権交代などチャンチャラおかしいとしか言いようがありません。

ということは、野党勢力の側に壮大な「敵失」があるわけで、そうなると4月解散などという「コロナ禍、五輪実施困難の中での圧倒的な意味不明」でしかない政治的判断が成立してしまうのかもしれません。いずれにしても、有権者をバカにした話であることに変わりはないと思います。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)

image by: 首相官邸

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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