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赤瀬川原平の「路上観察学会」に学ぶ、日常生活の中にネタを見つける方法

コロナ禍で気ままな外出も制限され暇を持て余しているという方、そんなときこそ「新たに興味を持てるもの」を探す好機かもしれません。今回のメルマガ『久米信行ゼミ「オトナのための学び道楽」』ではiU情報経営イノベーション専門職大学教授の久米信行さんが、「路上観察学会」を紹介しつつ自身も日々実践しているという、日常生活の中に隠れている面白い物事や身近にあるお宝の探し方をレクチャー。さらに、こうして見つけたテーマを追いかけ続けることで得られる、ある「効用」も記しています。

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オトナの放課後相談室「ルーティーン生活でのネタ集め」

Question

コロナ禍でリモートワークになってから、毎日とても規則正しい生活を送ってます。
毎日規則正しく、仕事をして、決まった曜日と時間にジムへ行き、毎週土日は、子供たちの習い事の引率。飲み会もお出かけもご無沙汰で、健康的で、穏やかな生活はある意味で幸せなのですが、趣味で書いていたブログに書けるようなおもしろネタが激減して困っています。

以前なら通勤中に触れる世間の空気、飲み会で出会うおもしろい人たちや話、外回りで訪れる知らない街の景色が、ブログのネタになっていましたが、今は、決まった場所で決まった人に会う生活が続いていて、ブロガーとしては、停滞しているなと焦りを感じています。

依然として、飲み会やお出かけに気を遣う日々ですが、久米さんは、このコロナ禍でこのメルマガやnoteのネタ集めにご苦労はありませんか?

この1年半での久米さんのネタ集めのやり方の変遷などがあれば教えてください。(千葉県・46歳、男性)

久米さんからの回答

路上観察学会をマネして日常のルーティンに美を見出す喜びを味わいましょう。

藤森照信さんや赤瀬川原平さんの『路上観察学入門』『超芸術トマソン』の写真を見れば、面白い物事は、見慣れたはずのご近所や、通い慣れた道の路地裏に隠されていることがわかるでしょう。

※ 『路上観察学入門』とは……マンホール、エントツ、看板、ハリガミ、建物のカケラ…。路上から観察できるすべてのものを対象とした〈路上観察学〉。その旗印の下に都市のフィールド・ワーカーたちが集まって、隠された街の表情を発見する喜びとその方法をご披露する。街歩きが好きな人には、欠かせない、路上観察マニュアル。ちくま文庫刊

「路上観察学会」の面白達人たちを見ていると、まずは、自分ならではのテーマを見つけています。

路上観察学会メンバーの松田哲夫さんは、こう語っています。

この学会のメンバーが、後に路上観察と名づけられる行為を始めたのは70年代のことだった。

 

70年、林さんがマンホールの蓋に着目し、日本や世界の蓋を観察する。その過程で、ニワトリ小屋に変貌したテレビ(「ニワトリ・テレビ」)なども発見、しだいに路上観察に目覚めていく。林さんは、ヨーロッパに行った時、旅行の間にしたオナラの音と回数を記録したり、街を歩いていて靴にはさまった小石を毎日蒐集し、小さな瓶に入れるなど、森羅万象なんでも観察する人だった。

 

72年、今和次郎さんの考現学に興味を持っていた赤瀬川さん、南さん、そしてぼくが、ただ登って降りるだけの階段(「純粋階段」)を発見。これを契機に、町中にあって無用だけど大切に保存されている物件、無意識に作成された造形である「超芸術トマソン」を探索するようになる。

路上観察学会 マンホールの蓋の観察、オナラの音の記録行う

例えば「純粋階段」と画像検索してみてください。こんな無意味で愛らしい?ものを見つけて喜んでいるオトナがたくさんいることに驚くでしょう。そしてクスッと笑ってしまうでしょう。ちょっとマネしたくなるでしょう。

文中に出てきた林丈二さんは、今もfacebookで「日刊 林丈二の本 J.Books」というのを続けられています。最近も、有名な路上観察のテーマ「植物ワイパー」について投稿されていました。

日刊 林丈二の本 J.Books「植物ワイパー」

「植物ワイパー」って何?と思われるかもしれませんが、これもGoogleで画像検索してみてください。「ああ、これか。見たことある。ご近所にもある。」って気づくはず。

でも、こんなもの!?を見逃さずに写真に撮って「植物ワイパー」と名付けて、みんなで楽しむところが素敵なのです。

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またも私の趣味で恐縮ですが、私が勝手にハッシュタグをつけて誰も見ていない?のにSNSで投稿している「電線クラブ」「電灯クラブ」「観雲クラブ」「葉っぱクラブ」。これを続けているおかげで、見慣れた日常、いつもの道でも飽きることはありません。一見、同じに見えても、季節や天候により、毎日、少しずつ違っているからです。しかも、電線、電灯、雲、葉っぱ…いずれも世界中どこにでもあるものなので、旅先でも飽きることがありません。

人はどうあれ、自分がそれを見つけると嬉しくなって思わず写真を撮ってしまう、誰かに見せたくなる話したくなるテーマ。それが多ければ多いほど、その人は幸せです。これが、脳のパラボラ力。

昨今は、AIのリコメンドや、自分の好みを超えてランダムに検索や選択をしつつ、このメルマガ読者の視点にも学ぶことで、脳のパラボラ力を鍛えている私。

そして、こうした自分だけのこだわりテーマを3日3か月3年と追いかけ発信しているうちに、気が付けば、そのテーマに詳しくなり、美意識も磨かれます。もっともっと究めたくなってライフワークになったとしたら、その人は幸せです。これが、心のズーム力。

◎◎クラブ的な発信をネットで続けているうちに、いつしかAIが検索に引っかかるようにしてくれ、同志も見つかり、心のズーム力も磨かれます。

おかげさまで、このメルマガ読者のみなさまの投稿の力で、わが脳のパラボラアンテナも増え続けています。例えば、カーネル・サンダースや動物ポスト、今週からはカーブ・ミラーを探すパラボラアンテナも追加。

また、藤森照信さんをイチオシする記事を書くために検索しているうちに、まだ実際に現地で見たことがない藤森建築もあることを発見しました。いつか、あの建物を見に行こう という、新しい人生の目標も増えました。

こうして58歳の私が、日々ルーティンワークに追われながらも、週末は在宅でメルマガを書いていながらも、気が付けばネタ探しには困りません。それはこれまでコツコツ路上観察的にパラボラアンテナを増やしてきたからでしょう。

実は、テレワークで時間があり、しかも日常に退屈してしまう今こそ、新しいパラボラを増やしズームを磨くチャンスでもあります。路上観察学会のイイ大人に習って、誰もが見逃しがちだけど、実は身近にあるお宝を探して参りましょう。

そして、見つかったら、ぜひとも投稿してくださいね。

たのしみにしております!!

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image by: kuremo / Shutterstock.com

久米信行この著者の記事一覧

1963年東京墨田区出身。87年慶応大経済卒。イマジニア新卒一期で飛込営業と株式投資ゲーム開発。88年日興證券でAI相続診断システム開発研修統括。91年家業の国産Tシャツメーカー久米繊維工業入社。94年三代目社長就任(現相談役)。97年日経インターネットアワード、05年経産省IT経営百選、09年東商勇気ある経営大賞等受賞。10年APEC中小企業サミット日本代表。20年開学の新大学iUでは起業家教育・地域創生担当教授。明治大、多摩大の授業や企業団体研修に即した25万部超の「すぐやる技術」シリーズ等著書15冊。内外情勢調査会等で毎年数千人に講師。東京商工会議所墨田支部副会長、墨田区観光協会理事、墨田区文化振興財団 評議員として地元振興。新日本フィルハーモニー交響楽団・NBS日本舞台芸術振興会・日本吟剣詩舞振興会 各評議員として文化芸術振興。

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