MAG2 NEWS MENU

韓国で「財閥」創設。ロッテ創業者・重光武雄の“タイムマシン経営”とは

先日掲載の「創業者は所持金83円で韓国から日本へ。お口の恋人『ロッテ』とパチンコの意外な関係」では、日本を代表する菓子メーカーの黎明期から、創業者の重光武雄氏が祖国・韓国に一流ホテルを建設するまでの歩みを綴った、北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さん。宮塚さんは今回、メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』でその続編として、日本で成功を収めた重光氏が韓国で巨大財閥を築くことができた秘訣を、当時の隣国の政治状況等と併せて紹介しています。

【関連】創業者は所持金83円で韓国から日本へ。お口の恋人「ロッテ」とパチンコの意外な関係
【関連】ロッテ創業者死す。ひたむきな努力と幸運が奏でた華麗なるマーチ

※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2022年1月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:宮塚利雄みやつか・としお
宮塚コリア研究所代表。韓国・慶熙大学校碩士課程、檀国大学校博士課程修了。山梨学院大学教授(1992~2015年)。主な著書に『北朝鮮・驚愕の教科書』(宮塚寿美子と共著)、『北朝鮮観光』「がんばるぞ!北朝鮮』『アリランの誕生』『日本焼肉物語』『パチンコ学講座』、そのほか翻訳本多数あり。

北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で伝える宮塚利雄さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

ロッテ財閥研究(2) 「衣錦還郷」を実現した重光武雄

在日1世で「功成りて(事業に成功して)故郷に錦を飾った」人物として、以前、パチンコ機関連メーカーのエース電研の竹本宗一が、1978年に生まれ故郷の慶尚南道釜谷里に一大レジャーランド「釜谷ハワイ」を作った。それにより、日韓の友好と相互経済の発展に大きく貢献したとして、韓国政府から国民勲章「無窮花章」を受賞したことを本メルマガでも紹介した。

この竹本と同じくロッテ財閥創立者の重光武雄も「衣錦還郷」(故郷に物質的還元を行う朝鮮儒教の思想。日本語では「故郷に錦を飾る」に該当)を実現させた人物である。

重光の場合は、日本と韓国をまたぐ巨大財閥創始者、日韓を股にかけたカリスマ経営者として君臨した人物として前号で、重光が1965年の日韓条約が締結されて、その2年後の1967年に韓国にロッテ製菓を設立し、重光自らが韓国に進出したことを述べた。

【関連】創業者は所持金83円で韓国から日本へ。お口の恋人「ロッテ」とパチンコの意外な関係

重光が日本で得た巨額の資金を韓国での事業に投じ、巨大財閥の創立者に君臨できたのは、結論から言うと、「日韓の経済発展段階ギャップを利用した“タイムマシン経営”を実践したから」である。

さらには、重光と韓国政府要人との地縁・人縁関係が重光の韓国進出と事業展開に大きな役割を果たしていた。

よく言われるように、日韓の経済協力は、明朗な関係から始まったわけではない。それは日本の商社などが、1961年5月16日の朴正熙(パク・チョンヒ)少将による、いわゆる「5.16革命」による軍事革命直後から将来、韓国進出を考え、それまで行ってきた多くの後進国事業で利権を確保するための手段だった賄賂を共和党(当時の韓国の保守政党)に提供し始めていた。

北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で伝える宮塚利雄さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

朴正熙政府は米国の支援、ベトナム参戦、日韓国交正常化によって経済を安定させていたが、のちに「漢江の奇跡」と言われる経済発展を実現するために、在日朝鮮人の母国投資を呼びかけた。しかし、この当時、日本にいる在日1世の経済人の中で、母国に投資できるほどの人物(企業)はわずかだった。

日韓条約による国交正常化後の円借款(有償・無償5億ドル、民間借款3億ドル)は、現金で資金が提供されるのではなく、計画されたプロジェクトに現物として援助が提供されたものだったため、利権争いに地縁・人縁が介入する余地が生じてきた。

「5.16革命」の主役者となった朴正熙少将は、慶尚北道亀尾の出身で、さらには朴正熙政府の要人であった李厚洛は重光と同じ慶尚北道蔚山市の出身であった。しかも、重光は1921年生まれ、李厚洛は1924年生まれで、ほぼ同年代と言ってもよく、重光の韓国進出にこの地縁・人縁が、大きな影響を与えたことは言うまでもない。

重光が1967年に「祖国に貢献する」との信念から韓国に進出し、韓国政府との間で様々な事業計画が立案され、製鉄業などの国家の重要事業への参入を持ちかけられたが反故(ほご)になったこともあった。

重光は本業の製菓業に戻って、ロッテ製菓は韓国でハーブミント、クールミント、ジューシィミント、ペパーミント、オレンジボールガム、フーセンガムという日本での発売時期が異なる6つの主力ヒット商品を一斉に発売し、さらには「ガム日本一」となった「1,000万円懸賞」の韓国版も展開し、韓国の消費者を驚かせたりした。

重光はロッテ製菓の設立により、1年の半分は韓国、残り半分は日本で過ごすという、「重光武雄・辛格浩」というその後40年にわたるシャトル経営がこの頃から始まる。

韓国政府は重光の「タイムマシン経営」に着目するようになり、朴正熙大統領の「開発独裁」の下で、石油化学、建設、ホテル経営、流通へと事業拡大を続け、韓国でコングロマリットを築いていくことになる。

その先鞭となるのが、前号で紹介した半島ホテルの買収で、朴正熙大統領から「ぜひ、ソウルでホテル経営をやってもらいたい」と懇願されたことは有名である。

(続く)

(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2022年1月20日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。各月550円です。

北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で伝える宮塚利雄さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー

初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

2021年12月配信分
  • 【号外076】<感謝>宮塚コリア研究所12.18講演会@新宿レポート-令和3年12月31日(12/31)
  • 【号外075】<ライブ配信>30日午後5時からミニライブ-令和3年12月28日(12/28)
  • 【号外074】18日講演会アーカイブ公開。30日甲府ライブでの質問募集-令和3年12月26日(12/26)
  • 【147】金正恩政権10年、今後存続を左右するもの。焼肉店と冷麺の歴史-令和3年12月20日配信(12/20)
  • 【号外073】まぐまぐ大賞2021時事解説2位受賞。チュッペ読者特典提供-令和3年12月17日(12/17)
  • 【号外072】18日講演会ライブ紹介ページと田月仙さんのオペラ公演-令和3年12月14日(12/14)
  • 【146】北朝鮮イカゲーム見た高校生が終身刑。高知講演会内容報告ほか-令和3年12月5日配信(12/5)

2021年12月のバックナンバーを購入する

2021年11月配信分
  • 【145】日本は真剣に専守防衛の議論をするべき時。まぐまぐ大賞の応援を-令和3年11月20日配信(11/20)
  • 【144】北朝鮮経済悪化で登場のトンピョとは?映画ザ・モールでわかること-令和3年11月5日配信(11/5)
  • 【号外070】田月仙さんのザ・ラストクイーンを見て(テキスト形式)-令和3年11月1日(11/3)
  • 【号外069】田月仙さんのザ・ラストクイーンを見て(HTML形式)-令和3年11月1日(11/3)
  • 【号外068】高知講演会のまぐまぐ!Live中止と号外配信について-令和3年11月1日(11/1)

2021年11月のバックナンバーを購入する

2021年10月配信分
  • 【号外067】ザ・モール公開と高知と東京の講演会は読者特典で無料参加-令和3年10月31日(10/31)
  • 【143】北朝鮮金正恩を訴えた日本初の裁判。なぜミサイル連発するのか?-令和3年10月20日配信(10/20)
  • 【号外066】高知支部講演会のお知らせ\11月20日(土)/-令和3年10月14日(10/14)
  • 【号外065】宮塚寿美子の映画「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。」を見て-令和3年10月7日(10/7)
  • 【142】北のミサイルをスルーする文在寅。どうする岸田新総理?-令和3年10月5日配信(10/5)

2021年10月のバックナンバーを購入する

2021年9月配信分
  • 【141】北朝鮮のミサイル開発に日本は?疑惑の金正恩のある一瞬-令和3年9月20日配信(9/20)
  • 【号外064】北朝鮮が新開発した長距離巡航ミサイル発射の意図(HTML形式)-令和3年9月16日(9/16)
  • 【号外063】伊藤孝司写真展「平壌の人びと」特別レポート(HTML形式)-令和3年9月6日(9/6)
  • 【140】金正恩が軍統帥権を喪失か?改定された党規約から読み解く-令和3年9月5日配信(9/5)
  • 【号外062】スマホアプリで視聴できる28日のライブ配信動画の公開について-令和3年9月4日(9/4)

2021年9月のバックナンバーを購入する

image by: Ki young / Shutterstock.com

宮塚利雄この著者の記事一覧

元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」 』

【著者】 宮塚利雄 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎月 5日・20日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け