国を二分するほどの大きな論争を呼んでいる、外国人労働者を巡る議論。その「発端」にも、毀誉褒貶相半ばするあの人物が大きく関係していたようです。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、竹中平蔵氏が進めてきた外国人労働者受け入れ政策を振り返り、その見解や発言内容を検証。さらに竹中氏の施策が日本社会に与えた影響について、批判的な立場を鮮明にしています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:移民問題にも竹中平蔵が絡んでいる
移民問題にも竹中平蔵が絡んでいる。少子化の穴埋めで外国人労働者を増やすという愚
昨今、移民の問題が日本の社会問題になりつつあります。不法滞在の外国人が増え、たびたび事件なども起こしています。この移民問題も、実はあの竹中平蔵氏が大きく絡んでいます。
竹中平蔵氏は、かねてから少子化対策として「外国人労働者を増やす」ということを主張していました。たとえば小泉内閣の置き土産ともいえる「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」には次のような文言が記されています。
優れた外国人研究者・技術者等の高度人材受入れ拡大に加え、現在専門的・技術的と評価されていない分野の受入れについて、その問題点も留意しつつ検討する。
つまりは、これまで専門職に限られていた外国人労働者の受け入れを、単純労働などにも広げようということです。
この文面だけを読むと、「まだ検討段階」ということになっていますが、当時「研修生」という名目ですでに単純労働の分野でも外国人労働者を受け入れていました。
そして、小泉内閣はその方針として、「研修制度」を最大限活用すべし」ということを暗に示しているのです。
実際に、小泉内閣の時代に外国人労働者は激増しています。
小泉内閣は、外国人労働者について大きな制度変革をしたわけではありません。しかし、政権が「外国人労働者の増加」を推奨しているので、現場の規制は緩くなり、外国人労働者を増やそうという方向に傾いたのです。
小泉内閣前の2000年には20万人程度だった外国人労働者は、小泉内閣最終年の2006年には約40万人なっており、ほぼ倍増です。
その後もうなぎ上りに外国人労働者は増加した。現在の「日本の外国人労働者増加」の流れをつくったのも、竹中平蔵の構造改革なのです。
小泉内閣前後の外国人労働者の推移
1998年 19.0万人
1999年 19.1万人
2000年 20.7万人
2001年 22.2万人(小泉内閣時代)
2003年 27.4万人(小泉内閣時代)
2006年 39.0万人(小泉内閣時代)
2009年 56.3万人厚生労働省発表資料より
この記事の著者・大村大次郎さんを応援しよう
無責任な移民政策
2013年7月、竹中平蔵氏は、ジャーナリストの田原総一郎氏のインタビューで、外国人労働者について次のように答えています。
田原 「なんで移民の議論は出てこないんですか?産業競争力会議で移民の議論なんか出てこないじゃないですか」
竹中 「いや、私はしていますよ。他の人が賛成しないから出てこないんですね。私は産業競争力会議の議論で最後の最後まで言っています。『移民』という言葉だといろいろイメージするものがあるので、『経済成長に必要な人材確保と人材交流については、官房長官の下で長期の議論をする場所を作ってほしい』というふうに言っています」
~中略~
田原 「ただ、移民に対する反対の議論としては、『日本は島国なんだ、ヨーロッパみたいに山ひとつ川ひとつで国境が隔てられているなら元々いろいろな民族が入ってきているからいいんだろうけど、日本は島国で周りは海なんだから移民は無理じゃないか』という議論がありますね。これはどうですか?」
竹中「オーストラリアも島国ですよね。大きな島国なんですが、オーストラリアの最大の戦略は移民戦略です。イギリスにも移民はいます。だから、為にする議論ですね。とにかく『イヤだから』ということで島国だとか言っているのが見え見えの議論なので、もうちょっと考えたほうがいいと思いますね」
田原 「なんでそういう議論がまともにできないんだろう?」
竹中 「だから、私はそこを政治のリーダーシップで突破してほしいですね」
(現代ビジネス2013年7月16日配信記事「経済成長に必要な人材確保に移民受け入れの議論は不可欠」より)
これを読むと竹中平蔵の移民に関する考え方は、
「日本の少子化は移民で補えばいい」
「イギリスもオーストラリアも日本と同じ島国だけど移民がたくさんいる」
ということです。このように竹中平蔵氏の思考は、とにかく短絡的で薄っぺらいのです。
まず少子化は移民で補えばいいという考えが、まったくもって無責任すぎます。
派遣労働者を増やし国民の賃金を下げ、若者が結婚や出産をしにくくさせたのは、竹中平蔵氏なのです。彼が少子化を加速させた張本人なのです。
「少子化が進めば外国人労働者を増やせばいい?ふざけるな!」と思うのは筆者だけではないはずです。
この記事の著者・大村大次郎さんを応援しよう
「日本も英国も豪州も同じ島国」という薄っぺらな括り
また「イギリスもオーストラリアも、日本と同じ島国だけど移民がたくさんいる」という発想もあまりに薄っぺらい考えです。
イギリスはこの4~500年の間、世界中に植民地を持ち、現地の人々を支配していました。奴隷として酷使されていた人々も多数います。
イギリスには世界中の植民地から労働力や奴隷として連れてこられた人も多数おり、本国と植民地との間に人的移動もありました。だから移民が多いのは当たり前です。
オーストラリアも、これまた500年前からイギリスに侵攻され植民地化された島であり、イギリス移民によってつくられた国でもあります。ほかのイギリス連邦諸国との関係も深く、人的な移動も多いので当然のことながら移民が多いのです。
しかし日本の場合、数千年の間、大規模な移民が入ってきたことがなく、定住者がほとんど変わってきませんでした。日本と、イギリス、オーストラリアは状況がまるで違うのです。
日本という国には長い時間をかけて、「日本人が作り上げてきた社会、文化」があります。
日本では大金の入った財布を落としても、かなりの確率で戻って来ます。しかし、世界中のほとんどの国では、そうではありません。むしろ荷物からちょっと目を離しただけで置き引きにあってしまう国が多いのです。
日本と他の国々との文化、意識の差はかなり大きいものがあります。いきなり大量の移民を受け入れれば、日本社会と移民との間で齟齬や摩擦が起きるのは、ごくごく常識的に考えて「当然」のことです。
そういう「普通に考えれば当然わかること」がわからないのが、竹中平蔵氏なのです。
というより竹中平蔵氏はあえて「日本の伝統文化、伝統社会」を壊そうとしているのかと疑いたくなるほどです。
この記事の著者・大村大次郎さんを応援しよう
竹中氏の最大の罪は「ポンコツだったこと」
さらに竹中平蔵氏は前掲の2013年7月の田原総一郎氏のインタビューで次のような発言もしています。
毎年毎年、2030年を過ぎると日本の人口って100万人強減ってくるんですよ。
そうすると、たとえば私の学生、とくに女子学生なんかに「いちばん欲しいものは何か」と聞くと、ほとんどの人がメイドさんだって言いますね。だって自分が働くには必要ですから。
ただし、ルールをちゃんとしないと社会が混乱するというのも事実ですよ。
だから、ちゃんと議論しましょうと私は言っているわけで、無条件で受け入れるなんてことはできないですが、そんなふうにタブーを作っちゃいけないんですよ。
さっきの解雇の話もそうですが、タブーを作るべきではないし、タブーを作るのにひと役買っているのはメディアなんですよ。
(現代ビジネス2013年7月16日配信記事「経済成長に必要な人材確保に移民受け入れの議論は不可欠」より)
この発言に、仰天してしまった方も多いのではないでしょうか?
竹中氏は、現代の女子学生が一番欲しいものはメイドだと認識しているようなのです。一体、竹中平蔵氏は、どこの世界に住んでいるのでしょうか?
今の学生は3分の1が有利子奨学金にあえいでおり、当然のことながらほかの学生も決して豊かな生活をしているわけではありません。現代の大学生のアルバイト率は75%を超えており、過去最高なのです。
女子学生はバイトなどで忙しいので、誰かに家事をして欲しいなどと言ったことはあるかもしれません。が、竹中平蔵氏の考えているような「お金を払って雇うメイド」が欲しいなどと思っている女子学生など、日本にはほとんどいるはずがありません。
富裕層の一部の女子学生は、そういうことを思っているかもしれませんが、大半の女子学生はメイドを雇うなんて、想像もしていないはずです。
にもかかわらず、「女子学生=忙しい=家事を誰かにして欲しい」という情報を、自分の脳内で勝手に変換し、「女子学生はメイドを雇いたがっている」などと思い込んでいるのです。どこをどう勘違いしたらそういうメチャクチャな変換になるのでしょうか?
おそらく、竹中氏としてはまず「外国人労働者を増やすべき」という考えがあり、その考えに合わせて他の情報も自分に都合よく変換しているのです。
今の学生が、学費を賄うために奨学金を借りたり、バイトばかりしているということは、たびたびニュースでも報じられてきたことです。竹中氏にはそういうニュースはまったく入ってこなかったのでしょうか?彼は通信の遮断された絶海の孤島に住んでいるのでしょうか?
国民のみなさんには、ぜひ覚えておいてください。
我々は「日本の女子学生が一番欲しいものはメイド(有料の)」と思っているような人物、そういう大変な勘違いをしている人物を、日本の中枢に据え、政治経済を任せてしまったのです。
竹中平蔵氏は、その強欲さやモラルの無さが批判されることが多い人物ですが、彼の最大の罪は「経済政策者としてポンコツだったこと」なのです。
こんなポンコツ政治家に、我々は国の行く末を託していたのです。
(本記事はメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2026年8月1日号の一部抜粋です。「交際費で税務署に文句を言わせない方法」「税務署員の生活~3年おきの転勤~」「税務調査の秘密~違法行為を平気で行う調査官~」「ビジネスに役立つ経済理論~ピークエンドの法則~」を含む全文はご登録の上お楽しみください。初月無料です)
この記事の著者・大村大次郎さんを応援しよう
【ご案内】元国税調査官の大村大次郎氏が、事業者向けの専門記事をプラスした「特別版」の有料メルマガを新創刊しました。さらに高度な情報をお楽しみください。
【関連】財務省の秘密警察部門、国税庁が「国会議員の不倫調査」を得意とするワケ。全国民監視の強大権力、分割急務(作家・元国税調査官 大村大次郎)
image by: World Economic ForumCopyrigh World Economic Forum / Photo by Natalie Behring, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons