ロシア軍による侵攻の危機が依然として続くウクライナのゼレンスキー大統領と、「公明党のプリンス」と呼ばれるも貸金業法違反の罪で起訴された遠山清彦元財務副大臣。一見すると何の繋がりもないように思えるこの二人ですが、過去に意外な接点があったようです。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、そんな二人の関係を明らかにするとともに、現在までに判明している遠山被告の悪事の手口を紹介。さらに遠山被告と同じく口利き疑惑が指摘されている甘利明衆院議員の名を挙げ、こうしたタイプの人間が学ぶべき心得について論じています。
国民のしもべ
2月14日(月)、ネットニュースのヘッドラインのトップに、次の2つの見出しが並びました。
ゼレンスキー氏、バイデン氏にキエフ訪問を要請
遠山元財務副大臣、初公判で起訴内容認める
最初の見出しは、ウクライナのゼレンスキー大統領と米国のバイデン大統領が約50分間の電話会談を行ない、その中で、ゼレンスキー大統領がバイデン大統領に、緊張緩和のために数日中に首都キエフに来てほしいと要請した、というニュースです。
バイデン大統領と言えば、12日にロシアのプーチン大統領との電話会談が決裂した上、13日にはサリバン大統領補佐官を使って「今週中にもロシア軍が攻撃を開始する可能性もある」などと発言させてロシアを煽っている人物なのに、そのバイデン大統領がウクライナを訪問したら、緊張緩和どころか逆に緊張が高まると思ったのは、あたしだけ?…なんて、だいたひかるさんの懐かしいネタも散りばめつつ、ゼレンスキー大統領って、さすがは元コメディアンですね。
どんなにロシアがイケイケだとしても、バイデン大統領がウクライナを訪問中に攻撃を開始したら、これは速攻で米国との直接対決、第三次世界大戦へと発展してしまいますから、プーチン大統領は突撃ラッパを吹くことができません。つまり、ゼレンスキー大統領がバイデン大統領に「数日中のキエフ訪問」を要請したのは、緊張緩和のためではなく「人間の盾」として必要だからなのです。もちろん、そんなことはバイデン大統領も分かっていますから、ゼレンスキー大統領の要請への明確な返答は避け、お茶を濁しました。
アフガニスタン撤退を巡る大失態をキッカケに、支持率低下に歯止めが掛からなくなったバイデン大統領は、今回のウクライナ問題で強いリーダーの姿を示そうと、威勢よく拳を振り上げました。しかし、それは逆効果でした。米国のメディアが11日に実施した世論調査では、バイデン大統領のウクライナ対応について、過半数の53%が「米国はウクライナ問題から距離を置くべき」と回答したのです。
結局、振り上げた拳をおろすタイミングを見失ってしまったバイデン大統領と、もともと絶賛迷走中だったゼレンスキー大統領との「電話漫才」は、M-1グランプリなら1回戦敗退という下馬評通りの結果となってしまいました。
そんな「電話漫才」のツッコミ役、ウクライナのゼレンスキー大統領は、1978年1月25日生まれで44歳になったばかり。高校教師が大統領になって政治の腐敗と戦うというテレビドラマ『国民のしもべ』の主役を演じた元コメディアンです。記憶にも新しい2019年のウクライナ大統領選に無所属で出馬し、ドラマのように圧倒的な得票数で大統領に当選しました。フルネームは「ウォロディミル・オレクサンドロヴィチ・ゼレンスキー」、名前の一部がナニゲにケラリーノ・サンドロヴィッチさんぽいです。
さて、冒頭に戻って、2つめの見出しは、私利私欲のために新型コロナ関連などの融資を100回以上も不正に仲介した罪に問われている、公明党の元衆議院議員の遠山清彦被告(52)が、14日の初公判で起訴内容を認めた、というニュースです。
遠山清彦被告は、1969年6月5日生まれの52歳。創価学会員の家庭に生まれた遠山被告は、創価高校から創価大学へと進み、卒業後、2001年7月の参院選に公明党公認で比例区から立候補して初当選、後に衆院に鞍替えするという、公明党が丸抱えで育てて来た「公明党のプリンス」です。そして、そんな「公明党のプリンス」に白羽の矢を立てたのが、今や「政治犯罪の陰にこの人あり」と言われるようになった安倍晋三首相(当時)だったのです。
まったく関連がないように見えたヘッドラインの2つの見出しが、ようやくここで繋がるのですが、2019年5月20日、ウクライナでのゼレンスキー大統領の就任式に、安倍晋三首相の特使として派遣されたのが、この「公明党のプリンス」、遠山清彦被告だったのです。そして、この仕事をそつなくこなした遠山被告は、4カ月後の第4次安倍第2次改造内閣で、財務副大臣に任命されたのです。
公明党の組織力で30代で初当選し、40代で財務副大臣ですから、まさに「創価学会員としてのエリートコース」を歩んで来たわけです。そして、財務副大臣として主に金融関係を担当することになった遠山被告は、翌2020年9月までの1年間の就任期間に、日銀から各種公庫に至るまで、麻生太郎財務大臣の肝いりで人脈を広げて行ったのです。
結局、遠山被告は、この財務副大臣時代に構築した広い金融関係の人脈を利用して、悪事に手を染めることになりました。太陽光発電関連会社「テクノシステム」元顧問の牧厚被告(74)とグルになり、政府が100%出資する日本政策金融公庫の融資を、違法に仲介するようになったのです。牧厚被告によると「普通は融資の結果が出るまでに3カ月は掛かるが、政治家を使えば1カ月で結果が出る」とのこと。
同公庫の元職員によると、政治家の口利きがある融資の申し込みは、隠語で「紹介案件」と呼ばれていて、一般の申し込みより審査時間を大幅に短縮しているそうです。そして、融資の可否についても、こうした「紹介案件」は「(その政治家の)顔を潰さないように最大限配慮していた。可否を迷う場合は、常に前向きに判断していた」とのこと。
日本政策金融公庫の広報は「誰の紹介でも特別な取り扱いをすることはない。審査結果や審査のスピードが変わることはない」とマニュアル通りの説明をしました。しかし、過去に口利きをしたことがあるという元国会議員によると、公庫には政治家担当の職員がいて、政治家や秘書による口利きは、昔から日常的に行なわれて来たと言います。
国民の税金が原資の公庫なのに、民間企業からワイロを貰って政治家が口利きをすれば、一般の申し込みより優遇される。あたしは、この手の不正を耳にするたびに、未だに1ミリも説明責任が果たされていない、自民党の甘利明氏のUR(都市再生機構)口利き疑惑を思い出します。元公明党の遠山清彦被告しかり、自民党の甘利明氏しかり、あたしはこういう人たちこそ、ウクライナのゼレンスキー大統領が主演したテレビドラマ『国民のしもべ』を観て「公僕の何たるか」を一から学ぶべきだと思います。
(『きっこのメルマガ』2022年2月16日号より一部抜粋・文中敬称略)
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