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何かが違う。日本の少子化対策がほとんど効果を上げていない理由

社会問題となって久しい我が国の少子化。政府による対策も虚しく、出生数は低下の一途を辿っています。なぜ日本の少子化対策は奏功しないのでしょうか。その理由として、「攻め場所」の違いを挙げるのは、健康社会学者の河合薫さん。河合さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で今回、政府の少子化対策が夢物語を追うだけという状況にある根本原因を記すとともに、少子化対策と銘打つならば何より先に改善すべき点を指摘しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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“閉じゆく国”の未来

厚生労働省が公表した「人口動態統計(速報値)」で、2021年に生まれた子供の数は、84万2,897人で過去最少だったことがわかりました。2020年の3.4%減、6年連続で過去最少記録を更新中です。

総人口に占めるこどもの割合は、1950年には3分の1を超えていましたが、1965年には約4分の1になりました。その後、第2次ベビーブーム期(71年~74年)の出生児数の増加によって僅かに上昇したものの、1975年から再び低下を続け、1997年には65歳以上人口の割合(15.7%)を下回って15.3%となり、2021年はたったの11.9%です。

10人に一人って。自分が子供の頃の「子供の多さ」をイメージできない程の少なさですよね。

最初の総合的な少子化対策「エンゼルプラン」が、まとめられたのは1994年。遡ること28年も前です。つまり、日本の少子化対策はほとんど効果をあげられていないのです。

むろん政治家さんたちも、28年間、指をくわえて見ていたわけではありません。2013年には「少子化危機突破タスクフォース」なるものを立ち上げ、少子化対策は若年層にターゲットを絞ると断言し、若年層の恋愛調査の実施、婚活イベントへの財政支出、恋愛を語る会、若年の新婚世帯の住宅支援、などを順次実施していました。

2014年には自民党が「人口減少対策議員連盟」を発足させ、今年3月、森雅子首相補佐官が会長に就任。その他にも「婚活・ブライダル振興議連」の会長を三原じゅん子氏が務めるなど、「どうにかせねば!」と動いてはいる。

が、“何か”が違うのです。「産めや、増やせや、でもって働けや!」と、戦時中並みの圧力をかけらている若者たちの実態を本当にわかっているのでしょうか。

男女の出会い、妊活、子供の教育費問題…。“そこ”を攻めるだけで、希望出生率1.8を達成できると本気で考えているのか?甚だ疑問です。

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そもそも2017年にベストセラーになった『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』(河合雅司著)によれば、「2020年には50歳以上の人口(3,248万8,000人)が、0~49歳人口(3,193万7,000人)を追い抜き、日本女性の過半数が出産期を終えた年齢になる」とのこと。

政府は合計特殊出生率を計算する際に、49歳までの女性人口を「母親になり得る」とカウントしているので、希望出生率の実現には、未来の母親たちが、ひとりで5人も6人も生む必要がある。マジか!と普通なら考えるわけですが、「子供4人産んだら表彰!」とどなたか発言し、炎上したことがありましたっけ。ま、4人でも足りないんですけどね。

つまり、少子化対策はず~と「夢物語」を追い続けている。そう思えてなりません。

足元をみれば、男性の生涯未婚率は、1985年の3.9%から2020年には25.7%へと6.5倍に増加し、「4人に1人が結婚していない」リアルが存在します(2020年の国勢調査)。

氷河期世代を含む「35~44歳の単身世帯」の所得のボリュームゾーンが、1994年の500万円台から300万円台へと200万円ほども減少したというリアルも。

少子化対策に取り組むなら、「結婚したくてもできない状況」にも手を打つ必要があるはずです。婚外子の議論も、ほとんど行われていません。

こういった問題に手をつけないまま「若者たちが結婚したくなる戦略」を続けることは「結婚したくてもできない人たち」の排除であり、それが結果的に「8050問題」や「中高年のひきこもり」につながるのです。

社会で起こる問題は例外なく、それまでの流れの過程で生まれたもので、ある日突然、卵から飛び出すわけじゃないのです。天気予報が外れるときは大抵、大気の流れを無視し、目の前の現象にとらわれたときだと私は経験的に学びました。

「少子化対策」と銘打つのであれば、蜘蛛の糸を張り巡らせるように「産める社会」を構築させる必要があるし、入ってくるカネ=収入問題にもメスを入れる必要があるのではないか。…まぁ、所詮戦力外の「出産期を終えたおばさん」の戯言ではありますが、「閉じゆく国」って、あまりに寂しすぎます。

というわけで、みなさまのご意見も、ぜひお聞かせください。

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image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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