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前提2:人間関係には、「妥協」する面がある

人間関係には妥協という面もあります。

知りあってから間もない頃には、一から関係を構築していかねばなりません。努力するうちに真の信頼関係を築けることもあるし、たとえそれが妥協の産物であったとしても、その場にあった人間関係を大事にしなければならない場合もあるのです。ビジネスシーンはとくにそうかもしれません。同じプロジェクトで、一つのものを作っているという共感は特別なものかもしれませんが、全員が同じモチベーションを持っているかと問えば、そんなことはありえないでしょう。

そういう意味で、人間関係における妥協はごく当たり前の状態だと理解しなければなりません。それを踏まえた上で、誠実な思いで言葉を発し、聞くことが必要になります。

ビジネスを例にとりましょう。ある人と同じプロジェクトのメンバーになり、同じ目標を与えられたとします。そこではお互いに考えをぶつけあい、相手の意見を聞くことを求められます。真剣勝負です。同じ目標を共有しているからこそ、ときには歯に衣着せぬ言葉が必要かもしれないし、もしくは相手を否定することも必要かもしれない。逆に自分が否定されることもあるかもしれません。それほど密に関係を構築したとしても、いざそのプロジェクトを離れて、会社の一社員とか、一同僚といった存在として向き合ったとき、学生時代の友人のような、無条件に密な関係が築かれているかというと、そういうことではないでしょう。

それなのに、ビジネス上の目標を共有して一緒に苦労を重ねた関係だから、その人が自分を理解してくれるかもしれないと考え、相手の状況を顧みずに自分のすべてを話しぶつけてしまったとしたら、それは非常に危険な行為です。

もしも、その人にプライベートな悩みを聞いてもらいたい、相談したい、意見をもらいたい、お互いにそれができるようになりたいと思ったら、一度仕事と切り離して、仕事とは違う場所で、違う手段で、関係を結んでいかなければならないのです。そこを混同してしまうと誤解や行き違いが起こり、やがてはせっかく築いたビジネス上の信頼関係にヒビが入ったりします。

仕事上でとても信頼できるということは、友人同士としても、もしくは同じ時代を生きるビジネス人としても、わかりあえる可能性が高いことを示しています。仕事への姿勢は共感できるけれども、友人としてはどうか。友人として尊敬しあえても人間としての価値観が同じとは限らない。人として仲よくできても、国に対する思いや、政治信念が違う、ということはよくあります。心からその人に相談したい、理解してもらいたいと思ったら、そのための人間関係を築く時間と努力が必要です。

一つの要素から信頼関係を構築することができたら、それだけでも貴重なことだと理解しましょう。仕事上で築いた信頼関係は仕事上のものです。その人物にプライベートでも自分の気持ちを伝えたいと思ったら、また別のルール上での関係を構築しなおす必要があります。

たとえば、共通の趣味があり、それを少しずつ話していくうちにお互いのこれまでの生き方もわかり、共感しあえるということはあるでしょう。時間をかけてそれを知るわけです。会話は、こうした人間関係の把握から始まります。距離を間違えない。機会を間違えない。その上でさらに人間関係を深めるには、さらに時間が必要だということをよく承知して、会話することが必要なのです。

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