話すのが苦手でもOK。人気ノンフィクション作家が伝授、コミュ力を高める「5つの方法」

 

方法3 小松成美実践!「鏡」トレーニング

何か真剣に伝えたいことがある、どうしても聞きたいことがある──。そんな場合、私はあるトレーニングをします。それは、その思いや質問を紙に書いて読む練習をするのです。しかも必ず鏡の前で行います。鏡の前で練習するとますます力が培われます。私はインタビューの前には、今でもこの鏡練習を行ってから出かけます。

そうすると、鏡の前でしゃべる人(自分)が見えます。その自分を注意深く見つめるのです。自分はこんな顔をしているんだ、こういうふうに口が動いているんだ、笑うと相手にはこう見えるんだ、と、じつにいろいろなことが発見できます。鏡の中の自分は、話し相手にとっての自分ですから、気になることは注意して直していきましょう。

前述したように、会話では表情も大切ですから、笑顔の練習もします。緊張すれば顔の筋肉は硬直しますから、笑顔は精神的なコンディションと豊かな表情を意識する上で不可欠です。鏡の前で話したり、笑ったり。ふと自分のやっていることを考えると恥ずかしくならないわけではありませんが、誰も見ていないのですし、このようなささやかな練習で会話力が磨かれるのですから、躊躇なく行ってください。

私が過去に実践してみた例をお話ししますと、2008年の北京オリンピックで銀メダルを獲得したフェンシングの太田雄貴さんへのインタビューでは、インタビューメモを作成し、鏡の前での練習をして臨みました。フェンシングという競技には知らない専門用語が多く、またフェンシングの動作を言葉で伝えることも不慣れです。質問や知りたい技術について紙に書き出し、ある程度すらすらと言えるまで練習しました。

取材当日。本物の太田さんを前にすると北京オリンピックでの興奮が蘇り、私はインタビューメモを読むどころか、その思いを一気に言葉にしていました。

「私は子供の頃、アレクサンドル・デュマの『三銃士』が大好きでした。アトス、ポルトス、アラミスの活躍に心を躍らせ、中でも若いダルタニアンはヒーローでした。彼らの銃士としての戦いを文章で読んで想像していたんですよ。でも今、太田さんが現れ、あの剣で銀メダルを獲得した。ダルタニアンの戦いを見たような興奮に包まれていました。『日本のダルタニアン!』と、太田さんを応援していたんですよ」

それを聞いた彼は、身を乗り出して言いました。

「そうでしたか。じつは、僕は父にフェンシングをすすめられたんですが、父が始めた理由も、ダルタニアンに憧れたからなんですよ。高校時代にフェンシング選手だった父は、息子にもフェンシングをやらせたくて、僕に『スーパーファミコン買ってやるから、フェンシングをやらないか』と言ったのです。それにまんまと引っかかってしまいました」

こうして会話が盛り上がったところで、私はインタビューメモに少しだけ目を落とし、彼の得意技や対戦した選手についての質問を始めます。完璧ではありませんでしたが、鏡トレーニングの効果が発揮できたと思います。

鏡トレーニングは決してあざといものではありません。思いを端的に伝えるにはどうしたらいいかを真剣に考えて行うものです。「こういうことを伝えたい、的確にわかるように伝えたい」という思いを胸に練習してください。アナウンサーのように正しい発声で話すことが目的ではありません。自分の言いたいことを自分の言葉で明瞭に伝える、意味がわかるように伝える、そのための行為です。
鏡トレーニングを繰り返していくと、他にも気づくことがあります。声は顎を少し上げたほうが通るなとか、胸を張ったほうが話しやすいとか、人から自分がどう見えているかにも意識が届きます。さらに、話し声や笑い声のトーンまで工夫できるのです。

(メルマガ『小松成美の伝え方の教科書-ノンフィクション作家に学ぶコミュニケーション術』2022年2月22日号より一部抜粋。続きはご登録の上、2月分のバックナンバーをご購入の上お楽しみください)

経営に、スポーツに、文化に。多岐に渡って、学びあるコラムを毎号配信

第一線で活躍するノンフィクション作家として、これまでたくさんのトップアスリートやトップ経営者の唯一無二の「人生」を取材してきた小松成美さんが、その経験をもとに、書籍だけでは書ききれなかった小松成美流のコミュニケーション方法や独自哲学をお伝えするメルマガ『小松成美の伝え方の教科書-ノンフィクション作家に学ぶコミュニケーション術』。5月中であれば、5月配信分のメルマガ全てが「初月無料」でお読みいただけます。この機会にぜひご登録ください。

メルマガコンテンツ内容

■成美のつぶやき
■今週のメインテーマ(毎号変わります)
■小松成美の質問コーナー(メルマガ内で、みなさまからの質問に回答します)

※内容は変更する場合がございます

月額:¥880(税込)/月
発行日:第2、第4火曜日(年末年始・祝祭日を除く)
形式:PC・携帯向け/テキスト・HTML形式

人気ノンフィクション作家・小松成美さんの新創刊メルマガ詳細・ご登録はコチラから

 

 

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。

人気メルマガ『小松成美の伝え方の教科書-ノンフィクション作家に学ぶコミュニケーション術』ですが、実はこれまでに配信されたバックナンバーも大変人気があることをご存じですか?本日は、過去1年分のバックナンバーのご紹介と、まぐまぐスタッフがオススメポイントをいくつかご紹介いたします!バックナンバーは月単位で購入できますよ。

▼2022年2月
・vol.20「すぐに実践できる!コミュニケーション力を高める、ある”5つの方法”とは?」(2/22)
・vol.19「挑戦をしつづける才能とは? ~葛西紀明選手の核心に迫ったあるインタビュー~」(2/8)

冬季オリンピックに関連し、スポーツ選手のインタビューを中心に紹介しています。2/8号では、レジェンド葛西紀明選手が何度もオリンピックに挑む理由、羽生結弦選手が最高の舞台で4回転アクセルに挑む理由にも触れ、何を目標としているのか、そのマインドが学べます。2/22号のコミュニケーション力アップの1つとして取り上げている「鏡」トレーニングは、会話力が磨かれるそうなので実践する価値がありそうです。

購入はこちら

▼2022年1月
・vol.18「自己との対話が、「成長」を生む! 体操・内村選手に学ぶ「実現力」」(1/25)
・vol.17「青学・箱根駅伝の快進撃に学ぶ、リーダーに必要な「巻き込み力」の育て方とは?」(1/11)

箱根駅伝が行われた1月は、青山学院大学の原晋監督のお話。1/11号では「魔法のことば」や指導哲学、そしてチームの成果を最大限に発揮する巻き込み力を紹介。ビジネスにも応用できそうです。1/25号では先日現役を退いた内村航平選手に触れ、人生の半分以上、日の丸を背負ったチャンピオンの苦悩を伝えています。内村選手からは「自分の理想は、描けているのか」など、自己との対話ポイントが学べます。

購入はこちら

▼2021年12月
・vol.16「日本の伝統・歌舞伎から学ぶ、「こころ」を動かす表現者とは?」(12/28)
・vol.15「一流は、目で対話する!?プロに学ぶ、ことばを使わない対話のテクニックとは?」(12/14)

12/14号では、ビジネスシーンや普段の生活でも活かせる会話のテクニックを紹介。相槌のコツと相手と目を合わせるコツ、相手と波長を合わせる方法など、5つのポイントが実践に役立ちます。松坂大輔選手、イチロー選手、中田英寿選手、五郎丸選手など大物アスリートの物語も。12/28号では、歌舞伎役者の中村吉右衛門さん、中村勘三郎さんから、一流の表現者とは何かを学ぶことができます。感情や情熱に真っ直ぐに向き合うことも、一流の表現者として必要なようですよ。

購入はこちら

▼2021年11月
・vol.14「強い言葉の作り方 ~人を惹きつける言葉のチカラとは?~」(11/23)
・vol.13「1秒も無駄にしない、核心に迫るインタビュー術(元内閣総理大臣・菅義偉編)」(11/9)

購入はこちら

▼2021年10月
・vol.12「人生のヒントが詰まったGReeeeNの生き様とは?~絆と想いと使命感~」(10/26)
・vol.11「心をツナゲル相談術~頑なだったGReeeeNとのキセキ~」(10/12)

購入はこちら

▼2021年9月
・vol.10「歌舞伎役者・中村勘三郎さんに学ぶ、「聞き手」の関係づくり」(9/21)
・vol.09「ジョン・レノンの言葉~相互理解に大切な10のこと~」(9/7)

購入はこちら

▼2021年8月
・vol.08「イチローと『鈴木一朗』~心の扉を開くには?~」(8/24)
・vol.07「中田英寿とイチローが教えてくれたこと」(8/10)

購入はこちら

▼2021年7月
・vol.06「中田英寿選手から学んだ、対話で大切なこと」(7/27)
・vol.05「人は誰しも、必ず人に伝えたいことがある」(7/13)

購入はこちら

▼2021年6月
・vol.04「2人の自分を感じる」(6/22)
・vol.03「会話が苦手なあなたへ」(6/8)

購入はこちら

▼2021年5月
・vol.02「一流に学ぶ、相手を想う力」(5/25)
・vol.01「コミュニケーションは感謝と準備から」(5/11)

購入はこちら

すべてのバックナンバーを見る

image by: Shutterstock.com

小松成美この著者の記事一覧

第一線で活躍するノンフィクション作家。生涯を賭けて情熱を注ぐ「使命ある仕事」と信じ、執筆活動を行うほか、テレビ番組でのコメンテーターや講演など多岐にわたり活躍中。

『アストリット・キルヒヘア ビートルズが愛した女』『中田語録』『中田英寿 鼓動』『中田英寿 誇り』『イチロー・オン・イチロー』『和を継ぐものたち』『トップアスリート』『勘三郎、荒ぶる』『YOSHIKI/佳樹』『なぜあの時あきらめなかったのか』『横綱白鵬 試練の山を越えてはるかなる頂へ』『全身女優 森光子』『仁左衛門恋し』『熱狂宣言』『五郎丸日記』『それってキセキ GReeeeNの物語』『虹色のチョーク』『M 愛すべき人がいて』など。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 小松成美の伝え方の教科書-ノンフィクション作家に学ぶコミュニケーション術 』

【著者】 小松成美 【月額】 ¥880(税込)初月無料 【発行周期】 隔週火曜日

print
いま読まれてます

  • 話すのが苦手でもOK。人気ノンフィクション作家が伝授、コミュ力を高める「5つの方法」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け