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統一教会元信者のジャーナリストが辿る、教団内「ダブルしんたろう」の記憶

週刊誌記者やフリージャーナリストなどにより次々と暴かれる自民党議員と旧統一教会の深い仲。一つ新たな事実が掘り起こされると、眠っていた記憶が呼び戻されて、また新たな事実が浮かび上がることもあるようです。統一教会の信者だった過去を告白した詐欺・悪質商法ジャーナリストの多田文明さんも、徐々に記憶を取り戻している一人。創刊したばかりのメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』で今回伝えるのは、教団内の2人の“しんたろう”の扱いに関する記憶です。中でも石原慎太郎氏については、自ら関係を断ち切った形跡があり、関係清算を迫られている議員の参考になるその手法や理由を聞きたかったと綴っています。

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教団内における、ダブルしんたろうの記憶

記憶とは徐々に思いだすものです。私が旧統一教会に入信したのは、1987年ですから40年以上も前のことです。「当時のことを教えてください」とマスコミ関係者から言われますが、なかなかすぐに言葉が出てこないこともあり、お時間を頂戴することもありました。

石原慎太郎氏と新井将敬氏の教団内でのお話

最初に詐欺や悪質商法のジャーナリストとして活動する起点が、教団への入信にあったことを告白したのが、「モーニングショー」(テレビ朝日)で7月中旬のことです。その後も同番組に何度も出演させて頂き、一つ一つ過去の記憶を喚起しながら話をする機会が得られて、とても感謝しております。

さて今回、ARC TIMES 安倍氏の国葬は、なぜ統一教会を利するのか【多田文明・望月衣塑子・尾形聡彦】(2022/09/13)に参加させてもらいました。
ARC TIMES ○The News ●安倍氏の国葬は、なぜ統一教会を利するのか【多田文明・望月衣塑子・尾形聡彦】 – YouTube

教団関連の話をするユーチューブへの参加は初めてでしたが、そのなかで「統一教会としては、やりやすい政策を語ってくれる議員がいいが、石原慎太郎さんは言うことを聞かなかった」「統一教会で評判が良かったのは、新井将敬さん」という話をさせて頂きました。

その後、ツイッターの書き込みから、慎太郎氏が勝共連合から過去に支援を受けていて『鳥よ翼をかして』(1985年)の映画のエンドロールにも、岸信介、石原慎太郎、伊藤正義など、勝共連合のそうそうたる議員メンバーらが名を連ねていることをお伝えしてもらい、「ああ、そうだった」「“ダブルしんたろう”だった」と入信当時に言われていたことが、さらに鮮明に思い出されました。

記憶が紡ぎ出た、ダブル「しんたろう」

『鳥よ翼をかして』は、北朝鮮に渡った日本人妻の悲哀をテーマに、今も帰国できずにいる日本人が多くいることを訴えかける映画で、1985年に公開されました。この映画は、教団内で何度も見せられています。

当時、有名若手俳優であった沖田浩之が主演したことに加えて、原作は旧統一教会員「池田文子」によるもので、内部では教団関連の映画とされていたからです。

「池田文子」の本名は、江利川安栄氏で、過去に一度、話をしたことがありますが、教団のためなら何でも行うような、元気の良いおばちゃんの印象です。その後、日本統一教会の第7代会長となり、ずいぶん出世したものだと思っていましたが、後に教団の分派の方に流れて、現在はサンクチュアリ教会の会長をしているとのことです。

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いずれにしても、この映画は統一教会系の映画として、信者らは認識していました。さて、石原慎太郎氏は、エンドロールに名前を連ねるほどの教団との仲のようでしたが、90年代になって、慎太郎氏への批判が聞かれるようになりました。

ある幹部が「あれはだめだ。言うことを聞かない」と言うのです。 その言葉には(教団からの)恩を裏切ったというニアンスも聞こえていました。

その一方で、同じ選挙区に出馬する新井将敬議員は、統一教会の教えを聞いており、信者らはこちらに投票するように盛んに言われました。その後当選して、彼がテレビ出演する姿を見せられて、教団の政界進出がまた一歩近づいたと思ったものです。

また、同じ“しんたろう”でも安倍晋太郎氏に寄せる教団の期待は、とても大きいものでした。もしかすると当時言われたのかもしれませんが、はっきりしないので、私の考えとして話しておきます。

アベルが、安倍晋太郎氏、カインが、石原慎太郎氏!?

アベル(神近い存在)が安倍晋太郎氏で、カイン(神から遠いサタンに近い存在)石原慎太郎氏らの議員の位置づけだったように思います。

そもそも教義上、神の子になるには、アベルにカインが従わなければなりません。しかし、石原慎太郎氏は、ご存じのように物事をはっきり言われる方なので、もしかするとこうした「教祖の言葉や、教義に従う」ことに対して反発したのかもしれません。

ところが、政治的にアベルの立場にあった安倍晋太郎氏は、91年に亡くなりました。教団関係者の落胆ぶりは、相当なものでした。90年代には、慎太郎氏と教団の関係は破談していたと思われます。ここからは私の想像ですが、彼が教団の本質にある「反日感情」などに気づいたからなのではないかと思っています。

本当に、教団との関係を議員らは断ち切れるのか?

今、議員らが自民党の方針に沿って「旧統一教会の関連団体から一線画す」と口では言っています。本当に、それができるのか、多くの国民が疑問に思っており、それが岸田内閣の支持率低下にもつながっていると思っています。

ある意味、石原慎太郎氏は、教団と手を切ったさきがけではないかと感じています。ご存命であれば、ぜひとも政治家における旧統一関係者との手の切り方などの話を聞きたかったところです。

今後は、過去に教団との深い関係を持っていたけれども、完全に手を切った元信者的議員の見解を聞きたいところですが、果たして、そうした人はいるのでしょうか。

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image by:Koshiro K/Shutterstock.com

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悪徳業者などへの潜入取材した数は100ヶ所以上。数々の現場経験と被害者への聞き取り取材から、詐欺・悪質商法に詳しいジャーナリストとして一線で活動し、多数のテレビ・ラジオに出演している。現在はヤフーニュースのオーサ・公式コメンテーターとして、コメントやニュース記事を執筆中。消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」(2017年~18年)の委員も務めた。雑誌「ダカーポ」にて、悪徳商法に誘われたらついていく連載を担当。それをまとめた著書「キャッチセールス潜入ルポ~ついていったらこうなった」(彩図社)はフジテレビで番組化され、ゴールデン枠の特番で第8弾まで放送された。新刊11月予定「信じてみたら、ダマされる。~元統一教会信者だから書けたマインドコントロールの手口」(清談社清談社Publico)

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【著者】 多田文明 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 14日・28日

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