深夜の東京の道路を走り抜けるタクシーや大型トラック。その運転手さんたちの孤独を癒やしてくれる一軒の立ち食いそば屋さんが人気となっていることをご存知でしょうか。今回のメルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、その立ち食いそば店のマーケティングと、お客が他県から足を運ぶほどの人気の理由を紹介しています。
真夜中の孤独を癒してくれる、深夜営業の立ち食いそば屋の灯り
暗闇の中に、煌々と輝く灯り。そして、辺りに漂うだしの香り。
ここは、東京都板橋区にある、深夜営業の立ち食いそば屋さん。
幹線道路沿いでありながらも、深夜なので、かなりの暗さに包まれています。
夜10時から朝7時まで営業。
深夜にも関わらず、たくさんの人がやって来ます。
1年中扉が開いたままのお店は、立ち食いカウンターと外にあるテーブル2つ。
暑さ寒さを完全に無視した店舗スタイル。
夏は外で夕涼みという感覚なのでしょうか。冬は温かいものを食べるので大丈夫ということなのでしょうか。
考えれば、フルオープンなお店の造りなら、屋台と同じ。ならば、納得できます。
このお店は、30年前から営業。
現店主のお母さんが、10年ほど別の人が営業していたお店を引き継ぐカタチで開店させています。
なので、厳密には創業40年となります。
では、なぜ深夜営業なのでしょうか。
実は、店主もわかっていません。母親から聞いたこともなく、その母親も創業者からは聞いていないようです。
ただただ深夜営業のお店を引き継いだだけ。
深夜にお客さまが来るから、そのまま営業を続けているのです。
このお店には、そば・うどん・カレーライスがあり、トッピング用の天ぷらなどの種類が多く、お客さまに喜ばれています。
天ぷらは、特に人気がある「春菊天」や「紅生姜天」、「アジ天」「ナス天」「ゲソ天」「ちくわ天」「鶏天」「きんぴら」など。
他に、「コロッケ」「山菜」「とろろ昆布」「たまご」「わかめ」「たぬき」「きつね」など。
深夜営業でありながら、これだけの品揃えはお見事です。
次から次へと天ぷらを揚げているのですが、それほどお客さまが多いということです。
どのお客さまも天ぷらを数種類トッピングしています。
天ぷらが、お客さまを呼び込んでいるのかもしれません。
ここにやって来るお客さまは、タクシードライバーをはじめ、さまざまな人たち。
真夜中に集まって来るのは、ただ空腹を満たすだけではないようです。
深夜走るタクシーの運転手さんは、お客さまを乗せていたとしても、暗い道を走っていると、もの悲しい寂しさを感じるものです。
そんな中で人のいる灯りを見ると、吸い寄せられるようにタクシーを止めて、その灯りに向かって歩き出します。
それが、深夜の立ち食いそば屋さん。
トラックドライバーも夜走ることが多く、お腹が空けば、食べられるお店を探します。
しかし、昔のように24時間営業のお店は少なくなり、コンビニさえ、夜11時には閉店したりします。
そこで見つけるのが、このお店の灯りです。当然のように誘われて、注文することに。
人のいない時間帯に散歩をする人も、予想に反して多く、その途中で灯りと香りに引き寄せられる人もいます。
夜遅くまで働くサラリーマンや飲み屋帰りに立ち寄るサラリーマンもたくさん。
単純に、美味しいお店だからと、わざわざやって来る人も。
毎週、他県から通う人もいます。
そして、夜勤明けの人。
朝早く開いているお店はあまり無く、非常に有り難い存在となっています。
ドライバーたちは、基本ひとりの仕事。時には、孤独を感じることもあります。
飲み歩くサラリーマンは、仲の良い人と離れたくないもの。
残業の多いサラリーマンは、仕事に疑問を持ちながらも、ひとりで頑張っています。
夜勤明けの人は、帰って寝なければならず、一緒に飲んだり食べたりする人が少なく、寂しさを感じています。
真夜中に灯りを探す人は、どこか寂しさを抱えていて、ホッとする場所、心の温まる場所を求めています。
そんな人たちが出逢ったのが、この立ち食いそば屋さんなのです。
そこには、美味しいものがあり、お店の人との他愛もない会話があり、
時には他のお客さまと話をしたり。
暗闇の中の、小さいながらも明るい空間。
そこには、心を温めてくれる何かがあります。
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