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ディズニーに逆ギレ。米大統領選有力候補・フロリダ州知事のヤバい素顔

全世界で絶大な人気を誇るディズニーリゾートですが、フロリダの聖地が思わぬ形の「報復」を受ける事態となっています。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』では著者でジャーナリストの伊東森さんが、ある州法を巡りフロリダ州知事とディズニー社の間に勃発した騒動を取り上げ、その背景を解説。さらに「夢の国」を敵に回した州知事の人となりを紹介しています。

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ディズニーvsフロリダ州知事 思想対立が激化 「ゲイと言ってはいけない」法案 デサンティス州知事とは? ミニ・トランプ 2024年大統領選候補者としても注目 

アメリカで“思想対立”が激しさを増し、各企業も対応に苦悩している。LGBTQなど性的少数者に関するフロリダ州の政策を批判したディズニー社に対し、州知事は「報復」措置に出た。

他方、保守とリベラルの分断が深まるなか、企業が

「沈黙は金」(*1)

を貫くことも、経営リスクとなってきた。

「挑発と見なし、反撃する」(*2)

フロリダ州のデサンティス知事は4月、ディズニーへの優遇税制を含む特区の制度を廃止する法案に署名。この制度は1960年代に定められた、テーマパーク建設のための源流だった。

デサンティス州知事は、共和党の保守派であり、トランプ前大統領とも近いことで知られる。ディズニーとの確執は、LGBTQの話題を小学校の授業で取り扱うのを規制する、

「ゲイと言ってはいけない法」

と呼ばれる州法が発端となった。それに対し、州法成立時、ディズニーは、

「署名されるべきではなかった」(*3)

とする。ただ、当初、ディズニーは態度を明らかとはせず。

「政治との間合いを取って、水面下で懸念を伝えるのが望ましい」(*4)

と考えたとされる。しかし会社側が声を上げないことに対しての従業員の不満がSNSで拡散、方針転換を余儀なくされた。

目次

「ゲイとは言ってはいけない」法案

今年1月、フロリダ州において、子どもたちが学校で性的指向や性自認、LGBTQに関する議論をすることを禁止する法案が可決された。

「教育における親の権利」に追加される形で可決された、通称「Don’t Say Gay(ゲイと言ってはいけない)法案」は、初等教育(幼稚園~小学3年生まで)を対象に、性的指向や性自認に関する学校での議論や、生徒の年齢や発達に見合わない議論を厳しく制限し、違反した場合には、親は学校や教師を「訴える」ことができる。

とくに、「親の権利」を問い、学校教育に“介入”するやり口は、アメリカの保守派がたびたび使う手だ。近年では、「アメリカの歴史」における人種問題について学校が果たしてきた役割を、「親が」反発してきた。

法案を支持する議員たちは、中間選挙と

「この法案によって、教師に告げ口された子どもたちが自殺へと追いやられる可能性があることに無関心な」(*5)

支持層だけだ。

ただ、学校現場でLGBTQについて議論することを禁止または制限する州法は、「同性愛者推進禁止」法とも呼ばれ、珍しいものでもない。

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州知事、ディズニーへの税制優遇措置の廃止で対抗

またフロリダ州は4月22日、フロリダ州内でテーマパークを運営するディズニーに対し、税制の優遇措置を含む特区の制度を廃止する法案を成立させた。

アメリカメディアは、保守的な性教育についての州法の成立に反発したディズニーへの「報復」であると伝えた。優遇措置は、来年6月1日より廃止される見通し。

特区は1960年代から州法で定められ、税制の優遇措置を受けられるかわりに広大な敷地内の消防や水といった社会インフラを、ディズニーが整備するという、「自治区」のような制度。

優遇措置がなくなれば、テーマパークの収益性や設備の更新に影響する可能性もあるという(*6)。

ディズニーのボブ・チャペック最高経営責任者(CEO)は当初静観していたが、一部従業員や世論の批判を受けて反対を表明。知事がこれに報復するために州議会に特権の剥奪を要請した。

ただ、アメリカメディアは、かつて“蜜月”とされた共和党と大企業との関係悪化の象徴であると指摘(*7)。あるいはCNNテレビは、

「人手不足が深刻化する中、従業員の立場を代弁する方が経営にとっては有益だ」(*8)

とする有識者の見方を示す。

デサンティス知事とは? ミニ・トランプ 2024年大統領選候補者としても注目

フロリダ州の知事デサンティス氏は、11月の中間選挙で再選を狙うとともに、2024年のアメリカ大統領選の共和党候補として、トランプ氏とともに有力視。

トランプ前大統領顔負けの「分断政治」でリベラル派を徹底攻撃、その姿は「ミニ・トランプ」とも称されるほど。

「川の対岸へ、突き飛ばしてしまえ」

8月下旬、デサンティス知事は演説で国立アレルギー感染症研究所長のファウチ氏を罵倒すると大歓声が上がる。

同じころには、日本でも大ヒットした『トップガン』の(TOP GUN)をまねた「TOP GOV」という」タイトルロゴの選挙キャンペーンの動画を公開。「GOV」というのはGovernor(知事)の略で「最高の知事」という意味。

知事は、トム・クルーズと同じようなフライトジャケットを着て動画に登場した。

下院議員を経て、2019年に州知事に就任。差別的との批判もいとわず、常にリベラル寄りの政策を非難、民主党との対決をあおってきた。

中間選挙と同日に実施されるフロリダ州知事選では、対立候補をリード。2024年の大統領選では、民主党のバイデン大統領と争う場合、トランプ氏よりも有力な共和党候補になるとの世論調査結果も出ている。

引用・参考文献

(*1)ニューヨーク=共同 西日本新聞 2022年6月9日

(*2)ニューヨーク=共同 西日本新聞 2022年6月9日

(*3)ニューヨーク=共同 西日本新聞 2022年6月9日

(*4)ニューヨーク=共同 西日本新聞 2022年6月9日

(*5)Justin Kirkland「フロリダ州の『ゲイと言ってはいけない』法案は、子どもたちの命を奪う可能性がある」エスクァイア日本版 2022年3月2日

(*6)花房良祐「フロリダ州、ディズニーの税優遇廃止 LGBTQ巡り対立」日本経済新聞 2022年4月22日

(*7)ニューヨーク=共同 西日本新聞 2022年6月9日

(*8)ニューヨーク=共同 西日本新聞 2022年6月9日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年10月15日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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