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A man holding an empty white paper banner in his hands at a protest on the street. Protest. People. Politic. Civil. Conflict. Courage. Impact. Independence. Justice. Liberty

中国の民主化に光。在日中国人から見たゼロコロナ「白紙革命」という希望

中国では、新型コロナウイルスの感染拡大から3年が経過し、若者たちが率先して「白紙革命」を起こしました。今回のメルマガ『黄文葦の日中楽話』では、2000年に来日し現在は日本に帰化されている中国出身の作家・黄文葦さんが、その革命について詳しく解説。白紙革命がもたらした民主主義の力とはどのようなものだったのでしょうか。

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コロナと民主主義の曙光

19年前、当方が書いた修士論文のテーマは『中国マスメディアにおける批判力の「量」と「質」』。主にSARS報道を例として、中国マスメディアの姿勢を分析した。数ヶ月間、当方がSARS報道を研究していた。広東地方のメディアがかつて情報公開に消極的な当局の姿勢を批判した。当時、政府が情報隠蔽をした…。

残念ながら、十数年に経っても、コロナ初期、政府の隠蔽の体質が変わっていなかったようだが、コロナの感染拡大から3年、つい中国の若者たちが率先して「白紙革命」を起こし、全国封鎖の状況を変えてきたことが、確かに慰めである。コロナと民主主義は、これからの中国研究の重要なテーマであるかもしれない。

今年11月、大勢の一般の中国人が街頭に出て、中国の新型コロナ流行時の高圧的な封鎖や、中国全体の弾圧に不満を表明したのである。ただし、「言いたいことが言えない」ので、多くの人が白い紙を掲げていた。それが「白紙革命」の由来だ。

警察は多くのデモ参加者を拘束し、人々が集まりそうな場所を封鎖したが、それでも中国政府は世論に屈することを余儀なくされた。12月7日、「ゼロコロナ政策」の緩和を明確に発表した。中国指導部は抗議活動を認めない一方で、自らの判断で行動しているように見せかけ、国民を弾圧してきたコロナ政策の過酷な制限の多くを終了させた。

隔離はより短期間に、より対象を絞って行われるようになり、コロナに陽性反応を示した軽症者は、隔離に連れて行かれるのではなく、自宅で過ごすことができるようになる。PCR検査は、ほとんどの公的な場では、もはや定期的に必要なものではない。症状を隠せないように規制されていた風邪薬やインフルエンザの薬が、再び買えるようになる。

「白紙革命」は、一定の効果を発揮した。中国人はようやく、権力に声を届けるという民主主義の力を味わったのである。もちろん、政府の対応は、独裁を終わらせたいという大きな願いに応えるものではなかった。独裁体制が続いており、街頭抗議行動で拘束された人たちは、今も拘束されているだろう。状況は依然として芳しくない。

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歴史を振り返ってみよう。1956年、毛沢東は「百花斉放」の方針を打ち出した。思う存分言いたいことを言おうということ。しかし、毛沢東は一部の知識人から批判を受け、ショックを受けた。その結果、大々的な取り締まりが行われることになった。

1976年4月、党の強硬派に対する民衆の抗議が改革派の一人であるトウ小平の解任につながり、1978年と1979年には「民主の壁」による自由の拡大を求める声が魏京生などの民主活動家を投獄し、1986年には自由化を求める学生の抗議が自由化派の共産党指導者胡耀邦の失脚を招いた。

1989年の天安門事件は、より大きな自由を求める広い呼びかけであったが、結果として鎮圧、長期間の投獄、強硬派の台頭により、この国はさらに自由でなくなってしまったのだ。

したがって、今回、中国政府が抗議行動に屈せざるを得なかったことは、歴史的な一里塚のように感じられるが、この政策転換には代償があるかもしれない。おそらく、より強力なレトリック弾圧の方針が採用されるだろう。中国人の民主化と自由への道のりは平坦ではない。

中国の指導者は、イデオロギーの領域で自らを修正することが極めて困難である。その結果、中国の権威主義的な支配者の監視のもと、高学歴の都市部中産階級と若い知識人が台頭し、より深く国の政治に関わりたいと願いながらも、勿論、今のところ、政府によってそれが許されなくなった。

改革開放の時代、中国は多くの国民の所得を上げることで、多くの国民を「買収」したといえる。人々の関心を「お金」に集中させることに成功した。政府が人々の生活レベルを向上させることは認めるが、人々が完全に自由な声を出すことは認めないという暗黙の了解があったのだ。

厳しいコロナ対策の中、若者を中心とした勇気ある抗議者たちが確かに中国の国策を変えた。ウイルスを根絶できないのと同様に、権利に対する彼らの広範な欲求も消滅させることはできない。

いつか、中国の指導者は、こうした民衆の自由願望に応えなければならない。習近平氏はこれからも政権を維持しているが、今年の抗議活動で中国人が得たものは、そのような願望がいつでも人たちの心で輝いていることに違いない。民主主義の曙光が確かに見えてきた。

今まで心の中に隠して、あえて言わなかったことが、突然言えるようになったという事実に、多くの人が目を覚ます。最高権力者に対する不満が表明できるようになった。そして、覚醒した人々の数は、これからも増え続けるだろう。

お金よりも大切なもの、例えば信仰や自由などのために戦う価値があることをようやく知ることができた。これは、今年の中国の人々にとって大きな前進である。封鎖から社開放へ、またさまざまな新しい問題を生み出すとみられる。願わくば、中国人もまた、民主主義の精神と手段によって、それらを解決することができるようになればいい。

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image by: Shutterstock.com

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在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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【著者】 黄文葦 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 第1月曜日・第3月曜日(年末年始を除く) 発行予定

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