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なぜ、年金の受給開始年齢は女子のほうが5年間も早いのか?

ご自身の老齢年金がいつ受給されるのか、確認したことはありますか? 実は、男女でも違いがあるので注意が必要な部分もあるそうです。その理由を詳しく教えてくれるのは、メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさん。なぜ、男女差が生まれたのか、年金の歴史を含めて解説しています。

なぜ厚生年金受給開始年齢は女子の方が5年有利になっているのか(復習)

自分の老齢の年金がいつ受給権が発生するのかというのは、その人の生年月日を見る必要があります。

結構区分けされてるのでちゃんと確認しないといけない部分ではあります。

僕はある程度暗記してはいますが、自分の記憶のみに頼らずに年金受給権発生年齢の表をその都度確認します。

なにせ、1日違いで年金貰うのが1年違ったりするからですね。

もしAさんは62歳から年金請求して受給できますよーとか言っておきながら、うっかりミスで63歳からだったら恐ろしいです^^;

例えば女子の昭和35年4月2日生まれなら62歳支給ですが、昭和35年4月1日生まれだと61歳からになりますからね。間違いが許されないです。

経験上、基本的なミスが一番命取りになりかねない。

なのであまり自分の記憶を過信する事はしません。年金は受給開始年齢に限らず、他にも表で確認すべきものが多いですけどね^^

その都度、表で確認するという作業もとても大切な事であります。

なお、確認が必ずしも必要無い場合もあるんですが、それは男性が昭和36年4月2日以降生まれ、女子が昭和41年4月2日以降生まれの人ですね。

この年代以降の人は原則支給が完全に65歳となるので、確認しなくても65歳からの支給ですねって事になります(受給権が無い人は65歳とは限らない)。

まあ、完全に65歳受給となりますが、年金の繰上げ制度があるので60歳以降になれば好きな時に年金受給を開始する事が出来ます。

年金の繰上げは毎月の年金額が減ってしまうので、おススメはしませんけどね…。

逆に65歳から75歳まで年金受給を遅らせる事で、毎月の年金受給額を増やす事もできます。

よって、原則は老齢の年金は65歳支給ですが、本人の選択で60歳から75歳までの間で貰う事が可能になってるのが年金制度です。今の年金制度は受給開始年齢選択制度とも言える。

例えば年金が少なくなってもいいから早く貰いたい!っていう人は繰上げすればいいし、まだ在職して働いてるとか資金的に余裕があるので繰り下げで65歳より後に貰って、より金額の高い年金を貰うという選択ができるという事です。

さて、話は戻りますが皆さんは60歳に到達するとそろそろ年金受給が近づいてくるので、非常に気になる年頃となります。

令和5年中に60歳になる人は男性なら昭和38年生まれの人なので、その場合は厚生年金からの老齢厚生年金と国民年金からの老齢基礎年金も完全に65歳からの受給となります。

それに対して、昭和38年生まれの女子は厚生年金であれば63歳から受給する事が出来、65歳になるとそれにプラスして国民年金から老齢基礎年金の受給が始まります。

ん?同じ年齢なのに女子は早めに年金が貰えてるやん!と気付かれると思います。

先ほどの男子は昭和36年4月2日以降生まれは65歳から、女子は昭和41年4月2日以降生まれから65歳支給という点を見ると、男女で5年違いがあります。

気になさる人であると、女子は5年有利になっててズルいやないか!って指摘があったりします。

年金は女子に優遇していると…。

確かに実質的に有利になっています。

どうして5年間女子は有利になっているのでしょうか。

これは年金受給開始年齢の引き上げしていくのが女子は過去に遅れたからです。

遠い昔の年金に遡ると、昭和29年になるまでは厚生年金は55歳支給開始でした。

ところがその頃から、日本がこれから工業化して発展していくと日本の高齢化は進んでいく事が見込まれていました。

まあ高齢者が増加するとその分、年金財源は大きく膨らむ事になるので、じゃあ年金の受給開始年齢を引き上げておこうか?という事になったわけですね。

そこでまず、男子の受給開始年齢を55歳から60歳に引き上げました。

16年かけて55歳から60歳に引き上げました。

逆に女子は55歳のままでした。

ココで疑問を持たれるのですが、平均的に長生きするのは男子より女子です。

女子の方が長生きするので、年金受給の財源も女子の方がかかりそうですよね。

じゃあ女子の方の開始年齢を引き上げたほうが良かったのでは?と思われそうです。

女子はなぜ55歳のままにしたのか。

それは、昭和時代は厚生年金に加入して働く女子なんてかなりの少数派だったからです。

更に、昔の厚生年金は20年の期間が無いと、1円も貰えなかったので女子が将来に厚生年金を貰うなんてとても少数派でした。将来に年金を貰える女子は少数だったから、今まで支払った保険料を一定率返す制度(脱退手当金という)も存在していました。

今現代ではもうほとんど聞かなくなりましたが、寿退職って当時は普通だったんですよ。退職したらそのまま家庭に入って家事育児に専念します。

そういう女子が再就職なんて考えられない時代でした。

家庭に入った女子が再就職なんて考えられない時代だったので、ますます20年の厚生年金期間を満たす可能性はありませんでした。

ひと昔前の20年以上(満了者という)を満たした厚生年金を受給してる女子って、僕もあまり見かけませんでした。

たまに見かけると、ちょっと感動したものです。

このように、厚生年金を受給するとすれば大半が男子なので、男子の厚生年金の受給開始年齢を引き上げたほうが効率はいいですよね。

その後、1979年になると女子の差別は撤廃していこうという女子差別撤廃条約が国際連合で採択され、締約国は差別撤廃義務が条件でした。

よって、日本はまず男女機会均等法を制定した後、条約を批准しました。

男女の差は撤廃していこうという事になっていくなかで、年金の受給開始年齢も同じにしていきましょうという事で、昭和60年改正の時に男女とも老齢の年金は65歳とするという事が決まりました。

ちなみに国民年金からの給付は昭和36年4月1日始まって以来、ずっと65歳支給でした。なので昭和61年4月1日から始まった老齢基礎年金はそもそも65歳から。

しかしながら、昭和60年時点で女子の厚生年金はまだ55歳支給であり、男子は一応60歳からとなっています。

厚生年金を65歳に引き上げるって事になりましたが、昭和60年時点ではその引き上げスケジュールは決まっておらず、実際のスケジュールが決まったのは8年後の平成6年改正時でした。

じゃあ平成6年に厚生年金60歳から65歳まで引き上げスケジュールが決まるまで何をしたかというと、とりあえず女子の55歳受給開始年齢を60歳まで引き上げようという事になりました。

昭和60年度から平成12年度までにかけて55歳から60歳に引き上げたのです。

平成12年度になっていく昭和15年4月2日以降生まれの人からは女子の厚生年金受給開始年齢は60歳へと到達しました。

このように女子は平成12年度からようやく60歳に引き上げ終わりましたが、女子引き上げ途中だった平成6年にはもう男子の60歳から65歳への引き上げが平成13年度から始まるって事が決まっていました。

平成6年から平成11年度の間はまだ女子は55歳から60歳への引き上げ途中だったわけですが、平成12年からようやく60歳に到達ー!となって、すぐにじゃあ男子と同じく平成13年から早速60歳から65歳まで引き上げましょうねとなると、ずーっと休みなく女子は年齢を引き上げられ続ける事になります。

息つく暇もないので、じゃあ平成6年に60歳から65歳への引き上げスケジュールが決まった時にまだ女子が平成11年度までは55歳から60歳への引き上げ段階だったので、その平成6年から平成11年までの5年間を女子の次の受給開始年齢の引き上げ期間の猶予として用いたわけです。

男子は平成13年度から60歳から65歳への引き上げが始まるけど、その5年間の猶予後である平成18年度から実際に女子の60歳から65歳への受給開始年齢の引き上げを開始しようと。

その時のズレが、現在の厚生年金受給開始年齢引き上げの5年のズレとなっています。

よって、男子は2025年に完全に65歳へ引き上がりますが、女子は2030年に65歳引き上げ完了となっています。

まあ結果的に女子が受給開始年齢で有利になっていますが、昭和時代はほとんど女子が厚生年金を貰えるなんて無かったので、特別に55歳受給開始年齢に据え置き続けていたという事が影響してしまったという事ですね。

ちなみに、厚生年金保険料率の面でも女子は男子より低かったので、そこも昭和60年改正以降統一していきました。

※ 追記

共済年金は年金受給開始年齢で男女差はありません。共済からの厚生年金は男女とも昭和36年4月2日以降生まれの人からは完全に65歳となります。

共済は昭和時代の末期は55歳支給でしたが、平成7年に60歳支給に男女とも引き上げまして、平成13年度からの60歳から65歳への通常通りの引き上げが始まりました。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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