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核兵器使用でロシア崩壊へ。プーチンが悟った唯一の戦争終結手段

最重要攻撃地点として戦闘資源を集中させる地域でも大苦戦を強いられるなど、ウクライナ軍の攻勢に押される一方のロシア。戦死した兵士の数も累計10万人を超えたと報じられていますが、プーチン大統領はこの戦争をどう進めていく腹積もりなのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ドネツクをはじめ各地区の最新の戦況を、さまざまな情報を踏まえつつ解説。その上で、プーチン氏が考えているであろう「唯一の戦争終結手段」を予測しています。

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ゼレンスキー大統領の前線視察と訪米で

ウクライナのゼレンスキー大統領が前線視察と訪米した。前線兵士に勲章を授与したことでの前線での攻勢と、共和党の議員から、ウクライナ支援の量を少なくして、米国民に支援を回す必要があると提案があったが、それを抑えることができたかを検討しよう。

ウ軍の戦略の方向性が見えてきている。しかし、欧米諸国のウクライナ支援疲れに対して、ゼレンスキー大統領の動きが重要になっている。

ドネツク・バフムト方面

ロ軍は、この地域を最重要攻撃地点としている。精鋭部隊の多くをこの地域に集めている。ロ軍の多くの戦闘資源をここに集めている。

しかし、損害無視の攻撃で、バフムト市内に取りつくことができたが、ゼレンスキー大統領が、バフムト前線でウ軍兵に勲章を授与したことで、士気が上がりバフムト市内に取りついたロ軍陣地を奪い返した。その後もウ軍は郊外にあるロ軍陣地も攻撃している。

ロ軍は数か月の時間と多くの犠牲を出して取った陣地を数時間で、ウ軍に奪い返されたようだ。

その上、バフムトのロ軍司令部と兵器弾薬保管庫を空爆して破壊された。ウ軍は、縦深防御で、ロ軍に多大な損害を与えつつ、後方に予備兵力がいて、攻撃に出ることもでき、どこかで攻守は逆転する。このフェーズに入り始めている。

そして、ウ軍は、オザリアニフカの西700m(バフムト南13km)にある塹壕線を奪還した。ウ軍が積極攻撃に出ている。

クデュミフカでは、ウ軍は運河の閘門と橋を奪還したが、市内の半分をロ軍が占拠しているが、市内のロ軍にも攻撃を開始したようである。

ウ軍は、ピスキーを奪還し、バセルを攻撃している。ロ軍はアウディーイウカ要塞包囲作戦が失敗したようである。ここも多大な損害をロ軍が出していた地域であり、それを短時間にウ軍に奪い返されたようである。

マリンカでの中心部にロ軍が入り、郊外の高台にウ軍がいる状態にした後、市内中心部に入ったロ軍に多大な犠牲を出させ、撤退させたようである。これが、ウ軍の作戦のようである。

もう1つ、ウ軍は東部ドネツク市内に対し最大規模の攻撃を実施したが、その目的は、ドミトリ・ロゴジン元副首相とドネツク共和国のヴィタリー・ホツェンコ首相を仕留めることであり、「Six-five」というレストランで行われたロゴジン氏の誕生日パーティーにミサイルを打ち込み、両者を負傷させた。

そして、ロゴジンの状態が悪化し、ドネツクの医療では対応できないため、モスクワに搬送するようである。それだけ重症のようだ。

というように、ロシア側要人のスケジュールをウ軍は手に入れている。逆にゼレンスキーの訪米をロ軍は感知できていない。ウクライナの親ロ派は、ウクライナの情報総局に入り込めていないことがわかる。

その結果、この地域のロ軍は、多大な犠牲を出したが、成果は出なかったことで、攻撃軸を変えているようにも見える。

攻撃軸をバフムトの北にあるヤコブリフカ、ビロホリフカ、ベレストーブに変えてきたようであり、一時ヤコブリフカをロ軍に占拠されたが、ウ軍も増援して反撃し、ヤコブリフカを奪還している。

ウ軍は、どうも、この方面に大量の兵力を投入して、この地域のロ軍を攻撃して追い払い始めた。プリゴジンの傭兵「ワグナ-」が負けていることになる。

もしかすると、ポパスナまでウ軍は奪還する勢いになってきたようにも見える。この方面でのウ軍の攻勢がすごいことになっている。ここのロ軍主力を叩きのめして、ロ軍撤退に追いやる方向に戦略をシフトした可能性がある。

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反対に、ロ軍兵は防寒服もなく、砲弾もなく、食事も取れない状態で、その上にウ軍の大砲の餌食になることが見えてきて、第127偵察旅団は、大損害の後、旅団全体で戦争参加を拒否して、戦線を離脱した。このように、とうとう、ロ軍の崩壊が始まっている。投降兵や脱走兵も増えている。

特に、ワグナーの多くの戦闘員が自発的に、ウ軍に降伏してきている。特に囚人兵の投降が多い。それは、大砲の餌食になる確率が高いことは、仲間の突撃で戦死する姿を見て、かつ、撤退するとワグナーの督戦隊に銃殺されるなど、人権無視な扱い方であり、降伏したくなるのも分かる。これでは、その内に、ワグナーも戦闘員を大切にしないことで、崩壊する。

この対応で、ウ軍は、投降する手順をロ軍兵に示して、投降を呼びかけているが、多くのロ軍兵が応じているようである。この投降支援プロジェクトへ連絡してきたロシア人が、120万人にもなっている。

それでも、ロ軍のゲラシモフ参謀総長は22日、ウクライナの前線は安定しているとし、ロ軍はドネツク地域の「解放」を完了させることに集中していると述べたが、現状の状況はウ軍に押されているようだ。

スバトボ・クレミンナ攻防戦

スバトボ方面では、ウ軍は、スバトボ十数Kmにあるクゼミフカやキスリフカに前進している。ロ軍も抵抗が強く激戦になっている。しかし、やっと、重火器を動かせるような固さになってきている。

ロ軍も戦車などを、この方面に増援して、戦車戦にもなっている。陣地戦から重火器中心の機甲戦になってきたようである。

クレミンナ方面では、ウ軍はクレミンナ南でクレミンナまであと数km地点まで接近しているが、大量に敷設されたロ軍の地雷により、行動を制約されているが、着実に陣地を構築して前進している。ここもやっと、地面が凍結して戦車が走れるようになってきた。

ロシアの目標は、ドンバスの解放であったが、徐々にルハンスク州もウ軍に奪還される可能性が出てきて、ロ軍も急遽、第1親衛戦車軍団をヘルソン州から回したようである。

ザポリージャ方面

メルトポリ周辺のロ軍基地、補給基地、橋などをHIMARSの砲撃、パルチザンの破壊工作などで、破壊し続けている。

しかし、ウ軍はパブリフカへの攻撃をしたが、ロ軍が確保しているし、強い攻勢には出ていない。HIMARSで後方の基地や補給基地を砲撃するだけである。

この地域へのウ軍の攻撃を意図的に止めているようにも見える。多くの軍事専門家は、ウ軍はここから攻撃を開始するとみているが、どうなのであろうか?

ロ軍もウ軍の攻勢に備えて、塹壕や要塞を各所に作り、攻勢に備えているようだ。

北部ヘルソン州・クリミア

ドニエプル川中州にロ軍は、拠点を置いたが、その拠点をウ軍は砲撃で潰した。逆に、ロ軍はドニエプル川東岸地域に砲撃をしているし、ヘルソン市内に、国際法的に違法なテルミットクラスター焼夷弾で砲撃した。

そして、ウ軍はヘルソン州東岸カホフカの飛行場を20日に砲撃し、ロ軍兵の約150人を死亡させた。ウ軍もドニエプル川西岸を砲撃している。それもロ軍に目掛けて精密攻撃することで、弾頭の数は少なくても、効果は大きい。対して、ロ軍の砲撃は、絨毯爆撃であり、ウ軍の被害は少ないが、民間人の被害が大きいことになる。

コスパの低い砲撃であり、このため、爆弾を大量生産する必要になり、できないと40年前の信頼性のない砲弾を使うことになる。

このように攻撃力が弱いので、ロ軍は引き続き、塹壕や要塞を各所に作り、ウ軍の攻勢を止めようとしている。

もう1つ、黒海艦隊の活動が活発化してきているので、何かしらの攻撃を意図しているようである。ミサイル攻撃であろうか?

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ロ軍や世界の状況

12月22日現在のロ軍戦死者数は10万400人になった。スバトボ、クレンミンナ、バフムト、ドネツク市付近のロ軍は、毎日500~600人の戦死が確認されている。単純な突撃をするスタイルが変わらないので、ウ軍は研究して効率よく、殺す方法を毎日、磨き上げている。

その1つが、キルゾーンに誘き入れて、大量に処理する方法のようである。それをマリンカで実践したようである。

プーチンも「併合4州は、極めて困難な状況にある。」と認めている。

このため、19日にベラルーシを訪問して、ルカシェンコ大統領に、参戦を依頼したが、参戦を拒否された。しかし、ロシアがベラルーシに対空ミサイルシステム“Tor”を譲渡したり、ロシア軍のT-90M戦車とT-72B3戦車を大量に送っている。ロ軍単独でもウクライナを再侵攻する可能性がある。

ロシアの軍事ブロガーのイゴール・ガーキンは、ロ軍がウクライナで大規模に占領地を拡大する能力はないので、ベラルーシからキーウ方面に地上攻勢をかけ、欧州とキーウとの地上連絡線を脅かすことで、他の地域の作戦を有利にできるという。

しかし、中国を訪問したメドベージェフは、習近平主席から戦争をやめて、交渉で問題を解決することが必要であると言われて、軍事援助を期待したが、その期待が打ち砕かれた。

ロシアは、ルーブルでの輸入決済ができないので、中国の人民元での決済をするしかない。ルーブルと人民元はスワップ協定も結んでいるので、ルーブルの交換レートが良い。

このため、来年から通貨市場で中国・人民元を買い始めると関係者2人が述べた。ドル依存から脱却する流れが加速するが、経済面では中国頼りになる。その中国に袖にされると、ロシアは、軍事物資も手に入れられないことになるので、中国の意向を無視できない。ロシアは、経済面では、中国の属国化が進んでいる。

このような外交の情勢であり、北朝鮮から兵器と弾薬を傭兵会社「ワグナー」は買ったが、その弾薬もバクムトで使い果たしたようである。

ということで、ロシア政府内では、再攻勢に出るべきという意見と守備を固めて今の状態を守る方が良いという意見があるという。

しかし、守備だけでは、埒が明かないので、停戦交渉に入りたいが、現状の状態での停戦しかできない。22日、中国の習近平主席の言葉を受けて、プーチンは「この戦争を終わらせることを目標としている」と発言したが、現状の占領をウクライナが認める必要があるという。

しかし、ウクライナは停戦の条件を、ロ軍がウクライナ領土から撤退することであり、終戦・停戦条件が折り合わない。

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当分、戦争は続くことになる。ロ軍兵を30万人戦死させることは、プーチンにとっては、痛くも痒くもないようであり、平然としている。劣勢であることも承知の上で、戦争を継続するしかない。

ウクライナの条件での終戦・停戦は、ロシアの負けであり、プーチン自身の死を意味するからである。自身の死を覚悟するなら、核攻撃を行うという可能性も出る。

このため、ゼレンスキー大統領は、キーウ核攻撃時の対応をバイデン大統領や米国軍関係者と話したようである。そのためのワシントン訪問であったとも見える。それだけ、ロシアの核攻撃の可能性が高まっている。

核攻撃以外で、現在、ロシアの有効な攻撃は、ミサイル等によるインフラ攻撃しかなく、ウクライナは、ロ軍が近々に大規模なミサイル攻撃を計画と述べ、戦略爆撃機Tu95を8~14機、中距離爆撃機Tu22M3を3機、短距離弾道ミサイル「イスカンデル」を4発と、「カリブル」を含む巡航ミサイル67発を用意し、ドローンも多数を発射するようだとした。ロ軍内部にウ軍スパイがいるようである。

もう1つが、ランセット徘徊自爆ドローンの攻撃で、ウ軍のM777榴弾砲や戦車が犠牲になっている。この防止方法は、戦車の上に張ったカモフラージュ・ネットのようで、ドローンを物理的に止める事に成功したという。ミサイルと違ってプロペラ推進で遅いから受け止められてしまうようである。

ロ軍は兵器不足、弾薬不足、装備不足になっているが、プーチンは23日、軍需産業が集積している西部トゥーラ州を訪問し、必要な兵器や装備などを迅速に供給するよう防衛産業の責任者に指示し、「ロシアの軍産複合体の最も重要な任務は、前線部隊が必要とする全ての兵器、装備、砲弾を短期間に提供することだ」と述べた。

現状を見るに、ショイグ国防相は24日に、ロシア軍の兵員規模を現在の100万人から150万人へ大幅に増やすと、プーチンと共に臨んだ国防省の拡大幹部会議で述べた。このように負け戦で兵器や装備がなくなり、勝てる要素は、兵員数しかない状態になっている。

もう1つが、モスクワの全ロシア軽合金研究所、ロ軍基地や軍需施設などで大規模な火災が発生して、ロシア国内全体でも重要施設の火災が頻発している。

今後も、ウ軍のUAVなどによるロ軍施設、軍需工場の破壊が進むことになり、兵器、装備、砲弾の生産もできなくなる。ということで、敗戦に一直線である。

ということで、ウクライナは2023年2月、ウ軍の冬季攻勢が成功し、かつ、ロ軍の冬季攻勢が失敗した後のタイミングで、ロ軍完全撤退交渉を準備している。ロ軍の敗戦で、ロシアとの終戦を模索するようである。

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ウクライナの状況

ゼレンスキー大統領は、激戦のバクムトに行き、ウ軍兵に勲章を渡し、激戦地のウ軍兵のウクライナ国旗に英語で寄せ書きした物を持って、ワシントンに飛び、バイデン大統領と首脳会談を行い、その後、上下院合同議会で持って来た寄せ書きのウクライナ国旗を議長に渡した。

演説は、ロシアとの戦いにおいて降伏することは決してないと述べ、また米政府に対しては軍事支援の強化を呼びかけた。また、米政府による支援は施しなどでなく、「世界の安全保障や民主主義に向けた投資であり、われわれは最も責任ある方法で扱っている」とも述べた。

演説が始まる前に、議員が立ち上がり、拍手をして、それが鳴り止まない状態が続いた。しかし、その中で共和党下院議員2名が、座って、その中に加わらなかった。下院はウクライナ支援で、もめる可能性があるようだ。

しかし、共和党上院院内総務のマコネル氏は、「ウクライナへの支援を継続することは道徳的に正しいが、それだけでない。冷たくて硬いアメリカの利益への直接的な投資でもある」と述べて、今後も支援予算に賛成するようである。しかし、この言葉に共和党内では、賛否が分かれているようだ。

しかし、ゼレンスキー大統領は、米国で宿泊せずに移動して、ポーランドでドゥダ大統領と首脳会談して、帰国した。バイデン大統領の要請で米国議会説得が必要であったようだ。このため、ゼレンスキー大統領は、最大援助国の共和党支援反対議員説得の議会演説となったのである。一定の効果はあったようであるが、完全に支援否定派を納得させられたかというと、疑問がある。

この訪問で、パトリオット防空システムが供与されることになり、長距離ATACMSミサイル、F-16や欧米戦車の供与も実現するかもしれない。特にATACMSが重要であろう。

そして、ウ軍は、米国で初めてパトリオットの訓練を受ける可能性があるようだ。米国はすでに約3,100人のウ軍人を訓練しているので、その一部をパトリオットの訓練に回すのかもしれない。

プーチンは、パトリオット防空システムは時代遅れであり、容易に破壊できると述べているが、S300対空ミサイルの方が古いことを知っているのであろうか。

パトリオットの射程は次の通りであり、何が提供されるかで意味合いが変わる。PAC-3であれば、弾道ミサイル対応であり、巡航ミサイル対応であれば、PAC-2で十分である。核攻撃があるとすると、弾道ミサイルが使用されるので、PAC-3の提供になるのであろう。

支援としては、90機のモロッコ製T-72 MBTがウクライナに納入された。世界に散らばるT-72、62などの戦車が、ロシアとウクライナに吸い寄せられている。戦後は世界全体で中国製か西側の兵器になるようだ。ロシア製兵器はイランと北朝鮮だけですかね。

というように、徐々にロ軍崩壊になり始めて、戦争は最終段階に来た可能性がある。勿論、ロシアの核攻撃で、ロシアの崩壊になるということである。

それしか、戦争を終わらせられないとプーチンは考えているように思う。もうロシアは、通常戦争では勝てないことは明らかである。それより、ロ軍自体の崩壊もあり得る。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年12月26日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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