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プーチンの思う壺。ロシアが「もうすぐ崩壊」の偽情報に踊らされた欧米の赤っ恥

予想もしなかった「軍事作戦」の長期化に、国家崩壊レベルにまで追い詰められているとも伝えられるロシア。プーチン大統領重病説や影武者説もまことしやかに語られていますが、果たしてそれらの情報は信用に値するものなのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、世界に流通するさまざまな情報の真偽を分析。その上で、今後の国際社会において日本がどのように振る舞うべきかについて考察しています。

「ロシア内部崩壊は時間の問題」は本当か。国際社会に飛び交う偽情報

「ほんまかいな」

思わずそう呟いてしまう情報があります。国際情勢を見る際も決して例外ではありません。

しかし、最初は疑わしい・怪しいと感じていた情報も、何度も同じ情報に触れることによって記憶と認識に刷り込まれていき、次第に“事実”として認識されることになってきます。

例えば、現在進行形のロシア・ウクライナ間の攻防についての情報もそれにあたりますし、中国がいついつまでに台湾を武力侵攻するという情報もそれにあたります。そして、北朝鮮によるミサイル発射についての情報も、見方によっては同じことが言えるかもしれません。

情報の真偽を見極めて、自らの行動を決めることはとても重要なのですが、情報が洪水のように流れ込んできて、じっくりと吟味する時間がない現在では、私たちはよく耳にしたり目にしたりする情報を信じてしまいがちです。

これはいくら慣れていても、なかなか抗しがたい現実かと思います。

ではどんな情報が今、巷で流れ、G7の国々で“事実”と信じられがちでしょか?

まずはロシアとウクライナの戦争についての情報から見てみましょう。

「プーチン大統領の健康状態は重篤」
「ロシアではすでにポスト・プーチン大統領の主導権争いが始まっている」
「ロシア国民は、今回のウクライナ戦争において、ロシアの敗北を覚悟し始めた」
「ロシアの軍備も財政も枯渇し、確実に弱体化が進んでいる」

昨年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以降、このような情報が度々メディアを通じて流されては消えるという状況が続いています。

真偽が分からないものも多いですが、実際にプーチン大統領はまだ生きていますし、噂されたような重篤な健康状態にはないようです。もちろん流行りの“影武者”説を否定する情報もありませんが、米英、そしてイスラエルの諜報機関による科学的分析によると、時折、姿を見せ、実際に話している人はプーチン大統領本人に間違いないそうです。

また激戦地バフムトは、紆余曲折の後、ワグネルによって完全掌握され、ウクライナ軍はすでに街から撤退しています。激烈な反転攻勢に打って出ると言っているゼレンスキー大統領も、バフムトの陥落については認めており、「必ず奪還する」と息巻いていますが、バフムトで2万人ほどを失ったワグネルの10倍から20倍に上るとされる犠牲者を出し、実際には熟練の兵士の多くを失っているウクライナに、本当にそれが可能なのかは謎です。

“ポスト・プーチン大統領の内紛”については、親プーチン大統領の勢力も、反プーチン大統領の勢力も一致している意見は「プーチン体制が終焉するとしたら、それはプーチン大統領自身が亡くなったあとのこと。彼が生きている限り、プーチン体制は続く」という見方です。

時折、「この人が彼の後任ではないか」、「プーチン大統領は生きているうちに自らの方針を踏襲するリーダーを作るつもりだ」といったお話も出てきますが、実際には元大統領で現在はロシアの安全保障会議副議長を務め、スーパーハードライナーのメドベージェフ氏をはじめ、アメリカの覇権に対して挑戦する面々が周りに揃っており、ロシアという国と体制が続く限りは、プーチン路線が継続すると思われます。

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プーチンが展開するワグネルのトップを使った偽装工作

そしてそれを支えるのがロシア国民からの絶大な支持です。ロシア国民の大半は、まだプーチン大統領の統治と方針を支持しており、対ウクライナ戦争(対NATO戦争)についても、諸手を挙げて支持しているかどうかはわかりませんが、【ウクライナという媒体を使ってロシアを孤立させ、弱体化させようとしている】という、欧米メディアがプーチン大統領の“盲信”と呼ぶものを信用し、懸念を共有していると言われています。

事実、最近になって多発するロシア各地に対する攻撃は、誰による仕業かどうかは別として、ロシア国民の恐怖心を煽り、それがプーチン大統領の方針と世界と戦う姿を後押ししているという分析もあります。

もしそうだとしたら、国民の支持をベースに確実にこの戦争は長期化の様相を呈することとなるでしょう。

では、メディアを騒がせたワグネルの創始者で大富豪のプリコジン氏によるショイグ国防相やゲラシモフ統合参謀会議議長に対する罵倒はどうでしょうか?

これも言葉通りには取ることが出来ないと考えます。プリコジン氏はプーチン大統領に非常に忠実であり、プーチン大統領もプリコジン氏とワグネルに対して絶大の信頼を置いています。実際に、ロシアが非公式に親ロシア各国で行う軍事的な活動と工作のほとんどを任せているほどで、プリコジン氏とワグネルの行動に対して、無制限の支援をしていると言われています。

今回、プリコジン氏はバフムト攻略にあたって武器弾薬が来ないと激しい非難をしていますが、これは自らのスタッフに直接叱責する代わりに、プーチン大統領がプリコジン氏を使って発破をかけているという見方と、国内の分断を偽装するための情報戦をプリコジン氏に託しているとの見方が出来ます。

前者については、大統領就任以来、一貫しているプーチン大統領の人心掌握と制御のやり方を踏襲していると言えます。彼の意にそぐわない、または欲を出し始めた相手をこれまでに冷徹に切り捨ててきたことを側近に対してリマインドする役割を負っていると言えますが、ゲラシモフ統合参謀本部議長もショイグ国防相もプーチン大統領の最側近の一人でプーチン大統領を裏切ることは考えづらいため、プリコジン氏が彼らを実際に自分よりも下に見ている以外は、この分析内容は考えづらいかと思います。

後者については、「ロシアは分裂しており、すでに統制が取れておらず、内部崩壊は時間の問題」という偽装工作です。

バフムトを一刻も早く解放することでワグネルの実力を示したいプリコジン氏と、戦争の長期化で欧米を疲弊させることを狙うプーチン大統領との間で思惑のずれがあったのではないかという見方はありますが、欧米とウクライナを消耗戦に引きずり込み、欧米の国内とウクライナ国内で厭戦機運を拡大し、分裂を引き起こそうとしている思惑は合致しているようです。

ロシア国内での分裂と消耗、士気の低下を演出して「あと少しでロシアは崩壊する」という幻想を強め、欧米諸国本国からどんどん武器を引きはがしていく作戦に出ているように見えます。

ロシアの正規軍は大きな被害を受け、強靭なワグネルも2万人超の死者を出しているのは事実ですが、どちらも虎の子を隠しており、敗戦にまっしぐらどころか、逃げたり弱ったりするフリをしつつ、ウクライナの力を削いでいく戦略を徹底しています。

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ウクライナ決して核兵器をに使うことはないプーチン

ドイツとその仲間からレオパルト2を供与させた上に防空システムを出させ、英国にはストームシャドーを出させ、いずれはF16が投入されることになりますが、ゼレンスキー大統領による欧米行脚で引き出した追加支援は、実際に欧州各国の首都防衛のためのシステムを丸裸にする効果を生んでいることにあまり気づいている人はいないように思われます。ドイツについては、ベルリンを守るための防空システムまで供与していると言われていますが、果たして有事の際に、バイデン大統領のアメリカはドイツを守ってくれるでしょうか?

そしてロシアの思うつぼになってきているのが、ウクライナが当初の約束に沿わず、NATOから供与された兵器が次々とロシア領内を攻撃し始めていることです。

これにより欧米諸国のゼレンスキー大統領離れを加速させるとともに、プーチン大統領にとっては、ロシアに対する国家安全保障上の危機に対していかなる手段を取ることも許容する空気を作ることに繋がっているように見えてきます。

それにより、ロシアによる攻撃とロシアとの直接戦争を恐れるNATO各国は、じわりじわりとウクライナ支援から手を退くことになってくるかもしれません。

NATOによるバックアップが薄れるとき、ロシアは隠していた爪を存分に発揮して、ウクライナを内部から崩壊するという“特別作戦の完遂”に取り掛かることになるように思われます。

ただ、プーチン大統領は手段として保持していても、決して核兵器を対ウクライナに使うことはないと考えます。それは、プーチン大統領とその周辺のマインドでは、ウクライナはロシアの一部であり、ロシアは“自国の領土”を傷つけることは消してしないからです。

ところで余談ですが、皆さんは英国がウクライナに劣化ウラン弾を提供した話を覚えておられるでしょうか?ほとんどその後、報じられることがなかったと思われますが、すでにその劣化ウラン弾が欧州各国に牙をむき始めているのはご存じでしょうか?

ウクライナ入りした英国の劣化ウラン弾は、すでに保管庫がロシアの精密ミサイルによって攻撃され、その放射性物質が欧州に向けて流れているとの情報が上がってきています。

この情報は英国やフランスによっても確認されており、報じられることは決してないですが、すでに欧州のリーダー層にショックを与えています。

ゆえにプーチン大統領とロシアにとっては、自ら核兵器のボタンを押さずとも、欧州が自爆しているという状況になっており、もしかしたらほくそ笑むような事態になっていると推察します。

もしこのまま戦局が膠着し、戦争が長引くような事態になれば、アメリカのバイデン大統領は支持を失うでしょうし、欧州のリーダーたちもその支持を失うことに繋がりかねません。そしてウクライナは消滅の憂き目にあうことになるかもしれません。

G7広島サミットでは、核兵器廃絶に向けた心理的な機運が高まりつつあった時に、ゼレンスキー大統領の広島入りを受け、一気に関心をかっさわれてしまいましたが、本当に日本政府はG7、特にアメリカ追従と傾倒一辺倒でいいのでしょうか?

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「北朝鮮のミサイルは本当に存在するのか」という疑問

では北朝鮮の核・ミサイル問題に関する情報はどうでしょうか?

いきなりですが、これまでに北朝鮮のミサイルの残骸や破片を誰かが確認したことはあるでしょうか?

今回もJ-Alertを通じて危険性が周知され、かつメディアも挙って警戒を訴えましたが、当該エリアには漁船も艦船も多数航行する中、ミサイルが海に落ちたという目撃情報もなければ、ミサイルの破片を回収したという情報を聞いたこともありません。

「恐らく自衛隊や海上保安庁が回収していて、それを公表しないだけではないか」とか「アメリカ海軍や韓国の海軍が回収して、自衛隊と情報を共有しているはず」といったご指摘を受けそうですが、皆さんはどうお考えになるでしょうか?

もしかしたら、北朝鮮のミサイルなどは存在せず、何か意図が込められた宣伝や情報操作という見方はできないでしょうか?

これはアメリカの海軍幹部が議会での証言でよく用いる手段でもありますが、軍事費・防衛費の確保と拡大のために、実情を誇張して喧伝しているとも考えられます。私や仲間たちの“妄想”かもしれませんが。

しかし南西諸島付近や北海道周辺、または日本列島を横断して太平洋にまで飛んだらしいミサイルを私たちは見たこともなければ、その破片を見たこともありません。

とはいえ、ウクライナ問題のみならず、米中対立も受けて、世界が分断の度合いを極めていく中、北朝鮮の核開発やミサイル開発に対する直接的な圧力が低下していることは事実で、分断の背後で着々と加速度的に、北朝鮮の軍事力と能力は拡大していると思われます。

今回の“人工衛星の発射”は失敗だったと言われていますが、恐らく課題についてはすでに特定し、修正点は明確に理解できていると思われます。ロシアや中国、イランやパキスタンなどからの支援もありますが、その一因になっているのは、皮肉にも日本をはじめとする反北朝鮮の国々による懇切丁寧な専門家による解説と分析内容の“無料提供”です。

一応、欧米諸国による対北朝鮮制裁は発動していますが、その激化については中ロとその仲間たちによってブロックされ、実質的には効果はないと思われます。それは中ロなどによる直接的なバックアップもありますが、それ以上に、対ロ制裁と同じく、欧米諸国とその仲間たちからの一方的な制裁措置発動に反感を持つ国々が、その制裁を有名無実化しているという状況にあります。

同じ図式がロシア制裁への各国の反応でも見ることが出来ますが、ロシアとウクライナの間の戦いが長引き、欧米諸国とその仲間たちによるウクライナ支援が強化されればされるほど、非(反)欧米諸国がじわじわと中ロサイドに引き寄せられ、国際社会における分断の力のバランスが中ロの側によってくることに繋がっていくことになります。

すでに中東諸国は中国とロシアの側に寄っていますし、ブラジルをはじめとするラテンアメリカ諸国も、そしてアフリカ諸国も、中ロ主導型の国家資本主義陣営に傾いてきています。

それが分かるのが、ゼレンスキー大統領が訪日前に参加して支援を呼びかけたアラブグループ会合での冷遇と、久々に復帰したシリアのアサド大統領への熱烈な歓迎の待遇の差です。

アラブ諸国が無言で明らかにした思惑と意思は、言語化すると「私たちはもう欧米の思い通りにはならないし、その手下のゼレンスキー大統領も助けない」というメッセージなるでしょう。

「力による現状の変更は好ましくない」というコメントはあったものの中東諸国もアフリカも、ラテンアメリカ諸国も、そしてインドも、ウクライナに手を貸すことはないようです。

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ウクライナの惨状が「遠い国での火事」では済まなくなる日本

G7広島サミットの重大アジェンダの一つが“グローバルサウスの国々との協力の強化”でしたが、インドもインドネシアも、ブラジルも、コモロやクック諸島もG7になびくことはなく、どちらかというと、G7諸国のイメージアップに利用されたとの思いが強いようで、グローバルサウスの国々の欧米からの乖離がより進展したと思われます。

でもメディアはどう伝えたか?それはG7広島サミットによってグローバルサウスの国々とのきずなが強まり…という感じでしたが、インドをはじめとするその対象国では、ほとんど成果が伝えられていないことから、実情が伺い知れるのではないかと思います。

そのような状況の下、日本はどのように振舞うのでしょうか?戦後、苦労の末勝ち取ったと言われている“先進国”という立場ゆえの矜持を守り抜くために、無邪気にG7の一員としてのステータスを堅持するのでしょうか?

それとも力の現実に目を向けて、かつてのように、どっちつかずのバランス外交の姿勢に戻るのでしょうか?

最も安全保障環境が緊迫していると言われている北東アジアの中心に位置し、周辺を核戦力に囲まれ、アメリカを除けば同盟国がいないというユニークな立ち位置を持つ日本。

ハンドリングを誤ると、私たちが今、見ている遠いウクライナでの惨状は、決して遠くで起こっている火事では済まされない状況になる可能性が高まります。

今回、私がお伝えした内容に対してご批判も疑いもあるかと思います。情報操作だと非難されるかもしれません。

何を信じ、どう動くかは皆さんお一人お一人にお任せいたします。

以上、国際情勢の裏側でした。

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image by: Salma Bashir Motiwala / Shutterstock.com

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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