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不祥事だらけNHKの“イヌ化”が止まらない。受信料のために公共性を捨てた放送局が煎じて飲むべきBBCの爪の垢

公共放送の看板を掲げ、国民から問答無用で受信料を徴収するNHK。しかし現在、その「公共性」について多くの視聴者が疑いを持たざるを得ない状況にあるのが現状です。その原因はどこにあるのでしょうか。メルマガ『ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)』の著者でジャーナリストの伊東森さんが、NHKがこのような体質となってしまった複数の要因を指摘し解説。さらに彼らが主張する公共放送としての自らの役割を、「ごまかしに過ぎない」と斬って捨てています。

プロフィール伊東 森いとうしん
ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

相次ぐ「NHK」の不祥事。自ら政治権力にすり寄り肥大化、問われるNHKの公共性

とある一国の公共放送の番組による告発が、他国のエンターテインメント業界を大いに揺るがしている。といってもその主人公は日本の公共放送NHKではない。

イギリスの公共放送BBCがジャニーズ事務所創業者ジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害について取材したドキュメンタリー番組が3月に放送、これを受け、日本の芸能界、あるいはメディア業界はまさに“パニック”に陥る。

ジャニー喜多川氏の性加害問題については、古くは1960年代から語られていたとはいえ、いくつもの鉄壁の“タブー”の檻に囲まれ、日本の大手メディアは自ら報道することはなかった。それをBBCは見事に打ち破ったのだ。

一方、日本の公共放送NHKは、情けないことにこの期間、不祥事が相次ぐ。NHK総合で5月22日に放送されたドキュメンタリー『映像の世紀バタフライエフェクト』内で独ソ戦を取り扱った際、旧ソ連の最高指導者スターリンの発言として紹介したものが別人の発言だったなど、内容に不正確な部分が複数あったことが判明。

問題があった番組は『独ソ戦 地獄の戦場』というタイトルで第二次世界大戦中のナチスドイツの侵攻による独ソ戦を紹介。その中で、放送で引用された「ドイツ人は人間ではない。一人でも多くのドイツ人を殺せ!」とのスターリンの発言は、ソ連軍の機関紙に掲載された別人の発言であった。

それだけでなく、戦闘シーンとして紹介された映像の一部に軍事演習中の映像が含まれていたり、ロシアのプーチン大統領の発言の翻訳にも誤りがあり、いずれも再放送で修正される。

NHKの不祥事は今に始まったことではない。21世紀に入りインターネットが登場するとともに、多くのネットメディアがNHKの不祥事を次々と報道。NHKの信用は地に落ちた。

NHKに何が起こっているか。私たちは、NHK受信料を払う価値はあるのか。NHKは公共放送を名乗る資格はあるのか。

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21世紀に入り急増するNHKの不祥事 2000年、森元首相「神の国発言」指南書事件

NHKの不祥事は、21世紀に入り急増した。2001年、NHKが教育テレビ(現Eテレ)で放送を予定していたETV特集『戦争をどう裁くか』の放送内容を事前に知った自民党の安倍晋三、中川昭一(当時)両議員がNHKの幹部に対して番組の内容に注文を付け、放送直前になってNHKの幹部が現場に番組内容の改変を命じたために現場は大混乱。

番組を企画しNHKから制作を受注していた制作会社は、当初の企画意図とまったく異なる番組になってしまうとし、改変を拒否、NHKの現場デスクらも当初、改変に抵抗したために、放送当日になってもまだ番組の編集作業が終わらない異常事態に陥ってしまう。

そして、結果的に幹部自らが編集を指揮するという異常な体制の下で番組が番組枠よりも4分も短い状態のまま番組は放送されるというできごとが起こった。

他にも、菅義偉首相(当時)が『ニュースウオッチ9』に生出演した際に、有馬嘉男キャスターから学術会議問題を鋭く追及されると、翌日に官邸の幹部からNHKに苦情の連絡が入り、ほどなくして有馬氏がキャスターを降板させられたり、安倍政権時に国谷裕子氏が『クローズアップ現代』のキャスターを降板させられている。

それどころか、NHKは自ら政治家にすり寄る行為まで行った。2000年5月、就任間もない森喜朗総理(当時)が、神道政治連盟国会議員懇談会結成30周年記念祝賀会に出席した際、

「日本の国は、まさに天皇を中心としている神の国」

と発言した(いわゆる「神の国発言」事件)。

本当の問題はここからだ。時をおいて福岡のブロック紙「西日本新聞」に以下のようなコラムが載る。

森喜朗首相が「神の国」発言の釈明記者会見を開く前日の朝、首相官邸記者室の共同利用コピー機のそばに「明日の記者会見についての私見」と題した文書が落ちているのを見つけた。ワープロ打ちされた感熱紙。一読して、首相周辺にあてた翌日の記者会見対策用の指南書と分かった。

この「指南書」を書いたのが、当時のNHKの官邸キャップだったという。

なぜNHKで不祥事が相次ぐのか?日本にだけBS放送がある理由とNHKの肥大化

NHKは受信料という安定的かつ継続的な収入を得る代わりに、毎年の予算と一般の会社の取締役にあたる経営委員会の委員の人事について、国会の承認を必要とする。その過程でNHKは時の権力の介入を受けやすい。

その一方、NHKも自ら時の権力(自民党)にすり寄り、年間7,000億円のも収入をもたらしてくれる現在の受信料制度を維持してくれる自民党に対し、“忖度”。

広告収入に頼り、テレビ離れの危機がダイレクトに直撃し、一部では民放地方局の経営統合まで噂される事態を尻目に、NHKはやりたい放題ができる。そのことがNHKの放漫財政の原因になったり、規律のゆるみを生み、不祥事の原因となる。

NHKの肥大化も不祥事の要因だ。肥大化はBS放送を始めたことから始まった。あまり日本人は知らないが、そもそもBS放送は日本にしかない(*1)。もともと、アメリカはBSを打ち上げようとしたが、デジタル技術の登場によりそれよりもコストの安いCSで衛星放送を始めた。しかもCSでは100チャンネル程度の「多チャンネル放送」が可能だ。

同じころ、不幸にも、日米貿易摩擦が勃発。アメリアからのコンテンツ輸入を増やさなければならない時期に、アメリカが打ち上げを“やめた”BSを日本が買わざるを得なかった。

そこで目を付けられたのがNHKである。当初の名目は、難視聴対策。離島には電波が届かないのでBS放送をやると説明された(*2)。

しかしそれは明らかな嘘。NHKが始めたBS放送は地上波放送と内容が異なっていた。結果、難視聴対策なら地上波と同じ放送をすべきなのに、映画やメジャーリーグ中継など地上波とは別の放送が始まり、料金も地上波とは別で取ることに。NHKの“肥大化”は、そこから始まる。

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世界の公共放送はどうなっているのか。問われる日本のNHKの公共性

NHKは、自社のホームページ上に、

“いつでも、どこでも、誰にでも、確かな情報や豊かな文化を分け隔てなく伝える”ことを役割として担っています。(*3)

と記載するものの、しかし、それは例えば、世界の公共放送と比べると、所詮ごまかしに過ぎない。

スイスは、2018年に国民投票でスイス公共放送の受信料の是非を問うた(*4)。結果、71.6%で「受信料維持派」が勝利、受信料制度も維持されたものの、スイス公共放送は確かな“公共性”を持続させている。

スイス国内にはドイツ語圏、イタリア語圏、ロマンシュ語圏があり、スイス国民はそれぞれの使用言語に合わせ、隣国のドイツ、オーストリア、フランス、イタリアの放送を視聴。それに合わせ、スイス公共放送も4つの言語地域に向けて放送サービスを提供する。

一方、日本にもさまざまな言語を用いる外国人が多く暮らし、多言語放送をもう少し行ってもよいものの、そのような動きはあまりみられない。

あるいは、日本人がもつ公共放送の“当たり前”は世界と比べると、決して当たり前でない。オーストラリアやイタリア、フランス、韓国などの公共放送は日本の民放と同じようにCMを流しており、オーストラリアにいたっては、「受信料」まで廃止してしまった(*5)。それでも十分、“公共性”は維持さえている。

問われているのはNHKの“公共性”だ。巨額の製作費を抱えるNHKとて、たとえば昨秋のサッカーW杯カタール大会の全ての試合をNHKが放送することはできなかった。結果、視聴者はABEMAで試合を見ることになる。

もちろん、すべての試合を放送するためには、お金がかかることは理解できる。しかし、そんな困難なことにもチャレンジできるNHKこそ、本当の公共放送である姿だろう。

引用・参考文献

(*1) 田中良紹「総務省接待問題の背後にある目には見えない電波利権の深い」Yahoo!ニュース 2021年3月2日

(*2) 田中良紹 2021年3月2日

(*3])「NHKの概要・沿革など」NHK

(*4) 有馬哲夫「NHK受信料の研究」新潮新書 2023年

(*5) 有馬哲夫 2023年

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