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飼い犬プリゴジンに手を噛まれた裸の王様プーチン。それでも「核戦争」は起きぬと断言できる訳

蜂起した本人は政権を打倒する意図はなかったと主張しているものの、結果的にプーチン大統領に大きなダメージを与えることとなったワグネル代表プリゴジン氏の軍事反乱。なぜ彼は突如反旗を翻したのでしょうか。「プリゴジンの乱」を2週間以上も前に予言していた、『宮司のブログ』の著者で、1250年以上の歴史を持つ愛知県清須市の清洲山王宮「日吉神社」の神職三輪家56代である宮司・三輪隆裕さんは今回、プリゴジン氏が6月初旬に見せていた「蜂起の伏線」を紹介するとともに、反乱の先に見据えていたものについて解説。さらにロシアという国家の行く末を予測しています。

三輪隆裕(みわ・たかひろ):
清洲山王宮日吉神社 宮司。至学館大学客員研究員。1948年、愛知県にて出生。名古屋大学文学部卒業、諏訪神氏に連なる神職三輪家56代。保守系の国会議員らで組織される日本会議と、全国に8万の拠点を持つ神社本庁による「全体主義」「戦前回帰」に異を唱える言論活動をおこなっている。また、IARF(国際自由宗教連盟)を通じて世界に異宗教間の相互理解と共存を呼びかけている。

狙いはロシア政局の主役。プリゴジンが6月初旬に見せていた蜂起の伏線

6月7日付けの宮司のブログ「ウクライナ戦争の終結」の中で、「おそらく、ロシアで政変が起こり、この戦争は終結する。」と予測した。この記事は、ロシアがウクライナに勝利すると前提して停戦を求める様々な内外の声に反論するために書いたものであるが、最後の予測のところが、見事に的中してしまった。いわゆるプリゴジンの乱である。

● 宮司のブログ:ウクライナ戦争の終結

プリゴジン氏が率いるワグネルの精鋭部隊は、ロシア南部から蜂起して、国民の声援を受けつつ、あっという間に1,000キロを進軍し、モスクワ近郊に至ったところで、突然行軍を終息した。ベラルーシのルカシェンコ大統領とロシアのプーチン大統領との話し合いに基づき、プリゴジン氏はベラルーシに移動し、ワグネルの軍隊は許され、希望者は契約によりロシア国軍に吸収される、もしくはベラルーシに移動することも許されるということのようであるが、それ以来、ブリゴジン氏の消息は絶たれた。

まだまだ予断は許されないが、一様に報道は、プーチン政権の揺らぎを報じている。

ここに至る伏線は、度々報じられていた。プリゴジン氏は、大激戦となったバフムト攻略戦で、最前線に立って奮戦し、ウクライナ軍を追い出し、ロシアの英雄となった。バフムトを占領するとすぐ、ロシア正規軍にその地を譲り、弾薬の不足に対する不満をショイグ国防相やウクライナ軍事作戦の総指揮官ゲラシモフ参謀総長にぶつけ、さらには、ウクライナ軍の勇猛さを称賛した。また、ウクライナ軍にロシア正規軍の位置情報を提供すると申し出たが、ウクライナ軍に拒否されたとの報道もあった。プリゴジン氏はロシア正規軍の官僚に対する不満の結果として今回の乱を起こしたと推定される。ルカシェンコ大統領を介してプーチン大統領と何らかの妥協点を見出したので、鉾を納めたのであろう。

プーチン大統領は、6月13日の記者会見で、ウクライナ側の反撃は成功していないとして、ロシア軍の反撃の成果を強調した。一方西側のメディアは、ウクライナ軍は損失を出しつつも確実にロシア軍を占領地から追い出しているとした。この様子から推察されることは、プーチン大統領の元には、相当間違った戦況報告がなされていて、彼は「裸の王様」状態に近いということだ。

プーチン氏が本来の権力を維持し、正確な情報を得ているならば、プリゴジンの乱は起きなかったし、起きたとしても、すぐ制圧されたであろう。それができないということは、すでに、ロシア軍はまともに統率されておらず、プーチン大統領の元へも正確な情報は届いていないということだ。

数年のうちにロシアの崩壊を目の当たりにする人類

プリゴジン氏は、それを見越して、今回の行軍を行なって、ロシア国民の様子を見たのである。6月初めに彼はロシアの地方各地を訪問し、住民を前に演説。「誰かが真実を述べる必要がある」として軍部や政権批判を繰り返した。これは今回の蜂起の伏線である。彼はプーチン後のロシア政局の主役に躍り出ようとしている。

プーチン大統領がそれを許すはずはなく、すでに暗殺指令が出されたと実しやかに囁かれているが、プリゴジン氏は承知の上であろう。親衛部隊がガードしているはずであり、暗殺は成功しないと考えられる。

このように見てくると、武装した精鋭の軍隊2万5,000人以上を手元に置き、国民の英雄として人気を集めているプリゴジン氏を中心にして、ロシア政局は流動化していく。来年3月に予定されている大統領選挙で、プーチン氏が再選される目も危うくなってきたと言える。

ロシアのウクライナ侵略に端を発したロシア封じ込めも、インドや中国などの非協力にもかかわらず、じわじわと一定の成果をあげ、そしてロシアからは、多数の技術者や学者、若者などが流出し、もはやロシアは一国で安定的に国家を維持する力を失いつつある。

元々、古代や中世とは異なり、現代の国家は、ヒト、モノ、カネ、技術等の国際的な交流なくして存立はできない。

私たちは、数年のうちに、ロシアの崩壊を目の当たりにするであろう。なお、ウクライナ戦争が核戦争に発展する恐れはない。このことは「宮司のブログ」に書いておいたが、もう一度記しておく。

もちろん、核戦争ともなれば、話は違う。しかし、核兵器は使用できない。なぜか?それは、以前のブログでも述べたように、権威主義の国家支配層にとっては、西側の世界こそが本当に住みたい楽園なのであるから、それを核兵器で破壊してしまったら生きる意味がなくなってしまうからである。彼らは、財力を得るために権威主義の世界に住み、自分たちの家族は自由主義の世界に住まわせている。もし、プーチンが錯乱して核兵器を使おうとすれば、当然、自由主義世界を残すために周りが止めに入るはずである。

宮司のブログ:ウクライナ戦争の終結

image by: Andrey Sayfutdinov / Shutterstock.com

三輪隆裕

三輪隆裕(みわ・たかひろ) 清洲山王宮日吉神社 宮司。至学館大学客員研究員。1948年、愛知県にて出生。名古屋大学文学部卒業、諏訪神氏に連なる神職三輪家56代。保守系の国会議員らで組織される日本会議と、全国に8万の拠点を持つ神社本庁による「全体主義」「戦前回帰」に異を唱える言論活動をおこなっている。また、IARF(国際自由宗教連盟)を通じて世界に異宗教間の相互理解と共存を呼びかけている。 宮司のブログ: http://hiyoshikami.jp/hiyoshiblog/ 清州山王宮 日吉神社: 織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の尾張三英傑に縁があり、清須城下の総鎮守神として祀られている。西暦771年、尾張地方に疫病が流行したため、病災除去の氏神としたのが発祥。1250年以上の歴史をもつ。 愛知県清須市清洲2272番地 http://www.hiyoshikami.jp/

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