MAG2 NEWS MENU

巨人・阿部慎之助監督が長女暴行で逮捕、辞任の衝撃。伊勢ケ浜親方事件と決定的に違う「親子の信頼関係崩壊」の闇

プロ野球・読売巨人軍の阿部慎之助監督が、長女への暴行容疑で逮捕されたことを受け、5月26日に監督を辞任しました。同事件は、大相撲の伊勢ケ浜親方(元横綱・照ノ富士)が弟子に手をあげた事件と比較されつつも、児童相談所への通報により刑事事件に発展した点が大きく異なります。今回、メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では、著者で作家の冷泉彰彦さんが、両事件を冷静に比較しつつ、「18歳の子どもでも、親の暴行を児相経由で警察に通報できる」という事実が広く周知された意義について論じます。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです

阿部慎之助監督事件は伊勢ケ浜事件とどう違う?

スポーツ紙の報道によれば、捜査関係者からの情報提供によると、5月25日の午後7時15分ごろ、児童相談所から「(長女が)父親から暴行を受けた」と110番通報があったそうです。その結果、阿部慎之助巨人監督は逮捕されました。容疑は東京都内の自宅で18歳の長女をつかんで倒し、暴行を加えたということです。現場には、本人の他に、娘2人と妻がいたそうで、長女にけがはないとのことです。駆け付けた渋谷署員が現行犯逮捕し、呼気検査の結果、飲酒していたとみられるそうです。

阿部容疑者は警視庁渋谷署に数時間勾留され、翌26日の未明(午前零時過ぎ)に釈放されました。既に容疑を認めており、「姉妹でけんかしているところを静かにしろと言ったら、言い返してきたのでかっとなった」と供述しているそうです。この結果、読売巨人軍は同監督を解任する方向になると思われます。(編集部註:26日、阿部氏は記者会見し、監督辞任を表明しました)

この事件ですが、とっさに思いついたのは大相撲の伊勢ケ浜春雄親方(元横綱、照ノ富士)の事件です。親方の場合は、酒席で弟子が酔ってタニマチ(後援者)の女性にからんだのを怒って、手をあげてしまったということのようです。親方と弟子は、相撲協会に「自首」して、コンプラの観点から内部処分を受けました。

一方で、阿部監督の事件は、組織内のコンプラ事案ではなく、家庭内の私的な問題ですが、児童相談所への通報があったことで刑事事件に発展しています。そこが違うといえば違います。本質的な部分を考えると、親方の場合は弟子の悪行を指導しようとして、手が出たということであり、弟子も恭順姿勢であり、一緒に「自首」したぐらいですから、弟子が被害届を出して刑事事件化することはありませんでした。結果的には、親方は解雇されず、降格と減給だけの処分となり、指導者としての権限は剥奪されませんでした。

反対に、阿部監督はアッサリ通報されてアッサリ逮捕されてしまいましたから、この点は大きな違いがあるということです。何が違うのかというと、親子間で信頼関係が壊れていたということが、濃厚に示唆されるからです。いずれにしても、刑事事件になった以上は、阿部監督の解任は免れないでしょう。

この事件ですが、波及効果ということでは、かなりのインパクトがあると思います。何よりも、「18歳の子どもでも、親が暴行したら児相に通報すれば警察が来てくれる」ということが、広く周知されたということは大きいと思います。特に「毒親」であったり、継父母の暴言・暴行に悩まされていたりした人々には朗報です。通報を受けて110番するだけなら、児相がパンクしてしまう懸念はないでしょう。

一方で、誰もが考えることだと思いますが、阿部監督の時代錯誤的な指揮という問題と、今回の事件には何らかの関係がある、そんな考察をどうしてもしてしまいがちです。ですが、この点については、明確にはならないと思います。「犯罪を犯した」監督だということで、選手達が解任後に口々に「時代錯誤的な指揮」についてペラペラ喋るという可能性はありますが、それでは愚痴にしかなりません。

興味深いのはいわゆる「保守」がこの問題をどう受け止めるかです。「子どもが裏切ったら簡単に親の社会的地位を破壊できるのはおかしいでしょう」などと言うのか、反対に「より子どもを守る」方向になるのか、この点は興味が尽きません。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2026年5月26日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。メイン・コンテンツ「AIの弱点についてAIと対話してみた」、今週の論点「能登は必ず甦る」、連載コラム「フラッシュバック81」もすぐに読めます。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む


初月無料購読ですぐ読める!5月配信済みバックナンバー

※ 2026年5月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、5月分のメルマガがすぐにすべて届きます。
  • 【Vol.640】冷泉彰彦のプリンストン通信  『AIの弱点についてAIと対話』(5/26)
  • 【Vol.639】冷泉彰彦のプリンストン通信  『米中会談のメインはAIの共存』(5/19)
  • 【Vol.638】冷泉彰彦のプリンストン通信  『米中サミットの想定シナリオ』(5/12)
  • 【Vol.637】冷泉彰彦のプリンストン通信  『通貨と国債、運命の領域に』(5/5)

いますぐ初月無料購読!

image by: Hotta Akahane, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

冷泉彰彦この著者の記事一覧

東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 冷泉彰彦のプリンストン通信 』

【著者】 冷泉彰彦 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 第1~第4火曜日発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け