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いじめ探偵が伝授。いじめられている子供が出す判りやすい「3つのサイン」

被害者を追い詰め、時として自死に至らしめる「いじめ」。これまで1万件以上のいじめ事件に関わってきた現役探偵で、「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんによると、いじめを受けている子供には「わかりやすい3つの特徴」があるのだそうです。阿部さんは今回、自身のメルマガ『伝説の探偵』で、いじめられている子どもが発する3つのサインを紹介。さらにそれらを見逃さないために、親として何を心がけるべきかについても解説しています。

夏休みだから注意。「いじめ被害」を受けている子どもの“わかりやすい3つの特徴”

この時期、事務所の移転(手続き・引っ越し作業)でてんてこ舞いなところだが、いじめの相談の電話と相談メールはいつもより多く来ている。

他事業も別法人も経営している身からすると、1社の引っ越しではなく3社の引っ越しであるため、身体がいくつあっても足りないところだが。

さて、相談の大半は夏休みに入って(期末テストを終えて落ち着いて)というタイミングで被害を受けたこどもが、親に相談をしてであったり、もともといじめの相談を学校にしていたがテストなどのタイミングで止まっていたが、その後の対応がないなどである。

いじめ相談を受けはじめておよそ1万件以上うけていると、時期や社会情勢で相談の質や量が変わっていくということはよくわかる。

今の時期は相談が増え、夏休み中ごろまでは相談が少ない、夏休みが明けようとすることに急増するというのが毎度の傾向だ。

そこで、今回は、新たな視点として「いじめに被害を受けた場合のわかりやすい特徴」について書こうと思う。

1.成績が著しく下がる

文科省のこどもの自死の要因をみると「いじめ」はごく僅かで、「学業不振」の割合が多いとされている。

しかし、この要因については第三者が調査分析をしているわけではなく、学校から管轄の教育委員会への流れで報告されているものに過ぎず、まともな調査が行われているわけではない。

一方で、いじめの被害を受けている子どもで、私が知る限り成績が上がった子はわずか2人しかない。1人は吐きながら勉強をして加害者のようなくだらない連中よりも圧倒的に成績上位の進学先に合格してやると命懸けのガッツを出した子で、もう一人もガッツもすごかったが、家庭環境的に学習できる環境が整っていた。

私が勉強の仕方を教えて、頑張って上がった子もいるが(私は塾講師の経験がある)、自らの意思でというわけではないので、カウントしていない。

他の子は全員成績がダダ下がりしている。勉強をしている状態ではないからだ。

いじめを受けると自分で解決したいとか、誰かに相談しようとか、復讐してやろうかとか、親に言ったら困るんじゃないかとか、さまざまな葛藤が生じる。

そして、多くはその結論が見えないし、結果もままならない。心が傷つき、息を吸うことすら苦しい状態になったりもする。

そんな時に、学校の勉強に身が入るはずはないのだ。そもそも詰込み型学習が中心で、考える学習でも答えがあるのが日本の教育であり、何かを覚えるというところまで頭が回らなくなるわけだ。

成績が下がれば、進学先への不安にも繋がるから将来への不安も生じることがある。失敗することをきらう傾向もあるから、こうした不安が自死に繋がることもあるわけだ。

多くの家庭では、7月の中旬を過ぎようという今の時期、成績表を観る時期でもあるから、保護者に当たる方は、子どもの成績表をしっかりと見て、もしも成績が著しく下がっていたら、何か思い当たることがあるか考えて欲しい。

もしも、何も思い当たることがなく、子どもの様子がいつもと違う(明るい子が暗くなる、暗い子が明るくふるまう)差を感じたら、いじめを疑ってみてもいいはずだ。

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2.うわの空になって対立しやすくなる

1と同様、文科省のこどもの自死の要因の発表によると、「親子の不和」などが多くな要因の一つとされているが、これもいじめを受けたときによくあらわれる症状なのだ。

大なり小なりいじめを受けると、被害者は心身の苦痛を感じることになる。忘れ物が多くなったり、ケアレスミスが多くなり、二重三重にストレス過多の状態になる。

大人でもブラック企業やブラック上司の部下になると、心の余裕がなくなって、イライラしやすくなったりするものだ。

親はこうした子どもの様子を特になにも思いあたることが無ければ、注意したりするのだが、被害を受けている子どもの方は、心に余裕もなければ、どうせ親に相談しても解決できないでしょと思ったりして反抗的な態度に出やすくなる。

こうした積み重ねで、親子間の対立が起きたり、親からの叱責などと言うことが起きやすくなるわけだ。

3.友達の名前を言わなくなる

例えば、子どもが遊びいくときや部活などで出かけるとき、「〇〇ちゃんと遊びに行ってくる」など具体的に名前をいう。

しかし、いじめがあると。加害者の名前は既にそれだけでストレスなのだ。だから、被害を受けている子は「〇〇ちゃん」という単語をストレス回避から自然に言わなくなるのだ。

確かにもともと言わない子もいるから、これだけで、いじめを受けているとは言えないが、いじめの多くは普段コミュニケーションを取っている相手から受けるというのが大半だから、普段との差として、名前を濁したり言わなくなったら、要注意なのだ。

よく観察するより差をみつける

いじめを受けた人の特徴を示す記事ではよく「よく観察する」「よくコミュニケーションを取る」とあるが、これは、大きくみれば正解だが、細かくみれば不正解なのだ。

例えば、「暗くなる」「考え事をするようになる」という特徴を示している場合、そもそもで「暗い子」もいれば「よく考え事をする子」もいるわけで、そういう子がそもそもいじめられているかと言えば、そうではないのである。

つまり、「よく観察する」というのは、「普段との差」の大きさを見ればいいのだ。

普段明るい子が親に心配させまいと普段通り「明るく」振る舞う。しかし、気持ちを立て直す時間を要するから、トイレに入ったりお風呂に入ったり、自室にいる時間がいつもより長くなる。学校から帰る時間がいつもより遅くなるなど、気持ちを立て直すのに必要な時間を使う必要がでてくるのだ。

また、「よくコミュニケーションを取る」と聞くと、何かを話さなければと思うだろう。

しかし、私が被害を受けた子どもから直接被害について、まだ誰にも話していない内容を聞き出せるときは、いじめの話をしているときではなく、漫画やアニメの話をしているときや、とにかく弱いゲームで対戦しているときだ。

現役教員でいじめ対応をしている先生や同じような活動をしている人たちも、これについては同様の体験をしていることから、別の事をしていて、何か心の澱がほどけて、「実はこういうこともされたんだ」と話してしまう。

大人でも何かの仕事のアイディアとかが、会社の会議ではなく、会議の後のブレイク中とか、帰宅してお風呂に入っていたら突然降りてくるということがあるだろう。

それと似たような現象なのではないだろうか。

つまり、同じ時間を同じ空間で、なるべく多い回数、なるべく長い時間過ごすことで、いじめの事を聞き出すことができる可能性が高くなる。

ちょうど夏休み、海に行ったりお盆の帰省、旅行など、同じ時間同じ空間で親子が過ごすことが多くなるだろうから、こどもが何かを話し始めたら、話しやすいように相槌を入れるようにすると良いだろう。

各統計によれば、夏休み明けの直前、こどもの自死は極端に増える。

政治も経済も国際情勢や災害、報道など明るい出来事がほとんどなく、将来が霧の中という現在の日本という環境から、自死自体が増えているということもあろう。

命はリセットできない。一回限り。

これ以上、悲しい事件が起きないように。

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編集後記

学生が夏休みに入る前(もう夏休みかもしれませんが)いじめを受けた被害者の共通点を3つ書き出してみたら、文科省のこどもの自死要因とあまりに一致していて、ちょっと驚いてしまうと同時に、この統計はちょっと信用できないなと思ってしまいました。

やはり、こうした重大なことは、研究者によってしっかり調査分析しないと組織側の都合というバイアスがかかると思います。

まあ、いじめなんて大したことないと言いたい派の御用学者さんには、こうした統計は、いじめ対応をしていたり、いじめ防止対策推進法をより厳しくしようという主張をする人たちを批判する素に使えるわけですが。

そもそもが複合要因のはずだから、1つの理由だけが書かれている統計自体が、誤りなんではないかと思うわけです。

私はこうした活動をしている関係上、自死遺族の方から色々な話を聴く機会が多いです。そのたびに、ご遺族の悲しみに少しだけ触れますが、耐えられないほど辛いものです。

人はその死を無駄にしないためにも、と言いますが、本音で言えば、時間を巻き戻したい、死という事実がなければと思ってしまいます。

実は旅行に行っていて、ひょっこり帰ってくるかもしれないと錯覚してしまう、現実はそうではないことは大人だからわかりますけど、そう信じたくなる気持ちはよくわかります。

少し前、ご遺族から、亡くなった子供と夢で逢いましたというメールをもらいました。

“よかったですね。何か話せましたか?”

私如きでも、何かの支えになれればと思います。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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