11月24日に国会で審議入りした、旧統一教会の財産流出を防ぐ「財産保全法案」。かつて旧統一教会の信者だったジャーナリストの多田文明さんは当日、与野党の激しい攻防を傍聴したとのことですが、「非常な危機感」を抱いたといいます。多田さんはメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』で今回、そう感じざるを得なかった理由を記すとともに、なぜ財産保全法案の成立が必要不可欠であるかについて解説しています。
天皇陛下と韓鶴子総裁の立場を「同一視」。世界平和女性連合の裁判で会長から飛び出たトンデモ発言
1.旧統一教会による被害の救済に向けての与党、野党それぞれの法案に関しての審議が始まる
11月24日、自民、公明、国民民主の与党法案「被害者の迅速かつ円滑な救済に資するための日本司法支援センター業務の特例並びに宗教法人による財産の処分及び管理の特例に関する法律案」が出されて、立憲と維新の会からも財産保全の法案の審議が始まり、国会で激しい攻防がなされました。
私も傍聴しながら、今のところ与党は「信教の自由」を盾にして、野党の財産保全の法案に歩みよろうとする姿勢はみられないことを痛感しました。公明党の存在がネックになっているようにも思えて、非常な危機感を抱いています。
与党法案は、法テラスの態勢強化を示しており、これ自体は被害者救済のために大事なことですが、教団の財産流出、散逸を防げるものとはまったくなっておらず、現状では旧統一教会がとても喜ぶものとなっています。
被害者に与党案を見せたら、ダメ出しをする人もかなり出てくるのではないかと思っています。被害者に堂々と見せられる法案にしなければなりません。
議論は始まったばかりですが、時間はあまりありません。今回の審議を通じて、与野党法案の足りない部分もみえてきましたので、ぜひとも被害救済に大きく役立つ法案の成立を願います。
毎日新聞の報道では、11月18、19日に行った「教団が保有する財産を勝手に処分できないようにする法整備への賛否」に関する世論調査では、旧統一教会の財産保全についての「賛成」が81%となっており、国民の声に、与党もしっかりと耳を貸す必要があります。
2.旧統一教会のしていることは、今も昔も変わりなく影で動く。だからこそ法案が必要
自民党の一部の議員に、旧統一教会が「違憲違法な立法をしないように」と、野党の包括的財産保全の法案を阻止するようなFAXを送っていますが、まさに教団が過去に行ってきた行動を踏襲しています。
岸田首相がは自らの事務所にも「一方的に送り付けられている」と答えたようにしっかりと教団の影の動きを公にすることは大事です。
もしFAXを受け取ったことを口にしないと「今後、関係のよりを戻せる可能性がある」と思われて、送った議員に対しての旧統一教会側のアタックが強くなることも考えられます。
旧統一教会や関連団体からの接触の事実を秘する議員がいれば、まさに旧統一教会の術中にはまることになりますので、しっかりと公言するようにしなければなりません。
これまで旧統一教会の信者らが多くの国民の知らないところで、選挙活動をするなどして、政治の世界に食い込んでいました。それが公となり、国民の大きな不信につながったことを忘れてはいけません。
今回の教団のアプローチを見ても、長年のしみついた行動というものは、容易に変えられないものであることがわかりますので、これからも人々の見えないところでの影の動きは続くことになります。
それだけに、人々の見えないところでの財産を流出させない監視だけでなく、それを防ぐための法案が必要です。
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3.詐欺・悪徳商法にもみられる手口の共通点
詐欺・悪徳商法では、多くの人にアタックして、だませる人を見つけようとします。
特殊詐欺では、一人でも多くの人に取得した名簿をもとに詐欺の電話をかけます。そしてその中から、騙される可能性のある人を探します。そのためにかけるのが、「アポ電」(アポイント電話)です。それから、詐欺の本電話をかけます。
旧統一教会の未証し勧誘(教団名を告げない勧誘)でも行われましたが、街頭で「手相の勉強をしています」「生活意識調査アンケート」と声をかけて、訪問先では「いいお顔してますね」と多くの人に声をかけます。
それに応じた人をターゲットとして、本来の目的である教義を教えるビデオセンターへの連れ込みを行い、教団は信者を爆発的に増やしました。
今回のFAX送付も、脈のありそうな人に手当たりしだいに送った手口ともいえます。
詐欺や悪質商法の被害防止に通じる点として、悪質業者などからのアプローチがあった時には、一人で胸のうちにおさめないで、その事実を公的機関に相談して、周りに伝えることが大事になります。
それにより手口が明らかになり、多くの人が詐欺や悪質商法の被害に遭わないことにつながってきます。
4.世界平和女性連合の裁判(10月23日)で驚いたこと
世界平和女性連合は、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の7名に対して3,300万円の名誉毀損の裁判を起こしています。
同女性連合は、旧統一教会との友好団体であるとしており、教団への布教活動はしていないとしています。今後、その辺りは裁判を通じて明らかになってくると思われます、
しかし、ただの友好団体と主張するのには、かなり無理があるように思います。信者が中核になっている団体で、私自身も信者だった頃は、教団の組織の一部として捉えて活動していたからです。
同女性連合の堀守子会長は「世界平和女性連合は世界的組織であり、旧統一教会、韓鶴子総裁、文鮮明氏により1992年に設立された」と述べており、何より会長自身が旧統一教会の元会長の娘です。
元会長のバックボーンがあってこそ、会長職におさまっているのは誰の目にも明らかで、旧統一教会とは、ただの友好団体とするには説得力に欠けています。
そして全国弁連から指摘された「韓鶴子総裁が国際世界平和女性連合(WFWP)の会長を任命している」点について、堀守子氏は「最高裁判所の長官は、天皇陛下が任命することになっている」とそれと同じであるといいます。
傍聴席でそれを聞いて「いやいや」と首を振りました。
そもそも天皇陛下と、韓鶴子総裁とは立場は違い過ぎます。
紀藤弁護士も、後の記者会見で、この発言をばっさりと切ります。
「天皇陛下には(任命されたら)決められたことを拒否する権限はないですから、全く違います。天皇陛下は象徴ですので」
その通りです。
韓鶴子総裁は、信者にとってメシヤとしての存在であり、彼女から出た言葉は神の言葉であり、絶対に異を唱えることはできません。もしそのようなことをすれば、天国には行けず、地獄にいくことになると信者らは信じています。
旧統一教会と関連団体にとっての絶対的な指導者が韓鶴子総裁です。
一般の人は傍聴席で、この発言を聞いて驚いたと思いますが、おそらく信者らは何も感じていないと思います。
こうした社会の人たちとの認識のズレが、数々の旧統一教会が金銭的被害を生み出し、社会問題を起こした一因といえます――(この記事はメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』2023年11月28日号の一部抜粋です。続きは、ご登録の上お楽しみください、初月無料です)
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image by: Unification Church Hungary, CC0 1.0, via Wikimedia Commons