【高城剛×佐渡島庸平 物語時代の未来予測】 無限の物語を生み出すAIに作家と編集者は勝てるのか?

2024.02.01
by gyouza(まぐまぐ編集部)
 

AIを使えば5人でアニメが作れるようになる

佐渡島:コルクがエージェントであることを最大に見ていくと、他のエージェントと組んでいくと思います。他メディアに展開していくとき、最も優秀なスタジオという考え方をすると、ピクサーがディズニーに代わるような形でどこかのメディアの傘下に入ることもあるかなと。

高城:やはり他のエージェントと組まれるんですね。いま、制作部門もお持ちなんですか?

佐渡島:作家たちが制作しています。

高城:よりメディア化するために、例えばアニメーションスタジオをコルクが買収したり?

佐渡島:それもあるでしょうし、アニメーションスタジオと僕らが資本業務提携をすることもありえます。

高城:そうすれば、ファクトリー化するわけではありませんが、コンテンツそのものを定期的に売り出せますね。

佐渡島:そうなんです。小説は1人で書き、漫画は5人くらい、アニメは200人で作っていました。基本的には世界に出ていくコンテンツは動画のみだと思っているので、動画に大きいお金をかけて、よりリッチなものを作ってマーケティングをしていくことが起きると思っているんです。その100億円単位のマーケティングをかける作品をどうやって売り出すのかという勝負を、うちの会社はしているんだと思っているんです。さらにAIを使うと…。

高城:そこが今日の肝かもしれませんが、AIで、ひょっとしたら200人が20人になる可能性もあるわけですよね。

佐渡島:そうです。動画は、いずれは5人ぐらいで作れるんじゃないかと僕は思っています。

高城:2時間のフルアニメーションを5人で作れると? 今では大作の作家になった人たちも、自分1人でアニメーションを作った時代もありましたが、それがAIによってもっと精密になり「今の俺にもできるんだろう」とお考えですね。

佐渡島:さらにいえば、2時間の作品も必要がないと思っているんです。

高城:とはいえ、TikTokみたいに1分ではお金になりませんよね。

佐渡島:1分とか、分割して出していったり。20、30分ぐらい作った時点で、可能性があるコンテンツはその時点でバズりまくりますから。

高城:つまりパイロット版を次々作るということですね。

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佐渡島:僕らはパイロット版を出し続けて、バズッたものにどんどんお金が入ってくる。それに対して「○○作ります」みたいな形の作り方に変わっていくんじゃないかなと。

高城:実際に、AIによって200人が本当に5人くらいまでになる可能性は非常に高いんでしょうか。

佐渡島:5人とか10人ぐらいまでは減ると思っています。具体的に何をAIだと縮められるかというと、作画と、動画に音を入れたりといったところはAIで相当縮められるでしょうね。

高城:200人かけていたものが、ほとんどオートメーション化できるということですね。

佐渡島:何をどこでどう凝るかなんですが、元データの絵をこちらで1回用意して、それでアニメーション作らせるというのもあるし、動くもの自体の元のキャラクターもAIに作らせることもありえます。それは、こちら側が持っている技術次第ですごく変わると思うんです。

高城:最後に残るのは物語だから。そこをしっかり物語編集者としてポジションをキープしながら、制作の自動化を待つってことですよね。さすがに今月からいきなり200人が5人、10人にはならないかもしれませんが、おそらく遠くない先にそうなるであろうと考えていらっしゃるわけですね。

佐渡島:そうです。でも、その間はAIの使い方も複雑だし、どのツールでどういうふうに組み合わせれば、良いアウトプットができるのかと理解すること自体が結構大変なんですよ。AIを使いこなすこと自体がめちゃくちゃ難しい。F1の車に乗ったらみんなが早く運転できるわけじゃなくて、逆に運転できる人も少ない。AIの方は進化しているけど、それを使いこなすハードルが結構高いから、5人でアニメを作れる状態には5年後にはまだなってないとは思うんです。

高城:既存のアニメ業界の人たちから、反対運動も起きるでしょうね、ハリウッドのように。

佐渡島:それもありますし、作業の順番とか手順とかも習慣が違うんです。

高城:異業種からスタッフを連れてこないと難しいかもしれませんね。

佐渡島:担うのは若者たちですね。世代交代する前の子たちが使えるようになると思います。

高城:自分の話で恐縮ですが、一昨年前に映画を作りました。2時間の、海外で全部撮ったアクションドラマみたいなものですが、総勢9人で作ったんです。撮影期間は10日、11日かな。ほぼ、オートフォーカスとかテクノロジーとAIでもう十分なんです。コストも制作スタッフも数年前の10分の1です。人も予算も縮められるので、面白いアニメの可能性も出てくると思います。

 その一方、物語が大切だというのもあると思うんですが、物語のAI化も進んでいますよね。これに関してはどうお考えですか?

佐渡島:物語のAI化も、非常に優秀ですよね。

高城:まさにハリウッド脚本組合のストの原因の一つですから。

佐渡島:そうですね。王道の話は、AIで面白いものができるんです。とはいえ結局のところ、今の時代に「誰が、なぜ、いま作ったのか」が重要だったりする。そこそこのレベルのコンテンツが山のようにある状態になってくると、より付加価値が重要になってきます。

SNSで普段からファンと接点を持ってる人が「これは自分のこういう風なオリジナルの体験を感情を込めて物語にした」というのが重要なんです。その物語の核となる感情や体験をAIに読み込ませると、それで物語が作られて、それを本人が手直しするということは起きる可能性はあるでしょう。物語作りがwith AIでやっていくことになるはずです。

高城:物語というより、コンテクストですね。そうすると、医療がそうであるように、パーソナライズ化した物語がこれからの時代増える気がするんです。同じ題材でも、佐渡島さんに合うもの、僕に合うものというようにしてエンディングが違ったり、カラートーンが違ったりするのかもしれません。

一つのコンテンツが、マルチに展開されるメディアだけではなく、その先にある個人に焦点があるような気がしているのですが、その可能性はあると思いますか。

佐渡島:何年後かまでは分かりませんが、僕もあると思いますよ。

高城:すでにゲームでは、そうなっていますよね。ストラクチャーは同じですが、道筋も違えば、エンディングも人によっては違ったりする。1人で楽しむか、オンラインで何人かで楽しむかはさておき、多分どんどんコンテンツのパーソナル化が進んでいくような気がするんですよ、コストが下がることによって。

佐渡島:そうなってくると、もはやストーリーは世界観に変わって、その世界観のルールの中での振る舞いになってくるかもしれません。限りなく、ゲームに近いものになり、差がなくなるのかなと思うんですよ。

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