【高城剛×佐渡島庸平 物語時代の未来予測】 無限の物語を生み出すAIに作家と編集者は勝てるのか?

2024.02.01
by gyouza(まぐまぐ編集部)
VR革命で起きる人類を二分化する超格差社会 (1)
 

メルマガ高城未来研究所「Future Report」』の著者で時代の最先端を常に切り開きながら早々に電子書籍への移行を果たした高城剛さんと、メルマガ『週刊!編集者・佐渡島の『好きのおすそ分け』』の著者で『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』などメガヒットを次々と生み出し、日本初となるクリエイターエイジェンシー・コルクを設立した編集者・佐渡島さんによる異色の対談。二人は小説や漫画の未来をどう見ているのか?数年後のエンタテイメントはどうなるのか? 衝撃的な近未来予測が飛び出します。

顧客接点を持つ人が最強の時代

高城剛氏(以下、高城):本日はお忙しい中、ありがとうございます。毎週金曜日にメールマガジンを出しておりまして、新年に、数年先を見据えた特別対談を恒例で行っております。昨年は、ジャニーズ問題を皮切りに、タレントやアーティストと芸能事務所の問題が大きくクローズアップされました。かつて映画会社は俳優を自社以外の映画に出演させない契約を含む寡占的協定があり、これがテレビ時代になって、芸能プロが生まれました。しかし、配信の時代になっても、芸能プロに変わる仕組みが生まれていません。もしかしたら、ここに日本のコンテンツが海外へ出られない秘密があるのかもしれません。そこで、いち早く新しいスタイルのエージェントをお作りになられた佐渡島さんに是非、お話を伺いたいと思いました。

今日はよろしくお願いします。

さっそくですが、佐渡島さんは、元々は「モーニング」で漫画編集者をされていたとか。

佐渡島庸平氏(以下、佐渡島):はい。新卒で講談社に入社して退社まで、ずっと「モーニング」で漫画を作っていました。講談社には「モーニング」「イブニング」「アフタヌーン」という雑誌が同じグループになっていて、それとは別に「週刊少年マガジン」「ヤングマガジン」のグループがあります。それぞれのグループでは、人事交流があまりなかったのですよ。

高城:同じ漫画編集部全体での交流はないんですか?

佐渡島:セクションが違うと、隣の部署との付き合いが違っていました。一般的には、テレビも出版社も部署の異動はあると思うのですが、僕の場合はずっと同じ編集部でした。

高城:佐渡島さんは、講談社を辞められてエージェントを作られ、大きく成長させてこられました。昨今、ジャニーズ問題をはじめ、タレントとエージェントの見直しは非常に大きくなっていますし、この旧体制を引きずる組織は、今後も闇が暴かれると感じています。そこで、あたらしいニーズを確信していた佐渡島さんに、数年どころかもっと先…10年くらいまで先の展望を伺いたいと思っています。まずは、漫画の編集者としてたくさんのヒット作を出していたにもかかわらず、なぜ会社を辞めてエージェント会社、つまりコルクをお作りになろうと思ったのですか?

高城剛氏

高城剛氏

佐渡島:メディアが重要という時代が、長く続いてきましたよね。テレビ局なら、基本はキー局が中心で、10社にも満たないです。雑誌もメジャーなものの数は限られています。日本では多く見積もって100ぐらいのメディアが、社会のコンテンツや世論の流れをプロデュースをしていて、主導権を握っている側面がありました。

インターネットによって、演者や作家といったクリエイターたちも個人で活躍するようになりましたが、最後のtoCというか、ファンに触れる部分だけをクリエイターが担っている状態が続き、最終的な意思決定権は、ほとんどプロデューサー側が持っていました。

高城:メディア側ということですね。

佐渡島:はい。高城さんとの対談なので、コンテンツに限らずより広い視野で話をさせていただくと、例えばセブンイレブンができた当初は、棚にどういうものを安定供給するかのかはコカ・コーラやサントリーといったメーカーがセブンイレブンよりも力を持っていたと思うんです。

ですが、セブンイレブンが1万店舗を超えたあたりから、コカ・コーラやサントリーとの力関係が逆転し始めました。

高城:つまりプラットフォームになったということですよね。

佐渡島:そうです。セブンイレブンが新商品を入れるかどうかで、新商品の売上が全く変わってしまう状況になりました。そうなると、セブンイレブンはオリジナルブランドを作り、有名な企業にもOEMで作ってもらうようになりました。

つまり、顧客接点を持っている人が、最強であるということになったわけです。Appleの場合もスティーブ・ジョブズが復帰したとき、顧客接点をもう1回取り戻す拠点として、Apple Storeを始めましたよね。

佐渡島庸平氏

佐渡島庸平氏

高城:当時、Appleの仕事をしていたので、よく覚えています。ちょうど世界的にITバブルが弾けた逆風のなかで、一号店をオープンしました。

佐渡島:今、Appleが強いのは、自分たちでファンを抱えている状態だからです。iPhoneやiTunes、アプリのところも含めて自分たちでコントロールできるところが、Appleの強さだと思うんです。

作家に話を戻すと、いくら作家が人気漫画を描いて大成功しても、次にまた載せるかどうかを決めるのは掲載先である雑誌側でした。「ジョジョの奇妙な冒険」のように30年続く大人気シリーズ作も、連載が始まった時の「少年ジャンプ」でずっと掲載されていたわけではありませんよね。「ジャンプ」では連載しないと決定したのは、作家の荒木飛呂彦さんではありませんでした。

高城:やはりメディア側なんですね。

佐渡島:そういった環境でも荒木さんがいろんな形で描き続けられて、それが30年分の蓄積となり、今、世界的な大コンテンツになっている。この世界的ヒットは、出版社側がプロデュースしたことではなく、作品の力が時代と呼応した偶然だと僕は思っています。

SNSの場合、はじまりはFacebookが主流でしたが、Twitter(現X)やInstagram、YouTube、TikTokが台頭しました。また、AmazonのKindleやLINEマンガ、さらには音楽も含めて、様々なプラットフォームが生まれて、さらには、「スーパーチャット」機能など、様々な課金システムが誕生しました。

その課金システムに対して、自分たちで服を作って販売したり、グッズが作れる仕組みも出てきました。さらに、3Dプリンターが現れたり、メタバースの中で空間が作れるようになると、顧客接点を持ってデジタルコンテンツからリアルコンテンツまで、様々な形で課金していくことが可能になります。そうなると、最終的に発言権があるのは、顧客接点を持っていて、その自分の顧客への正しいメッセージの伝え方をわかってる人に変わるだろうと思ったんです。

高城:双方向のインターネット時代の趨勢ですね。

佐渡島:正しいメッセージの伝え方がわかっている人は、様々なプラットフォームを利用して、自分用にカスタマイズしたツールを使って、投稿したくなるだろうなと思うんです。

僕は、高城さんのお仕事の仕方を把握しきれていませんが、この「まぐまぐ」でメルマガをリリースしているなら、例えばそのコンテンツ…メルマガの中の連載などをKindleでも連載として出してもいいでしょうし、それをInstagramで無償で見せていったり、TikTokで文字で見せたりすることもできると思います。

もしInstagramやTikTokへの投稿が、Kindleとまぐまぐへのコンバージョン率が良かったら、そこに人を割いても、「それ以上に利益が出るなら、経済圏を拡大していった方がいい」とか、「どのプラットフォームに力を入れると、最終的にコンバージョンして経済圏が大きくなり続けるか」といったことを考えるようになります。

でもそのためには経験値を持っていて、その工数がどのくらいかかるのかを知らないと難しい。今の時代、1個1個のプラットフォームに対しての発信は、3分〜5分程度の作業でやっていく感じですが、それを複数のプラットフォームで日常的にやろうとすると簡単じゃないと思っています。

高城:おっしゃるように、100ぐらいのメディアが日本の、…極端に言うと社会そのものを形成していて、昔でいうところの「空気」を形成してきました。ただ、編集者ならではの視点かと思うのですが、日本のメディアを支えているものに、広告主という特殊な状況もあります。今のお話は、いわゆるメディアと顧客との接点の二つの関係でしたが、もう一つ、広告主も大きな影響を及ぼしています。この三つ巴に関してはどうお考えでしょうか。

佐渡島:まさにそこも重要だと思っているんです。広告も、コンテンツの量が圧倒的に増えてしまうと、見られなくなってくるはずです。もちろん、巨大アイコンに頼って広告する手段はいまだ有効で「大谷翔平選手が使っている●●」というだけで十分売れる可能性はあります。

同時に、細かい顧客接点を持つ人に宣伝するように変わっていくだろうとも思っているんです。クリエイター自身が直にファンと繋がることができるし、広告主とも繋がれる時代になっていくと考えています。(中略)

※「顧客接点を持つ人が最強の時代」の全編は下記のメルマガのどちらかに登録すれば読むことができます。2月は無料で購読可能です、このチャンスに是非、ご登録を。次ページより対談の続きをお楽しみください。

 

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