中国自動車業界では、中型セダンにおいて日系を含む外資が台数を稼いでいるようです。しかし、それには例外がありました。中国ホンダの「霊悉L」は、事前には好評だったものの、販売から数か月ほとんど売れていないのです。なぜこうなってしまったのでしょうか?日刊で中国の自動車業界情報を配信するメルマガ『CHINA CASE』がその理由を伝えています。
ホンダ霊悉32台、マツダのEZ-6は2445台、何が明暗を分けた?
中国の中型セダンでは日系含む外資が頑張っている、とした。もちろん例外がある。
それが、ホンダの中国におけるBEVの心配の元凶、「霊悉L」だ。
製品力は問題ないし、価格も妥当で、中国現地でも当初は「ホンダも現在の中国市場わかっているじゃん」とのお墨付きがあった。
なのに販売数ヶ月、売れない。なぜなのか。答えは簡単なようで、それができなかった要因を考えると闇が深い。
日系の中国中型セダン
各社の発表によれば2024年11月、広汽トヨタのカムリ(2万台弱)、一汽トヨタのアバロン(1万台前後)は底堅く売れている。
ホンダでも、アコード(1.5万台)は中国でもベストセラーと言ってよく、比較的堅調だ。
そして、長安マツダのEZ-6も初月、2445台。これは同月のマツダの中国販売の4分の1以上に相当し、売れ筋となることも予感される。
これに対して霊悉Lは実に32台にとどまった。EZ-6は初月だが、霊悉Lはこれが3ヶ月目、初月164台、2ヶ月目182台と推移している。
悪い意味で、もう桁が違う。
新ブランドは無謀
カムリに対して、アバロンは後発、それでも一汽トヨタ版カムリとして、地道に成長してきた。
これに対して、霊悉Lは霊悉という全く新たなブランド、エンブレムから始まっている。
中国市場の今の状況で、シャオミぐらいよっぽどの爆発力がなければ、これは自殺行為だ。
腐るほどのブランドが生まれては消失していく中国において、全く新たなブランドが順調にスタートできる可能性は低い。
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マツダは新ブランド無し
アバロンも一汽トヨタというブランド、広汽トヨタのカムリの姉妹版、という強みをフルに生かしてきた。
また、長安マツダも初のNEVとしてEZ-6を展開するにあたって、新たなブランドを立ち上げず、長安マツダのブランドのもと展開している。
販売減少著しいとはいえ、長安マツダというブランド自体の認知度は今なお高い。
これが常道であり、中国ユーザーからも、「今からでも霊悉Lのエンブレムをホンダのものに変えれば爆売れするのでは?」と揶揄されている。
相当詳しくないと、ホンダ=霊悉は中国において、まだまだ結びついていないのが現状だ。
マツダはREEVも展開
そして、長安マツダのEZ-6が初月から好調だったのは、REEVも合わせて展開しているからだ。
ざっくりとだが、2445台のBEVとREEVの販売比率は1:4程度と思われ、BEVが今の中国ではなかなか売れない、を体現している。
BEV/REEVのダブル展開は、日系としては初の試みだが、中国現地ではメジャーな手法になっている。
BEVだけに固執するのは、蔚来(NIO)等今や少数派。「e:」「イエ」、そして霊悉と、なぜかホンダもBEVに固執している。
そもそも霊悉Lを展開している東風ホンダ、その合弁相手である東風集団こそが積極的にBEV/REEV(PHEV)のダブル展開を図っている。
可能性はあったのに
思い切った価格、その背景となるであろう東風集団のリソースの積極活用がみられた霊悉Lは、ある程度成功するのではないか、とも予測されたが、少なくともスタートダッシュは散々。
まだ始まったばかりで、その前途をすべて否定するのも無理はあるかもしれないが、中国のこの「巻き」の時代、時間は何より重要だ。
霊悉の船出からの想起
新ブランド立ち上げリスク、あくまでも車種名、シリーズ名としてのみ位置付け、エンブレムは中国でも徹底的に認知されているホンダのものを採用、REEVの可能性も模索。
これらのことはここで言うまでもなく、東風ホンダ社内でも議論されただろうし、そちらの方が可能性が高いのも分かっていただろう。
しかし、それができなかったところに、中国市場で負け組になろうとしている、この期に及んでも何らかのパワーバランスで社内が動いてしまっているような気がする。
飛躍して言えば、日産と経営統合したところで成功するのか、との思いを掻き立てられる、ホンダの闇の深さを感じる、そんな霊悉の船出だ。
出典: https://car.yiche.com/newcar/salesrank/?level=5
※CHINA CASEは株式会社NMSの商標です。
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