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「大学入試」は変わった。では、障がい者を受け入れる「企業」は変わったのか?

従業員が一定数いる企業に義務付けられている「障がい者雇用」。そのキャリアアップはどのように行われるか、その際の人事評価はどうすべきか、それを考えているのが、生きづらさを抱える人たちの支援に取り組むジャーナリストの引地達也さん。引地さんは、自身のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の中で、3月に行われる文科省のセミナーの内容を解説しながら、自身の考えを綴っています。

障がい者雇用における人事評価は企業文化とともに

文部科学省の「障害者の生涯学習推進アドバイザー」派遣事業の講演「障害者社員のモチベーションUP! 効果的な『評価』制度で、働きがいのある職場に」が3月13日に東京都中野区で行われる。

12月に同じ派遣事業で実施した講演「企業全体の活性化に向けた障害を持つ社員のキャリアアップ支援」が、障がい者雇用に関する「学び」の概要と入口の話だったことを受け、受講者から「次のステップの話」の要望を受けての第二弾の位置づけだ。

第一弾では、企業に当たり前に存在する「キャリアアップ」を多様性と包摂の感覚から見直し、誰もが働きやすい場所にするための基本を示したが、今回はその具体策として「評価」について考えていくことで、さらに具体的な行動を確認する内容にしたいと考えている。

主催者のプレスリリースでは、前回、私が触れた障がい者雇用におけるキャリアアップの重要性と、評価基準の必要性から「さらに一歩踏み込み、具体的な評価基準の一例を提示します。なぜ、障害のある社員のキャリアアップが重要なのか?現在の日本の障害者雇用の現状は?障害のある社員のキャリアアップを評価する基準とは?」とし「生涯学習の視点から具体的な評価基準の一例を解説いたします」と説明する。

この文言は、私の考えを主催者側が整理したものであるが、ここでの「評価基準」には多少説明が必要。

それは既存の評価基準の枠組みで考えるのではなく、インクルーシブ&ダイバーシティの推進の一環として、評価とは何かを再度問い直し、現在の最適化を求め、その結果としての評価を基準化するプロセスを描いていきたい、との思いで示している。

プロセスの中には、人への配慮やコミュニケーションのあり方、企業内外でのケアの思想と文化の醸成を事例とともに考える予定だ。

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人事院を基準にすると、人事評価は、「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる勤務成績の評価」(国家公務員法第18条の2第1項)であり、人事評価制度は「能力・実績に基づく人事管理を進めて行く上での基礎となる重要なツールであるとともに、人材育成の意義を有するもの」と定義する。

これらの文言は、企業は生産活動をする組織であるとの考えを基本にして、人を管理する存在として、能力・実績とは生産性や収益性に貢献できることが優先されており、流通している人事評価ツールの多くが企業の実績をベースに作られている。

上司からの評価だけではなく360度評価等、周辺からの評価の仕組みによりl客観性等を確保するものもあるが、その評価の在り方は、その企業が「何を評価するのか」の、その企業の文化が大きく影響する。

これら硬直した評価制度の中にあって最近、障がい者雇用のキャリアアップと人事評価はどうあるべきなのだろうかとの問いが今回のテーマでもある。

今回の講演では様々な角度から検討する予定だが、1つの提案として、社内及び社員が障がい者とのコミュニケーションを体験する機会を示したい。

社内の障がい者雇用の社員と多くの社員が関わる時間や期間を設定し、そこで必要なケアを要するコミュニケーションを肌で感じてもらう時間を作る。

それは誰にとっても新しい発見となるはずで、それは会社の生産性と、多少専門家のアドバイスが必要なものの一般的な情報リテラシー向上に、そしてその新しい感覚は自分と企業に「どのように生産されるのか」との創造性を喚起させる。

その上での評価基準は、確実に新しい評価が見えてくる。

評価は時代とともに変わってくる。

大学の入り方も様々な入試方法があり、能力を伸ばすために新たな教育が模索されている。

世界で生きて行く、活躍するための人を育てたいとの要請に適合させながら、評価基準を変え、教育は変革を続けていく。

大学で教育し、そして障がい者の働くを支援する立場として、評価は人がよりよく働くためのプロセスであることを共有し、それを最適に機能させるための手法を考え続けたい。

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障がいがある方でも学べる環境を提供する「みんなの大学校」学長として、ケアとメディアの融合を考える「ケアメディア」の理論と実践を目指す研究者としての視点で、ジャーナリスティックに社会の現象を考察します。

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【著者】 引地達也 【月額】 ¥110/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

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