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損してばかりの「就職氷河期世代」を助けるフリ。石破政権による“ポエム的支援策”は単なる税金のムダづかい

大手企業の新卒社初任給アップが大きく報じられる一方で、「置き去り」にされた感の強い就職氷河期世代。政府はこれまでも彼らに対する支援策を講じてきましたが、有効打となっていないのが実情です。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、氷河期世代を中心とした就労支援充実のための具体策検討を表明した石破首相の動きを、懐疑的な視線で紹介。その上で、必要な人に届かない支援プログラムを打ち上げ続ける自民党政権を厳しく批判しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:氷河期支援の目的は?

プロフィール河合薫かわいかおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

氷河期支援の目的は?ポエム的政策は税金の無駄遣いにしかならない

困ったときの「氷河期世代支援策」に、またもや政府が動きだしました。

19日、石破首相は「就職氷河期世代」を中心とした就労支援を充実させるため、新たに関係閣僚会議を設置し、具体策を検討する考えを示しました。

発表の前には、若者や「就職氷河期」世代の就労支援に取り組む立川市の施設を訪問し、職場でのコミュニケーションを学ぶ様子などを視察。研修や実際に支援を受けて就職した人たちからも話を聞き、記者団にこう話したそうです。

「就労にあたって不安や困難を抱え、うまく就職できなかったり続けられなかったりする人は多くいる。サポートの仕組みは非常に重要で、引き続き活動を支援していきたい」(by 石破首相)――。

なんとも…。まるで初めて知りました!的発言です。

もちろん就職する時期がたまたま悪かったというだけで、まったく腑に落ちないキャリア人生を余儀なくされた氷河期世代を支援することは必要です。

「正社員になればきっと未来が開けると思っていた」

「40代になればきっと肩書きがつくと信じていた」

「いつかは報われる。就職が難しいこともあったね、って若い頃を懐かしむ日がきっとくる」―――。

このように必死で将来に「光」を見出す努力してきたのに、恩恵を受けるのはいつも次の世代で、無間地獄を強いられてきました。年齢も40代後半~50代前半に突入し、社会的にも経済的にもとてつもない将来不安に苛まれています。

岸田政権が「骨太の方針」に盛り込み、大炎上の末撤回した「退職一時金課税見直し」が今後行われれば、割りを食うのも氷河期世代です。政府・与党は2025年度の税制改正で、退職金課税の改正を見送ったものの26年度の税制改正で議論する方針です。

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石破首相は科学的分析も実施せず何をするつもりなのか

しかも、政府がやっと重い腰を上げて、2017年度にスタートした「就職氷河期世代の人たちを正社員として雇った企業に対する助成制度」の利用率はわずか「1割未満」。1割、そう、1割にさえ届いていませんでした。

約5億3,000万円の予算のうち、17年度中に利用されたのは、たったの765万円(27件)。18年度は約10億7,000万円に予算を倍増したにもかかわらず、同年2月末までに約1億2,800万円(453件)しか使われていなかったとの報道もありました。

19年に政府は、氷河期世代の正社員を3年間(20~22年度)で30万人増やす計画を打ち出しましたが、最終年度の段階で目標の10分の1にすぎない、たった3万人しか正社員が増えていませんでした。

おまけに、656億円の予算のうち、各省庁が実施した約60事業の中には、氷河期世代の人が本当に参加したのかどうか、分からない事業があったというのです。

必要な人に必要な支援が行き届くには、その実施過程で存在するプロセス要素を確かめるためのプロセス評価を行うことが不可欠です。それをやらずして新たな支援プログラムを打ち上げても、期待するような効果は出ません。

会議を設置し、岸田前首相から受け継いだ車座をするのは大いに結構ですが、信頼性と妥当性が検証された、科学的分析も実施しないで何をなさるおつもりなのか。

ポエム的政策は税金の無駄遣いにしかなりません。

みなさんのご意見、お聞かせください。

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