私たちの身近な食生活が、精神の健康にも大きく影響する可能性が指摘されています。メルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』著者で糖尿病専門医の江部康二先生が今回語るのは、砂糖の過剰摂取が統合失調症や双極性障害などの精神疾患リスクを高めることについて。最新の研究結果とその意義について詳しく紹介しています。
砂糖の取りすぎ、精神疾患のリスクに
以前、朝日新聞デジタルのアピタルに「砂糖の取りすぎ、精神疾患のリスクに 脳の毛細血管に炎症 都医総研」という記事が掲載されました。
https://www.asahi.com/articles/ASPCB6G0BPCBULBJ00Q.html
興味深い内容なので、改めて紹介します。
統合失調症や双極性障害の患者さんには、清涼飲料水を1日2リットル飲むなど、大量の砂糖を摂取する傾向があるそうです。これは私も知りませんでした。
記事はマウスを使った実験ですが、患者に見られる「砂糖大量摂取傾向」と合わせて考えると、砂糖の弊害はやはり恐ろしいものだと感じます。
◆マウスと本来の食性
マウスやラットなどの齧歯類は、本来は草の種子(穀物)を主食にしています。
例えばマウスがそのまま食べていたと思われる玄米100gあたりの成分は次の通りです。
・カロリー:349 kcal
・水分:15.5 g
・タンパク質:6.8 g
・脂質:2.7 g
・炭水化物:73.8 g
一方、砂糖は水分が0.8%ほどしかなく、ほぼ純粋な糖質です。
記事には「大量」とは具体的にどの程度か記されていませんが、砂糖だけを与えるというのはマウスにとって自然界ではあり得ない食餌といえます。
そのため「物体の位置を認識する機能が低下し、毛繕いが異常に増え、巣作り行動が減った」というマウスの行動変化を、人間にそのまま当てはめるのは難しいでしょう。
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◆脳の毛細血管への影響
しかし一方で、「砂糖を過剰摂取したマウスの脳では毛細血管の炎症が生じ、神経細胞の栄養源であるブドウ糖の取り込みが低下していた」という結果は見過ごせません。
これは、人間の脳の毛細血管にも同様の変化が起こりうる可能性を示唆しています。
大量の砂糖摂取が脳の毛細血管に炎症を起こし、ブドウ糖の取り込みを阻害することで、統合失調症や双極性障害のリスクにつながる可能性があると考えられます。
◆記事要約
東京都医学総合研究所などの研究班は11日、思春期に砂糖を取りすぎると、統合失調症などの精神疾患の発症リスク要因となる可能性があると発表しました。マウス実験で確認されたものです。
平井志伸主任研究員は「砂糖の過剰摂取に気を付けてスイーツを楽しんで」と呼びかけています。
・統合失調症や双極性障害は若い世代に多く、遺伝的要因と環境要因の重なりによって発症する。
・患者には清涼飲料水を1日2リットル飲むなど、多量の砂糖を摂取する傾向がある。
・発症関連遺伝子に変異を持つマウスに大量の砂糖を与えたところ、行動異常が確認された。
・さらに、脳の毛細血管に炎症が起き、ブドウ糖の取り込みが低下していた。
・統合失調症や双極性障害で亡くなった患者の脳でも、同様に毛細血管の炎症が確認された。
平井氏は「グルコース取り込み低下によって神経細胞に栄養が行き渡らず、精神疾患の発症につながる可能性がある」としています。
これまで精神疾患と脳毛細血管の炎症との関連は知られておらず、今回の研究成果は新しい治療薬の開発や予防に役立つと期待されています。
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