2025年の年間自殺者数が過去最少となった一方で、小中高生の自殺者数は2年連続で最多を更新し、532人もの命が失われました。しかしこの絶望は、日本だけの問題ではありません。欧米でも「プレティーン」と呼ばれる8〜12歳の自殺・自傷が急増し、社会を震撼させています。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイー河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者の河合薫さんが、スマホとSNSが子供たちの心を侵食するメカニズムと、日本社会の無責任な現状を鋭く問い直しています。
「スマホ型子供時代」と未来への絶望
2025年の年間自殺者数が過去最少となった一方で、小中高生の自殺者数は2年連続で最多を更新し、532人もの命が失われていることがわかりました。
日本の子供や若者たちの絶望の現状と、大人たちの問題については、昨日公開のYahoo!ニュース「自殺未遂50万人の衝撃 子供たちの無言のサイレンと私たちの『一言』の功罪」に書きましたので、本メルマガでは、世界の若者たちの現状をとりあげます。
実は、子供たちの絶望は日本固有の現象ではありません。今、欧米諸国でも8歳から12歳の「プレティーン」と呼ばれる層の自殺や自傷行為の急増が、社会を震撼させているのです。
例えば、米国では過去10年でこの年代の自殺率が急上昇しており、5歳から18歳の自傷行為による救急受診は160%以上も増加したという報告もあります。特に目立つのが、2010年代初頭に最初のZ世代が10代になった途端、世界的に10代のうつや自傷、自殺が急増した点です。
特に「10代女子」のうつ経験率の上昇が顕著で、同世代の男子に比べて、うつを経験する可能性は3倍ほど高い。また、4人に1人以上の女子が、パンデミック中に自殺を試みることを真剣に考えていたとの報告もあります。
スマホが変えた「子供時代」の構造
Z世代が10代の時期は、iPhoneの普及と、SNSに「いいね!」ボタンや、リツイート機能が実装されたのが2009年前後と重なります。この時期を境に若者が友人と直接会って過ごす時間が世界的に急減し、代わりに画面越しの交流が爆発的に増えたことで、若い世代の心にダイレクトに「危機」をもたらしたと考えられているのです。
社会心理学者のジョナサン・ハイトは、スマホ普及以降の世代を「不安な世代」と呼び、子供時代という構造そのものが変質したと警鐘を鳴らしています。
かつての子供時代は「遊び」を通じて対人スキルやレジリエンスを育むものでしたが、現代は掌の上のデバイスに支配された「スマホ型子供時代」へと変容しました。24時間、絶え間ない比較と評価の荒波に晒され、承認欲求という終わりのない競争に駆り立てられる。この構造の変化こそが、若者たちの精神を根底から侵食している正体です。
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「デジタルな毒」と戦う欧米、他人事の日本
欧州や米国で急速に進んでいるSNS規制の動きは、まさにこの「2010年代以降の若者のメンタル崩壊」という危機的なデータに対する、政治・社会的な防衛反応といえます。
興味深いのは、かつてタバコが「個人の嗜好」から「健康を害する社会問題」として規制されたように、SNSもまた、未発達な子供の脳にとっては「デジタルな毒」になり得ると判断され、公衆衛生の問題として、捉えられ始めている点です。
かたや日本は……。「学校の問題」「家庭の問題」と実態がありそうで、あいまいな「誰か」に責任を押し付けている。どこか他人事のように思えてしまうのは私だけでしょうか?
みなさんのご意見、お聞かせください。
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